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七日目:志津編 16話

灼熱の夏の後、台風一過で急速に季節は進み、秋になった。
秋になったは良いけれど、秋晴れの日には恵まれず、
ほとんどの日をぐずついて過ごした十月の空。
夜毎に冷え込む今日この頃。

いよいよ学祭の日。
朝、目が覚めて寝惚け眼で空を窺うと、真っ青な秋晴れの高い高い空が見える。

出番は午後からなので、もうちょっと寝ようかなと逡巡していると部屋のドアをノックする音。

『志津さぁぁぁぁぁぁん!』

大声ではないけれど、切羽詰ったるどんの声がする。

んもぅ???、なんでこんな日に早起きなんよ??。。。

ドアを開けると、るどんが転がり込んできた。

「志津さん、大変っ!」

「おわよー」

「あ、おはよう!大変っ!」

「どないしたん?」

「今日、何着よっ?」

ぅわ???????っ!
今頃?今頃?今頃?

「スカート履くぅ?」

そう言ってにやにや笑ってみる。
はいはい、そこで凝固しなくていいからね?。

「嘘、嘘。ジーンズがいいでしょ?」

「ビックリさせんといてよ?。ジーンズ以外に何を履くのよ。
 そうじゃなくて、上は何を着たらいいと思う?」

「んー、私はダークグレーのワンピースにモスピンクのボレロやでー」

「ロー・ウエストで切り替えて、プリーツになってるミニ丈のワンピース?」

「うん」

「で、レインボー?」

「うん」

「センスが良いんか悪いんか解らん取り合わせやんね?」

「うん」

「んじゃ、るどは、モスグリーンのベストにしようかな」

「綿入れ?」

「そそ・・・って、綿入れ違うってばぁ。ダウンやってばぁ」

「似たようなもんやん。あのボア、付けときや」

「ボアね。付けとく?」

「うん」

「判った。ほんで、何時に学校に行くの?」

「今、何時?」

「十一時」

「えっ!」

二人で無駄に慌てながら仕度をして、学校に向かう。
がんばれ足!

落研の部室に行ってサイコ師匠にちょっとだけ小言を戴いて多目的ホールへ。
楽屋入り口の重たい扉を開けて中に入ると学祭のスタッフが揃いのジャンパーを着て立ってる。

あれ?

「あれ?志津、お前何?」

んーーーっと、こやつは何者じゃ?

「ふとっち!」

中学・高校の時の悪友ではないかいな。
ああ、そいや居るとは聞いてたけど、なんで学祭のスタッフ・・・そっか、音関係か。。。

「キャッツ・ポゥです?」

「あ、落研の漫才コンビ。やっぱり志津やったんか」

「はいよ。そんなに笑うなっ」

「コートはここで預かるから。そっちの人も」

寒いから自前の衣装の上から適当なコートを羽織っていたのを、楽屋に入る前に剥がされた。
楽屋といっても、小さな控え室なので、別にスペースを取ってクロークにしているらしい。

「音屋がクローク係なん?」

「いや、偶々通りがかっただけ。控え室に行ってな」

はいよ?。
なんか高校の文化祭を思い出すなぁ。。。
調整室に入って助手やってたなぁ(邪魔してたとも言う)。

控え室で最後の合わせを簡単にやってドキドキしていたら呼ばれた。

いよいよや。

------------------------------------------------------------

ちゃかちゃんりんちゃんりんちゃんりん、でんでんっ!



る・し「はいっこんにちは??!キャッツ・ポゥですっ!」

  る「めぇ?もりぃ??♪」

  し「それは『キャッツ』。ポゥはどうするのよ」

  る「ポゥ?・・・ポゥ・・・あいしてポゥポゥ」

  し「ポゥポゥて、ジャッキー・チェンの幼名やんか」

  る「成長の後これを改め、成龍(しぇんろん)と申すなり」

  し「なんまんだぶなんまんだぶ・・・」

  る「生きてる!」

  し「え?」

  る「ジャッキー・チェンは、まだ生きてる。死んでへん」

  し「ああ、生きてはったんか」

  る「生きてはったんか、て。そうやのぅて、ポゥて何よ」

  し「ポゥは動物の手やね」

  る「キャッツ・ポゥで猫の手?」

  し「そうそう、忙しい時に借りるやつ」(手でにゃう)

  る「猫の手も借りたい、言いますね」

  し「そやから、めっさ忙しいときは『にゃんにゃこ舞い』て言うでしょ」(にゃうにゃう)
 
  る「それを言うなら『てんてこ舞い』です」

  し「ほんで年寄りが無理してたら『年寄りの鼻水』」

  る「こっちが洟出るわ」

  し「桃栗三年、ネタ八年」

  る「待ちぃな。一つのネタに八年もかかってたら卒業してしまうわ」

  し「留年しまくってギリギリやなぁ」(腕組み)

  る「いや、真面目に悩むとこ違うし」

  し「真面目に悩むよ。ネタやで?」

  る「学校を卒業するほうが大事でしょうに」

  し「そうなん?」

  る「そうなん?て。就職の内定もろてて卒業できへんかったら、どないすんのよ」

  し「また来年??」(にっこり手をふりふり)

  る「来年は無いの、来年は。せっかく貰った内定やねんから、素直に就職しようよ」

  し「そぅですか?。いや?、嫌やとは言いませんけどぉ、困るわぁ?」(くねくね)

  る「何をお困りですか?」

  し「永久就職でしょう?」(もじもじ)

  る「誰が?」

  し「私」

  る「どこに?」

  し「えっと・・・」

  る「もう、ええわ」

  し「ありがと」(頭を下げかける)

  る「まだまだ!」

  し「へ?」

  る「まだ帰ったらあかん。さっき出てきたとこ」

  し「あ、ほんまや」

  る「あ、ほんまや、やあらへんわ。そない早よ引っ込んだら、次の人が困るでしょ?」

  し(舞台の袖を窺う)

  る「何をしてるの?」

  し「なんか、裏でごつーん言わへんかった?」

  る「裏でごつーんは、志津さんやん」

  し「そうやん。さっきの、痛いわぁ」(膝をさする)

  る「(客席に向かって)ちょっと皆さん、聞いてくださいよ。
    この人、さっき、ほんまに裏でごつーんとしましてん」

  し「鬼の首取ったように言いいないな」(うわ。なんちゅうアドリブかますんや)

  る「私ら、今はこういう高い所に立たせてもらってますけど、
    別に私らがエラいからやないんですよ」

  し「エロいかもしれへんけどね」

  る「そうそう。
    ほんでね、ここへ上がらせてもらおうと思たら、
    舞台の高さの分、段々を上がらなあきませんねん。
    ここやと五段の階段が裏にあるんです」

  し「五段あるね」

  る「この人、五段の階段を無事に上がれへんかったんです」

  し「一、二、三,し・・・ぅわーっ!ごつーんっ!」(こける振り)

  る「思くそ膝ぶつけて、出番直前に涙目になるて、どうやの?」

  し「痛かってんもん」

  る「痣になってる?」

  し「ほら」(ニーハイソックスをぺろっとめくる)

  る「うわ。えらい色になってるわー。
    って、どうでもええけど、志津さんミニスカートで足前に出して、
    ニーハイソックスぺろって」

客席最前列『眼福、眼福』

  し「え?パンツ見えた?・・・」(あ!卵茶くんや、やっほ?)
                    (普通に話しかけながら、手を振る)

  る「そこからやったら、見えた?」(普通に卵茶に話しかける)

 卵茶『内緒っ』

  し「ほんまに痛いねんから」(漫才に戻りながら、ネタはどこ行ったと脳内大捜査線)

  る「次の人が同じ目に遭うても困るから、早く切り上げて帰ろうとしない」

  し「早く切り上げようとしたんやないねんけど、
    るどんが、もうええわ言うから、つい釣られて」

  る「じゃこですか」

  し「じゃこは釣れへんやろー」

  る「いわし?」

  し「もうちょっと大きいのんにしとこうよ」

  る「あじ?」

  し「似たようなもんやなぁ」

  る「さんま」

  し「旨いなぁ」

  る「食べたいなぁ」

  し「どうせなら鯛にしとけへん?鯛の刺身に塩焼き。残ったアラで潮汁」

  る「腐っても鯛て言うしね」

  し「うんうん・・・腐ってんのかっ」

  る「ついうっかり本当のことを」

  し「本当のことて、まだ腐ってへんよ」

  る「まだて」

  し「まだ大学生やで?ぴっちぴちやんか」

  る「あー、そうやね。大学生やったわ」

  し「でしょ?ついこないだ履修科目で悩んだとこやん」

  る「やのに、もう卒論やもんねぇ」

  し「あ・・・」

  る「どうしたん?」

  し「いや、なんでもない」

  る「なんでもないことないでしょ?」

  し「忘れとった」

  る「素になりないな」

  し「マジで素になったわ。わー、どないしょー」

  る「後で悩んで」(早よネタに戻って)

  し「ちめたいなぁ。
    ほんで、一年生のときに履修届けを書こうと思て苦労したよなぁ」

  る「そそ、外国語は英語かなぁとか。第二外国語は何にするぅ?
    て志津さんに訊いたら『C+じゃ古いんやっけ?』て言うし。
    機械語を話してどうするんですか」

  し「るどんなら話せるかもしれんて思てんけどなー」

  る「読み書きは出来るようになるかもしれへんけど、話すのは無理っ」

  し「なんで?言語やのに?」

  る「発声する言語じゃないからっ」

  し「ああ、そうか。プログラム書いてて、
    『下手やのー』
    『ごちゃごちゃやんけー』
    『そんな汚いコード書くなやー』
    『それでは動けんぞー』
    言われたら、腹立つよなー」

  る「ゲームの『シーマン』要らんよね」

  し「機械が勝手に喋らんで良かったなー」

  る「それもちょっと違う気がするけど。
    まぁ、そんなん言うてたんがつい昨日のようです」

  し「ほんまに、大きなったなぁ」(しみじみ)

  る「え?」

  し「あんなちっちゃかった子ぉが、もうお嫁入りですかぁ」(近所のおばちゃん風味)

  る「綺麗なおべべ着せてもろてぇ」(同じく)

  し「千歳飴持たしてもろてぇ」

  る「お参りは、もう済みはったん?・・・って、なんで七五三やの」

  し「あれ?」

  る「あれ?やないわ」

  し「そやけど、七五三なんか、すぐやで?」

  る「もう済んでるっ。もしやるんやったら、お嫁入りっ」

  し「お嫁入りて、るどんも古いなぁ。今は『結婚』て言うのが普通やのに」

  る「先にお嫁入り、言うたんは志津さんやんか」

  し「あら、そう?」

  る「お嫁入りも結婚も飛び越して、認知症ですか」

  し「いやー、そろそろ危ないかもしれんわー」

  る「ほな、ちょっと試してみよか?昨日の晩ご飯は、何でした?」

  し「カロリーバディのポテト味」

  る「新しいのん出てるからて、買ってきてたね。って、それが晩ご飯?」

  し「それだけやないよ。大袋の底に残ってたチョコレート」(得意満面)

  る「あんたな、それでは病気になるで?しゃぁないなぁ。
    ほんだら、昨日は何をしてましたか?」

  し「卒論書いてました」

  る「遅くまで起きてたのは、卒論書いてたんか」

  し「うん、夢の中で」

  る「それは、寝てた言うのっ」

  し「てへ」

  る「てへ、やあれへんわ。ほんまにヤバイかもしれへんな。
    ほな、アナタのお名前は?」

  し「え?」

  る「もう一回訊きますよ。
    アナタの姓名は、何と仰る?」

  し「なに、わらわの姓名なるや、
    父は元京都の産にして、姓は安藤、名は敬三、字を五光と申せしが、
    わが母三十三歳の折、ある夜、丹頂を夢見てわらわを孕みしが故に、
    たらちねの胎内より生でし頃は、鶴女(つるじょ)、鶴女と申せしが、
    これは幼名。
    成長の後これを改め、延陽伯と申すなり」

  る「なんまんだぶ、なんまんだぶ」

  し「拝みないな」

  る「いや、ありがたいお経を上げて戴いて・・・」

  し「まんまやな」

  る「そらそうやん、私ら漫才コンビやけど、所属は落研やもん」

  し「門前の美女、習わぬ噺を演る」

  る「もうええわ」

る・し「ありがとうございましたーっ!!!」



    
---------------------------------------------------------------

終わって袖に入って、後に出る人に「お先です?」と挨拶をして、クロークに寄ってコートを受け取り、走り回っているふとっちに声をかけて外に出る。

秋晴れの下でまごちゃんが立ってた。

「お疲れさん。ご飯でも食べに行くかぁ?」

「車?」

「うん」

「行く行く??!」

「るどんも、一緒に・・・」

まごちゃんに言われるまでもなく、るどんは私に腕を掴まれて、まごちゃんが車を停めているであろう職員用の駐車場に連行されている。

ぽかぽか陽気の十一月三日。

私たちの学祭は無事に終わった。

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六日目:サク編 23話

 僕は、そこでみっこの記憶を見た。
 その蛇の腹に飲み込まれ、その黒い激流の中で、みっこの記憶を見た。それは何気ない日常を映した記憶で、僕と一緒に笑っている記憶だった。みっこの視点から僕を見ていた。教室に入って、まず僕を探そうとするみっこ。授業中僕を見ているみっこ。体育で僕の姿を探すみっこ。バスで僕の隣の席になり密かに喜ぶみっこ。そして、帰り際、教室で僕の姿を目に収めてから帰ろうと僕を探すみっこ。それらの視点は、まるで僕のようだった。僕も同じことをしていた。その共有が嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、僕は泣いた。
「やめろ……。やめてくれ!」
 僕は蛇の中で叫んだ。分かってしまった。意味が分かってしまった。それらのみっこの記憶が、一つずつ、一つずつ、消えていく。この蛇の中へ消化されていくのだ。記憶を食う。その意味が分かってしまった。代償は、僕への恋心だと言っていた。それを失っていくのだ。そしてきっと願いを叶える。本当に叶うのだろうか。でも、そんな……、こんなの意味がない。みっこは僕を好きでいてくれた。そんな奇跡が、何とこの日常の中で存在した。僕が気づかなかっただけ。きっとみっこも気づかなかっただけ。みっこは僕と一緒にいることを、楽しみにしていてくれた。
 それが食われようとしている。
 きっと僕を生かすために。
 でも、みっこが僕を好きだった記憶を忘れてしまうのなら、僕は生きていく意味がない。
「やめろー!」
 僕は渾身の力で、黒い蛇の腹を殴った。それはツヤツヤと黒い液体で黒光りする柔らかそうな壁面だったが、殴ってみると石のように硬かった。それでも僕は泣きながら、何度も何度も殴った。みっこの記憶に手を伸ばして、それが消えていくのを阻止しようとした。どうしようもなかった。それは、留めることなく消えていく。殴って、殴って、僕の拳からは血が吹き出た。
 それから、僕は一つの奇跡を見た。
 いつの間にか、僕は黒い蛇の腹を抜け出していた。そして、それは起こっていた。それが起こったということが、何よりも、この男の力を証明していた。この男は本物なのだ。本物の力を持っている。「そんな……」今まで崩れた壁に埋まっていた僕の下半身が、何事もなかったかのように崩れた壁の外に出ていた。それは治療されたというよりも、初めからこの形だったかのように「修正された」という方がピッタリとくる。
 そして僕は必死になって、繰り返し床をぶん殴っていた。先ほどまで黒い蛇の腹の中にいて、腹を殴っているつもりだったのに。僕は無心に床を殴っていた。僕はそれに気づいて、床を殴るのを止めた。ペタンと手を付き、その硬さを確かめた。こんなことはありえない。ありえないことを起こすなんて。この男の力は本物だ。僕の怪我を治す。その願いを叶えてみせた。ならば、代償の方はどうなる。みっこの記憶はどうなるんだ。
 みっこを見た。
 目の前にある唇が、ゆっくりと傾いていく。
 バランスが崩れ、倒れようとしていた。
「みっこ……!」
 僕は床に座り込んで手を差し伸ばすと、みっこの体を支えた。
 その体は、酷く軽くて、脆く感じられた。
「みっこ! ねぇ!」
「サクちゃん……」
 みっこはそれだけ言うのが精一杯で、再び、意識を失おうとしているみたいだった。おそらく、さっきもこれと同じことをして、みっこは記憶を失っていたのだ。だから火事でも目が覚めなかった。
 記憶を失ったのだ。
 代償は、僕への恋心。
「そんな……!」
 僕は信じられない。
 信じたくない。
 でも、この体の怪我が治ったのは事実。
 僕が動けるようになったのは事実。
 みっこに助けられたのは事実!
「クク、ハハハハハハハ! いいぞ……。旨い! これほどまでに芳醇だとは! この記憶は、いい! いいぞ! クハハハハハハハハハ!」
「悪魔」は笑い続けていた。体全体を、その不気味な笑いに委ねていた。僕は憎しみに満ちた目で、その悪魔の方を睨んだ。「お前は何をした……!」僕は尋ねたが、悪魔は愉快そうに体を揺らし、その質問を無視した。僕の存在なんか目に入らないかのように。小さな家畜を扱うように。
 あくまで自分勝手に喋る。
「おいおい、その拳の怪我は契約外だな」
「お前! 言えよ! 何をした!」
「言う必要はない。お前は既に理解している。イエス。それが正解だ。そんなことより、ククク、逃げなくてもいいのか? カハッ、ハハハハハ! 契約を結んだばかりで死んでしまっては困るな」
 悪魔がニヤニヤと笑った。
 僕は、唐突に思い出したかのように周囲を見回した。そんなことより。そういうことか。みっこの願いはあくまで僕の怪我を治すこと。それ以上のことは叶えてくれない。僕のあの怪我を容易く治すことが出来ても、みっこはここの脱出を願っていないから、僕らは火事に閉じ込められたままなのだ。
 契約。
 悪魔との契約だ。
「ちくしょう……」
 僕はとっさにみっこを背負うと、ドアに向かって走った。悪魔のことは置き去りにした。炎から現れたのだ。死、というものがないに決まっている。もう周囲の壁は炎に囲まれている。崩れた壁を避けながら、ドアを開けた。正面に走れば、非常口がある。少なくとも、正面に向かえばいいはずだった。
 正面の廊下、五メートル先が、崩れた天井に埋まっていた。
 僕は瞬間、呆然とした。そんな。逃げ道が完全に失われている。他にどうすればいいのだろう。他に非常口なんて知らない。小牧なら知っていたのかもしれない。でも僕は知らない。このまま逃げ出せず、焼け死ぬだけだ。せっかくみっこに怪我を治して貰ったのに犬死にだ。僕だけ死ぬならまだいい。このままでは、みっこも確実に死ぬ。
 死ぬ。
 足が震えた。
 怖かった。
 さっきまでの方が、死に接していたのに、今になって絶大な恐怖がやってきた。周りを見渡せた今だからこそ。死にたくない。みっこを死なせたくない。みっこは僕のために、「一番大切な記憶」を差し出してくれた。それが、僕にとっても大切なものだとしても、僕を助けるために差し出してくれた。死なせるわけにはいかない。みっこだけ逃げろと言った僕の言葉は嘘じゃない。みっこだけでも助けなきゃならない。
「ちくしょう!」
 僕はあても持たずに、とにかく走り出した。廊下の一方は塞がれているのだから、走り出すにしても一方向にしか行けない。入口の方だ。エレベーターと階段がある。エレベーターなど望み薄だろうし、何より入口の方が火の勢いが強いに決まっている。たぶん火元は入口に程近い食堂なのだから。各階へと結ばれる階段だって火に包まれているに決まっている。
 決まっているけれど、そこしか望みはない。
 案の定、階段に近づくにつれ、周囲は酷い有様だった。壁は崩れ、鉄骨が露出し、酷い音が辺りを包み、各部屋のドアが吹き飛ばされていた。それでもまだ走れる。足をつくだけのスペースが残されていた。僕はそのスペースを、飛び石みたいに踏みながら階段まで走った。
 やがて、これまでにない熱気が僕を包んだ。
 それは階段から上がってくる、津波のような熱気だった。しかし階段は残されている。僕はまず下を見た。手すりが溶解しそうなほど熱い。「くそ!」三階は炎が踊っている。もう階段を駆け上がってきそうなほどだった。周囲のもの全てを飲み込んで、壊すのがさも愉快そうだった。僕はさっきの悪魔を思った。他に、ないか。他に逃げ道はないのだろうか。上に行ってどうする。時間稼ぎだけだ。でも、他に方法が思いつかない。僕の頭はまるで馬鹿だった。他に何も思いつかない。ただ追いやられるようにして、上に行くしかない。
 僕は一瞬の逡巡の後、上に向かって駆け出した。
 五階、六階と階段を上っているうち、今が何階なのか分からなくなった。それほど高い建物ではなかった。おそらく十階もいかないだろう。でも、僕はその道のりがやけに遠く感じられた。まるで、夢の中で感じた、走っても走っても辿りつけない場所のように。僕はみっこを見た。まるで高熱にうなされるように、しかめた顔を僕の肩に預けている。力は全くない。酷く軽い。「みっこ……!」僕は走った。階段には幸いに燃えるものがないのか、異常な熱気以外は炎が達していない。まだ崩れてもいない。僕はただ走った。やがて、目の前にドアがあった。それは非常口と同じ、ペラペラのドアだった。僕はそれを蹴破るようにして開け放つ。元々開いていたのだろう。それは壊れるようにして開くと、僕の眼前に外の世界が広がった。
「屋上……」
 そこがやけに涼しく感じた。強い風が吹いた。みっこの髪が僕の顔を撫でた。こんな状況でも、みっこからはいい匂いがした。屋上だ。この建物に屋上があったことなんて初めて知った。長方形の屋上。周りは緑色のフェンスに囲まれている。パネルのようなコンクリートの床が敷き詰められていて、それは白っぽく、頼りなかった。この下では今、炎が燃え盛っている。
 僕はヨタヨタと歩いて、屋上のほぼ中央に達した。そこにみっこを静かに寝かすと、緑色のフェンスに向かって走った。この方角に、消防車が来ていたはずだ。誰かが気づいてくれるかもしれない。下を見ると、野次馬が群がり、炎と消防車の赤い光でまるでお祭りのようだった。そこにいる人たちの顔は遠い。でも、やけにはっきりと見えた。みんな真剣そうな顔だったけど、少なくとも僕より深刻そうではなかった。みんなは死なないのだから。あの消防車の梯子はここまで届くだろうか。あるいはヘリコプターとか飛んでいないだろうか。やっと外を感じられたのに、このままでは僕は死んでしまう。みっこは死んでしまう。みんなの前で死んでしまうことが、隠れてひっそりと死んでしまうことより残酷で残念に思えた。目の前に助かるかもしれない、助けてくれるかもしれない人ごみがありながら、助からずに死にたくはない。ここと、あそこの違いによって死にたくはない。
「助けて……」
 僕はフェンスに向かってしがみついた。
「助けて! ここだよ! 助けて!」
 僕は残っている力をかき集めて、声を出した。いや、もう力なんて残っていないのだ。かなり大きな声が出たつもりで、それは周囲の喧騒や、強い風や、火事の出す爆音に呑まれて消えた。たぶん、下には届いていないだろう。ガシャンとフェンスを叩く。諦めるな。諦めれば、みっこが死んでしまうのだ。もう一度、叫ぼうと思って下を見ると、何人かが、僕を指差しているのが見えた。気づいてくれた。僕は涙が出そうなくらい嬉しくなって、馬鹿みたいに手を振った。それは野次馬だったが、きっと消防士も気づいてくれる。あの梯子は何階まで届くのか分からないけど、きっと助けてくれる。僕はみっこを振り返った。
 その瞬間、視界が震えるほどの振動と爆音。
 ガクンと、足場が不安定になった。
 床のパネルにヒビが入ったことが一瞬で分かった。
 それは長方形の屋上を真っ二つに入ったヒビだった。
 僕は冬山のクレバスを感じた。
 その中央に、みっこが寝ていた。
 瞬間、僕は走り出した。
 野球選手のように滑り込んで、みっこの体を抱きかかえる。
 ギシギシと、不気味な音が聞こえる。
 巨大な氷を割るような音だった。
 少しでも動けば、割れてしまいそうな。
「みっこ……!」
 僕はみっこの顔を見た。
 ここまで来て情けない。
 みっこの目が開く。
 夢を見るかのような、綺麗な目だった。
 その目が開くと同時に、もう一度大きな爆発音が僕の真下から振動となって響いた。
 屋上全体が軋む。
 そして中心の、僕らだけの重さも支えきれないと言わんばかりに、階下に引っ張られるようにして床が歪んだ。
 落ちる。
 地獄の入口が開くように。
 僕はみっこの体をきつく抱いた。
「みっこ!」
 床に走ったヒビが震える。
 僕らを飲み込むために、口を開く。
 一度、骨が折れるような音を聞いた。
 それが建物の限界の音だったのだろう。
 瞬間後、ふいに浮遊感が訪れた。
 僕は悲鳴も出なかった。
 僕らは死ぬ。
 足元に広がる巨大な闇に飲み込まれる。
 その最中に、みっこの口が動いた。

「コルト。飛んで。あの桜の場所へ」

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六日目:蓮火編 14話

「   」

みく子は曲名を、空に向かって言い放った。
アコースティックギターに、みく子の指が触れる。
今日、最後の 。
歌声が、路地の空に溶けていく。

みく子の姿は、未だアバンギャルドなパーマで、肌は   白いままだ。
俺の叫びの甲斐は、やっぱ 無かったのかも知れない。

でも、今、空に溶けていく声。
それは、最初にみく子の肩を掴んだ夜の、あの攻撃的な声では無かった。
オレンジ色の髪の毛を揺らしていた時の声とも違う。
何ていうか、もっと、悟ってるっていうか、大きく皆を包むような。
例えば、それは人に合わせて色を変えてしまうような。

「なんか、すごいね。」

横に並んできて、ちぃたんがそう言った。

「生まれ変わった。」

俺がボソっとそう言うと、今度はミナミが並んできてこう言った。

「リニューアルしたっちゅー事か?」

その言葉を聞いて、俺は笑った。
正にその通りだ。

なんだ、結局、本質は変わらない だな。

みく子の歌 は、やっぱり周りを優しく包み込んでいる。

「変わる事は、悪い事なのか ?」

変わらないものは、きっとあるんだろう。

「  同じように歌えるかなぁ。」

ちょっと変わったけど、前よりもっと凄い声で歌えてる。

「へへっ。」

俺は、いつの間にか微笑んでいた。

最後の歌は、程なく終了した。

「どうもありがと 。」

そのみく子の言葉を聞いて、僕は振り返り、歩き出した。

「お、おい。最後に挨拶くらいしていかんの?」

ミナミとちぃたんが、そう言って俺の後を付いてきた。

「いいんだ。もう、俺、胸いっぱいだから!
 じゃ、またな。」

ミナミとちぃたんと別れ、家路に着いた。
路地から出て、人気の無い道路へ。

今回のみく子に関して、兄貴に随分協力してもらったな。
今度呑む時は、俺が奢ろう。バイト代が入ったら。

そういえば兄貴、俺が小学校ニ年生になるまでは、俺のほうが出来なかったのに。
何で立場が逆転したんだろう。

黒猫が、前方から歩いてくる。
今は何だか気分がいい。
微笑みながら黒猫を眺める。
黒猫と、目が合った。

「変  事は、 い なのかな?」

みく子の言葉を思い出す。

「悪い事じゃない。その存在意義さえ、見失わなければ。」

すれ違い、俺はまた前方を向いて歩き始めた。
その時、正に前方を向いた瞬間。

俺の後頭部に、手の感触があった。

「そ?さ。変わる事は悪い事じゃないんだよ?蓮火くん。」

「…誰だ?」

体が、動かない。

「誰だ、とはつれないな。もう十五年の付き合いじゃないか。」

「何を言っている?」

暗い海の底から、話しかけてくるような声。

「まぁ、お前は契約時の年齢が低かったからな。
 願いが漠然として大きすぎた。
 こちらも、願い相応のリスクを君に課した訳だが…。
 俺の事を忘れているのも、それは契約だ。
 ただ、俺に関しての記憶は、無くなるでなく、忘れる、だ。
 思い出せるだろう?」

「契約?金なら無いぞ!」

「余りに美味しそうなので、先に味見させて貰ったよ。
 だが、まだあの願いの分だけの報酬を得ていないのだよ。
 君が願いを叶える為に支払う記憶は、分割払いだからね。」

思い出した!

「そうか、お前は、あ!あく!まぁあ゛」

「イエス、お前達が求める限り、俺はその名で呼ばれるのさ。
 それじゃあ、いただきます。」

みく子、一つだけ言い忘れてた。

例えば、何の行動もせずに、何もかも上手くいくと思う事。
ただ、文句だけを垂れ流しながら、良い方向に変われと願う事。

それは、きっと悪い事だ。

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