ロシュ編
蜜編
サク編
蓮火編
アリエス編
黒編
しのめん編
奏湖編
ちこ編
志津編
タイキ編
ゆん編
なつめ編
卵茶編
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
■ロシュ
みく子の元カレ。
二枚目、頭脳明晰、スポーツ万能で浮気者。
みく子と別れてエリカと付き合いながらも、みく子に未練がある人。
■蜜
みく子の現彼氏。
みく子のアバンギャルドなパーマを見て怒った。
世界を救いたいと思ってる人。
■サク
みく子の初恋の人。
みく子のことだけを考えながらも、人生に絶望してる。
悪魔と契約なんかしちゃってる人。
■蓮火
みく子の知り合い。
路上ライブで知り合い、アバンギャルドなパーマを見て
「とりあえず、そのパーマだけは直せよ!」と路上で叫ぶ人。
■アリエス
みく子と同じ研究室の学生。
先輩には卵茶もいる。
教授にいろんな意味で愛されてる人。
■黒
みく子のチャット友達。
るどんとビリヤードしたりもする。
みく子と実際に会ったことはない人。
■しのめん
みく子の友達。
どう見ても二児以上の父親としか思えない老けた大学生。
色の識別が出来ない人。
■奏湖
みく子の元後輩。
大通りにある24時間営業のマックス・ドックスの元気な店員さん。
みく子のライブポスターをそこら中に貼りつけた人。
■ちこ
みく子のストリート友達。
みく子と同じようにストリートで歌ってる。
昼は喫茶店、夜はダイニングバーじゅごんで働いている人。
■志津
みく子の友達。
「ふろーら・しょうだ」でバイトしてる。
落研で「るど」と漫才コンビを組んでる人。
■タイキ
蓮火の兄。
タクシードライバーをしている。
弟の蓮火のことをいつも考えてる人。
■ゆん
みく子の友達。
普段はたまにメールでやりとりしてる。
みく子のライブのポスターを作った人。
■なつめ
みく子の高校の同級生。
高校時代はみく子の生演奏を聴いたりしてた。
現在は立派に社会人をしている人。
■卵茶
みく子のゼミの先輩。
みく子とはよくメールをする仲。
後輩にはアリエスもいるがどちらからも先輩扱いを受けていない人。
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六日目:卵茶編 01話

「さて、と…」

今日は土曜日。
運の良いことに仕事は休みになっていたので、午前中から家事をこなし風呂に入り、ゆったりと出かける準備をしている。もし仕事があったら、今頃かなり慌ただしく準備をしていただろう。

というのも、実は今日の夕方からみく子に会うことになっているのだ。
…良い女に会うときは、そいつが彼氏持ちでも一応身だしなみには気を使うべきだと思う。…プライドのたぐいだろうか。

しかしずいぶんと久しぶりだ。大学を出てからは会っていないから…半年以上だろうか?それが今回会うことになったのは、みく子からの突然の誘いのメールが理由だった。

そもそもみく子との関係は、大学のゼミの先輩後輩。彼女がゼミの申し込みで研究室を訪れたとき、偶然居たのが俺だった。
オレンジ色の長い髪、白い肌、大きい目でまっすぐに人を見る。笑顔が可愛くて、時々小悪魔的な仕草や表情をかいまみせる。

かなり好みではあった。

とはいえ、年下は一度痛い目にあったこともあり、当時NGだった。残念なことに。

で、あればこそ。
次に会ったときに先輩ヅラして『何でも聞いて良いよ』と言ったときに、それこそ小悪魔的な笑みを浮かべながら、上目遣いで、『え??本当ですかぁ?じゃあ、いつでも相談出来るように、メルアド、聞いても良いですか?』などと聞かれても、(うわ、こりゃ可愛い。つうかでも、狙ってやってんだから怖いわ?。でもかわい?)と、思いながらも冷静に対応したものだ。
ま、きっと誰にでも同じようなことは言っていただろうし。

で、それ以来、言葉通りに相談相手としてメールをやりとりしている。まあ、妹分みたいなものだろうか。

それはともかく。

みく子とは、大学を出た今でも、せいぜい一日に一通の割合だがメールをやりとりしていた。ほとんど途切れずに続いていたのでは無いだろうか。
普通のメールのやりとりを極端に引き延ばしたもので、くだらないことから大事な相談、日常の出来事も聞いていた。彼氏の話もよく聞いた。

…ちなみに、なぜかみく子を呼ぶ時は“さん”付けだったりする。『みく子さん』と呼びかけるわけだ。
まぁ、なぜかも何も、最初は名字にさん付けだった。しかし、それなりに親しくなって名前を呼ぶようになった、でもさんは残った。それだけ。
ちなみにさらに言うと、向こうは“くん”付けだ。何故だ。
…上下関係の表れなのかもしれない。とは、考えたくないが。

………ん?そういえば、みく子の名字は何だったか…
携帯にも“みく子さん”で登録してあるから思い出せない…

ともかく、そんなみく子からのメールが途絶えた時期があった。
その前から話は聞いていたので、焦りはしなかった。

心配はしたけれど。
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六日目:卵茶編 02話

『髪型とか…変えようと思って』彼女はそれまでのメールの話題からはおもむろに離れて、送ってきた。

『周りのみんなにも伝えてあるんだけど。もしかして…もしかしてだけど、印象が変わりすぎて、みんなビックリしちゃうかな?って。』『でもやっぱり、今変えなきゃいけないと思うんだ』『嫌われたらどうしよう…みんな見てくれなくなったらどうしよう…』『………変わらなきゃ、いけないんだから。受け入れてもらえなくても、変えるよ。でも…ちょっとくらい傷付くかもしれないなぁ。』『その時はちょっとくらい連絡取れなくなっても、気にしないでね。変わった自分に自信持ちたいから。ちゃんと帰ってくるんだから。』

俺は答えた。

『そうなったら、俺みたいな直接会えないような…携帯だけで繋がってるような人間も、ちょっとはアリなのかな?みく子さんが変わったとしても、俺はみく子さんのことを見続けるよ。』

『…うん、ありがと☆』『今日から変えるんだ。みんなに見てもらってくるね。』

そのメールに対して俺は返事をしたが、それからしばらく、メールは無かった。
焦りは無かったが…心配ではあった。みく子の周りには、いつでも人が居た。あの明るい髪を誰もが毎日のように眺め、話しかけた。人に見られて、初めてみく子はみく子であり得ると言うのに…。

とはいえ、心配は必要無かったようだ。

次にメールがあったのは五日後、昨日のことだ。『もう大丈夫』。こんな文章を冒頭に置いたメール。その数日でみく子と関わった人たちのことを色々と教えてくれた。

携帯の中から、嬉しそうに。





今日会うのは、心配かけたお詫びとして、飯をおごってくれるそうだ。楽しみだ。

そして、みく子に会うのが久しぶりな俺は、髪型を“大胆に”変えたというみく子を見てどう思うのだろう?

飯のあとは、路上ライブにも招待してくれるらしい。

そしてそこには“みんな”も来るという。

“みんな”が誰なのか詳しく知らないが、何にしろたくさんの人が来るのだろう。そして、きっとメールで聞いた名前も耳に入るだろう。

とても、とても、楽しみだ。


……
………
さて、そろそろ、行こうかな。

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六日目:卵茶編 03話

約束の時間まで、あと五十分。車でゆったり行けば、十分前に着く予定だ。
一ヶ月前に買ったばかりの黒の軽…もちろん中古、九万円也…に乗り込み、キーを回す。

大学入学時に、大学から随分と離れた場所にアパートを借りた。チャリンコで一時間強。その分家賃は五万を切る。親元を離れたかった俺は、当然の様に離れた大学を選び、一人暮らしを始めた。普通に不真面目な大学生をやりながらも、単位計算だけはキッチリして、ストレートに卒業、就職だ。
住環境も整えていたので、家はそのままで通勤している。

みく子さんとの待ち合わせは、大学だ。

つまり、ゆったりと走らせているこの道は、学生時代に一時間かけて通った道。
今では、普通なら車で二十五分。ゆったり行っても四十分。

楽をしたい訳では無い。
でも、きっともう、自転車では走らない。

自分は変わってしまったのだろうか?

変わってしまった俺と、変わってしまったみく子。再会の一言目は何にするべきか…そんな意味のないことを考えてしまう。

いや、しかし、考えるべきはもう一つある。

飯奢りで、大学待ち合わせ。車で行くことは伝えてあるものの、どこに行くとも聞いていない。
…学食である可能性は、あるのだろうか?
学生は、常に貧乏だ。
前に聞いた話だとみく子は、よく猫に餌をあげるらしい。自分の食事より優先するほどに。
であれば…学食である可能性も、考えておいた方が良い。

………学食くらいならこっちが奢るっつうの。
いや、まだ分からないわけだが。

とはいえ、学食には良い思い出が無い。特に、ナポリタンとピラフは、二百円という安さで、量と不味さを誇っていた。

のだが。

確か、みく子のメールに書いてあったのだが…学食のナポリタン、なにやら美味いらしい。今は。

ど?ゆ?ことだと、食堂のおばちゃんを小一時間問い詰めたい。
つい最近、メールの中でよく聞くロシュくんとやらが旨かったと言っていたらしい。
………飯が学食だったら、今日はナポリタンだな。





車を走らせながら、この後のことを、色々と考える。

夕暮れが沈んでゆく。

オレンジ色の輝きが。

次に来るのは

白では無くて

紺と黒だ。

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六日目:卵茶編 04話

大通りではなく、住宅街を抜けて、大学へ向かう。
当時、色んな道を使うことにも飽きて、ただ早く大学に着くためにチャリを走らせていた。

今は、ゆっくりと。

犬の散歩をする女性。
柿が実った古風な庭。
たばこ屋のお婆さん。
猫がよく居る路地裏。
お気に入りの白い家。
遠くで響く太鼓の音。

祭りの季節だ。

あの頃、気にも止めずに通りすぎた、多くのこと。






変わりゆくものも、変わらないものも、等しく愛せることに気付いたのは最近のことだ。






共都大学の正門が見えてきた。
待ち合わせは正門なのだが、みく子の姿が無いことを確認しつつ、そのまま車を学内に入れる。

…考えてみたら、原付すら持っていなかった俺は、駐車場を利用するのが初めてだ。
警備のおっちゃんには『自分は卒業生で、教授に会いに来た。研究の手伝いをする約束なので、車は明日まで置くかもしれない。』と伝えた。
予想通りにあっさりと通れたので、そのまま車を止めてからもう一度正門を眺める。

まだみく子は居ない。

予定よりも少し早く着き、時間はまだ十五分前だ。
少しだけ学内を歩こうかな。

本館の前を通り過ぎ、とりあえず学生時代のように研究棟へと足を向ける。
辺りをよくよく見てみると、ベニヤ板やらの木材がかためられていたり、使い込まれたような看板が横に放置されている。『川島研究室…おしるこ“かわしま”』だそうな。祭りの季節なのは、ここの大学も同じようだ。
途中学食を眺めると、少しは人が居た。学祭前なのもあるが、部活の連中向けにいつでも八時頃まではやっている。
そして、部室棟を通り過ぎるとき…

『はぁ?い、どぉも?!!』

…!!

もう普通にビックリした。
横合いから女の子の二人組が、突然目の前に飛び出したのだ。
………当然、自分らで拍手をしながら。

「志津ちゃんで?す!」
「るどちゃんで?す!」
「『きゃっつぽぅ』です!」「です!!」

その時のポーズ、手は猫の手だった。…大学生にもなってそんなポーズ取ってんじゃねぇ、という。ちくしょう、可愛いじゃねぇか。





…というか

あれ!?なんか巻き込まれた!!

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六日目:卵茶編 05話

「はいっ、こんにちは?!キャッツ・ポゥです?」
「そうそう、志津さん。るど、ずっと疑問やってんけど、キャッツ・ポゥて、なんなん?」
「えっ?猫の手やけど・・・」
「あー!忙しい時に借りるやつ!」
「そうそう。そやから、忙しいときは『にゃんにゃこ舞い』て言うやん?」
「・・・それは『猫の手も借りたい』と『てんてこ舞い』を合体させただけやんかぁ」
「感じ出てると思わへん?」
「そーですかー?」
「ほんで、年寄りが無理したら『年寄りの鼻水』やし」
「こっちが洟出そうやわ」
「桃栗三年、ネタ八年」
「大学卒業してしまうやんか」
「留年したら八年まで居れるよ」
「居らんでよろし」
「んで八年もおったら“時は兼成”言われてなぁ」
「誰やねんな」
「そら徳川家の…」
………

(………ふむ)

一度時計を見てから、二人に軽く会釈してから正門に向かって歩こうとする。

「あ!あ?あ?、お兄さん!!」一人が何やら前に立ちはだかる。
「すいません、良かったら…なんですけど、少しだけうちらに付き合って貰えませんか?お客さん役で見てもらいたいんですぅ」と言ったのは志津ちゃんとやらの方。標準語になってる…関西弁のが可愛いのに、ちぇ?。
「…いや、悪い。待ち合わせしてるんだ。そろそろ時間で」時計を見せながら言う。
すると、物凄く残念そうな顔をしながら「そおですか、残念です…」と素直に横にどく。
「ごめんな?。」と立ち去る。が、途中で振り向く。
「…なぁ、君ら学祭でソレ、やるの?」
『へ?えぇ、まぁ』
返事と表情が揃う。それだけでもう面白い。
「うん、いや、最近は余裕もあるし、折角だから見に来ても良いかも…と思」
『ホンマですか!?』
こちらの言葉が終わる前に揃った声で被せてくる。
「やったやんか、志津さん!お客ひとりゲットやで!!」と、るどさんの方は普通に関西弁。
「いや、まあ予定が合えばだか」
「い?え!お兄さん、こ?なったら来てもらなな!!」また被せられた。
志津ちゃんが続ける。
「あれですよ、お兄さん。今日のは練習用のネタですから…本番はもっと面白いですよ??見ないと損ですよ?!?」と、ニッコニコしながら。顔に出る娘は嫌いじゃない。
つられて笑顔になりながら、「わぁかった。見に来る。見に来るよ。」両手を降参のポーズ。
途端に志津ちゃんが後ろに周り、背中を押しながら、「じゃあ、あとは次回のお楽しみということで…ね☆」
押された勢いのまま歩きながら少し振り向くと、二人して手を振りながら「待ってますからね?」と言っている。
片手をあげて、そのまま歩き去る。

…なんだか、みく子に会う前から楽しい気分になってしまった。学祭の日は確実に空けておかないと。
「………と、いかん。」
学祭の日を確認していなかった。普通に土日のはずだが…。
振り向いて、距離の離れた二人を見ると、既に新しいエモノを捕まえているようだった。…御愁傷様、と苦笑しながら呟く。

なので、正門に行く前に掲示板を見に行く。学祭のポスターが貼ってあることだろう。
もう待ち合わせの時間ぴったりだが、少しくらい良いだろう。

(え???っと…)

…探していると、後ろから肩を叩かれた。

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六日目:卵茶編 06話

「お久しぶりです?」
反射的に振り返る。

みく子だ。

………みく子なのは、声で分かった。理解出来る。
クエスチョン、肩を叩いたのは誰?ピンポ?ン『みく子さん』。正解!!パ?パラッパ?♪

…だが。
なにやら振り向いた瞬間、通常の高さの視界には、うっすらとオレンジ色のモジャモジャしたものがあって、まあそこまでは冷静で、視界を下げると顔色は白くなったものの変わっていないみく子の顔があって、もう一度視界をあげるとモジャモジャしてて…その時点ではもう冷静というよりはぼ?ぜんとしてしまったわけだが。
“大胆に”変えたということは聞いていたものの、反射的に振り返ってしまったのは失敗だ。
心の準備ってやつを、旅行かばんに詰めて持ってきたんだけど、バッグから出す暇すら無くバーベキュースタートみたいな。
例えも訳が分からない。混乱してるようなので落ち着こう。

…よし、お?けい。

「………ねぇ、どうしたの?」
頭一つ分下から、顔を覗きこんでいるみく子。
アバンギャルドなパーマなので、むしろ今は頭三分のニほど下。

「…いや、聞いてはいたけど、さすがに驚いたし。こんなリアクション、慣れただろ?」
みく子の頭を見つめながら。
「うん、まあね?」

タメ口にもほどがある。むしろ俺が敬語を使ったら良いのだろうか…?

「とりあえず…久しぶり、みく子さん。で、今日はどこへ?」
俺が尋ねると、みく子が首を傾げる。
「う?ん…あっちのイタリアンとか、みどり食堂とか…ナカムラとか?」
首を傾げるときに、アバンギャルドがユサユサッと揺れる。わけでも無い。パーマをかけても髪質は柔らかいようで、フワッと揺れる。
街灯に照らされて、闇の中に残像が残った。

………?
いや、今は良い。

ちなみに、みく子があげた三ヶ所。アンティパスタ、みどり食堂、カフェナカムラ。どれも近所で、まあほどほどに学生が行きやすい値段だ。

「…おまかせ」
「え?!?…ん?、あ?…もう、じゃあみどり食堂にしますね。」
「あい」
「じゃ、行きますか」
みく子が先に立って歩き出す。

………
歩きながら、みく子の髪を眺める。
さっき感じた違和感。みく子の髪、変わらずオレンジ色なのだが、前より色が薄くなったような…。
薄くなったといっても白髪というわけでは無い。オレンジを基調に、シルバー…いや、むしろ透明に近い?
肌も白い。 人によっては『病的な白さ』とまで言われたらしい。そんな話をメールで聞いて、まさかとは思っていたが…。
髪の長い内は見えなかったうなじに、エロさよりも心配を覚える。



「どうかした?」
振り向いたみく子。
「いや、何でも無いよ。」
小走りに彼女の横に並ぶ。

みく子がまたくるっと前を向いて歩き出す。
ふわっと、闇に白い残像が焼き付く。

『もう大丈夫』とメールで聞いた。

聞いたが。

………俺が関われることなのだろうか…?

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六日目:卵茶編 07話

みく子とゆっくりと歩きながら、教授の最近の様子だとか、後輩連中の話なんかをつらつらとする。
程なく、みどり食堂に着く。
学生の味方。安くて量が多い。味はそこそこ。学生の味方というよりも、貧乏学生の味方、だ。俺も世話になった。

………安くあげられた気もする。
いやまあ、カフェでケーキだのスパゲッティだのちょこっと食った程度じゃ腹に溜まらんので、正解といえば正解だ。

「さ、ど?んと頼んでね!今日は俺の奢りだ?!!」言葉の後半はおっさん声だ。
「何その声」冷静に突っ込む。
「良いじゃ無い。なんかこんなイメージじゃなぁい?」
「『奢りだ?』って?」
「『奢りだ?』って。まま、とにかく何にする?私も昼前にフィッシュバーガー食べただけなんだ!お腹減った?。」
「つうか、相変わらず金無いんじゃ無いの?」誘われた時から思っていた疑問をば。
ギクリとした表情をしてから、えへへと笑う。
「い?のぅ。大丈夫、近々入る予定はありますから!!」
「ん???…ま、良いけど。」

とりあえず、その辺の追及は置いといて、注文をする。
店内は、時間はまだ早いものの半分くらい席が埋まっていて、おっちゃんもおばちゃんも忙しそうだ。
おばちゃんが近寄ったタイミングで注文をする。俺はミックス定食。みく子は焼き鮭定食、ご飯は小盛り。

「…んで?みく子さんの方は?最近色々あったみたいだけども。」
料理が来るまで時間がありそうだし、本題…というか何というか…を切り出す。
「………ん?。」
目線をあちこちやるみく子。話しづらいのか、それともどこから話したら良いのか分からない、ってな顔だ。
「ん?????…」
「ど?した。」
あんまり考え込むので、聞く。
「ん?うん、え?とね。ん?。」
まだ少し必要なようだ。だがすぐに、
「…とりあえずね。」
「うん?」
「色んな人に、心配かけちゃったなぁって。」
「ふんふん」
「でもね。心配してくれた人とか、色んな人に会えたの。側に居た人にも。久しぶりな人にも。初めての人にも。」
「うん」みく子は、目線をくるくると動かしながらも、話すときには俺の目を見る。俺もしっかりと目を見つめて、相づちを打つ。
真剣に話を聞くこと。それだけが相談を聞く側に必要なことだ。答えが出るかなんて関係無い。

明るい表情で話すみく子。以前よりもむしろ明るくなっただろうか。

「色んな言葉を貰ったの」嬉しそうに、明るく言うみく子。
「変わって良かったのかもって思えたの」「理由は変わらなきゃいけないからだったけど」「心配してくれたことが嬉しかったの」「でもホントはみんな心配なんてさせたくなかったんだ」「今は納得してるよ」「今は後悔してないよ」「変わって良かったのかもって、思ってるんだよ?」

明るい表情のまま続けるみく子。
なんだろう、この明るさは。目が、いや、目の奥が痛い。
みく子の明るさが、白さが、文字通り網膜に焼き付けられているのだろうか?…痛みを伴って。

みく子から貰ったメール。
『もう大丈夫。色々あったけど、ちゃんと全部解決しました!』
深くは聞こうと思わなかった。携帯の奥に踏み込もうとは思わなかった。





きっとあの言葉は、嘘だ。





「ねぇ、卵茶くん?」
「変わってしまうことはいけないことなのかな?」

…ズキッ…

………
再会して初めて、名前を呼ばれた。

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六日目:卵茶編 08話

「変わってしまうことはいけないことなのかな?」

みく子の明るさは崩れない。

みく子の明るさは、笑顔だ。

他の感情を覆い隠す、硬さだ、壁だ、仮面だ。
…みく子の声は、震えていた。顔の代わりに感情を表すかのように、グラグラと揺れていた。
俺がみく子の話題に触れた時から声が揺れはじめ、それに伴って、みく子の明るさは増していったように思う。

………
この後が、ライブであることを強く意識する。
…きっと彼女は、色んな人にこの問いを向けてきた。
…きっと、俺が最後だ。
曖昧だけれど、確信に近い気持ちでそう思う。

みく子の問いから数秒の沈黙が過ぎている。
俺はその沈黙に、息を飲む。
そしてその沈黙を越えるために、そのままその息を深く吐き出す。
そしてさらに、みく子の明るさを崩すために、言葉を吐き出す。

「………そうだな。」「例えば、誰かが『頑張らなきゃ』と言ったとしよう。そしたら俺は『頑張らないで』って声をかけるんだ。」「『頑張っても何も生まれない』なんて言われたら、『いや、頑張ることは何より大事だ』とか言ったりね。」「知ってるだろ?俺はあまのじゃくなんだ。」「…そして、理由だっていくらでも用意出来る。」「否定も肯定も。」「拒絶も許容も出来るんだ。」「俺は“百”を与えることが出来るよ。」「でも、それはお前の“一”じゃない。」「俺の“百”になんか、価値は無いんだ。」「さっき、言ってたじゃないか。」「『色んな言葉を貰った』って。」「たぶんもう、材料は充分なんじゃないか?」「………さて、みく子さん。こんなとき俺が何て言うか分かるかい?」

みく子は、俺が聞いていた時とは違い、一切相づちを打たなかった。ただ、目を逸らすことは一切無かった。
明るさを、笑顔をそのままに。


……
………
…ふいに、他の色が混じる。

…白いのに?

気付けば、彼女はとうてい小悪魔的とは言えない、ニヤニヤとした笑みを浮かべていた。ただ、とても彼女らしい表情だ。

明るさをそのままに。

「…卵茶くんがマジメ?に語ってるとこ、久しぶりに見ちゃった。」ニヤニヤ。

「…言ってろ。」
実際ハズい。さっさとこの話を終わらすべく、言葉を続ける。
「んで?答えは。」

「………『自分で決めろ』って?」ニヤニヤ。

「はい正解。終了終了!」
彼女の中で、もう決まっているはずの解答。聞く必要は無い。

…俺は本当は、ここに必要無かった。
相談ではなく、既に出た答えへ収束するだけの会話。



彼女はライブをするのだから。

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六日目:卵茶編 09話

ちょうど良く料理が来て、話も途切れたので、食事に集中する。

…俺よりみく子の方がガツガツ食ってるのはど?ゆ?ことだ?
相当腹が減っていたらしいが、胃が小さいのはどうしようもなく、ご飯は小盛り。
「いっそ変化があるのなら、食いだめが出来るようになれば良いと思うの。本当に。」
みく子は真剣に言ってから、自分で大笑いしていた。

…ふむ、“変化”がキーワードなのは変わらないようだが、自分で笑いに出来るなら大丈夫なんだろう。

「…じゃあ、いっそ太れ。」

「ひっど?い!女の敵ね!!」
かなり本気めに怒った後で、また大笑い。


あぁ、そうか。
彼女の明るさは、崩すべきものでは無かったんだ。
彼女の笑顔は、変化と共に生まれたものだ。変化への必死の抵抗なんだ。そして、彼女なりの勇気の形なんだと思う。


あぁ、そうか。
やっぱり俺は、ここに居る必要は無かった。
実際の姿が変わっても、携帯の奥のみく子は何も変わらなかった。むしろ今ではよりカラフルに感情を、言葉を伝えてくる。
俺にとってのみく子の居場所は、今も携帯の奥なんだ。

「でもでも!むしろ太れるだけのお金が無いのが問題なの!!」
…まだその話題続けるのか。
「…じゃあ、むしろ痩せれ。」
「なんで!?」
「いや、筋肉減れば代謝落ちるし、体重減れば運動エネルギーが減るわけじゃん?だからなんだけど…」
…なんだろう。みく子の『なんで!?』に、何かがふと頭をよぎった。
なんだろう、関西弁風の発音が…
『あぁ、そっか…』
二人の声が被った。みく子のほうは俺の屁理屈に納得した言葉だが、俺の言葉の意味が分からず、彼女は俺に不思議そうな視線を向ける。

視線に応えて、弁解の言葉を。
「いやさ、今日待ち合わせの前に学内で漫才コンビに捕まったんだ。“きゃっつぽぅ”ってコンビ、知ってるんじゃない?」

そう。何故かみく子が、あの志津ちゃんとやらに重なって見えたのだ。
「へぇ?!志津ちゃんとるどちゃんに会ったんだ!!しかも漫才!?くーっ、アタシも見たかった?!!」
そういえば、関西弁を巧みに扱う女傑(笑)が友達にいるとメールで聞いていた。よくネタになるが、メールでは名前を聞いていなかった。
…曰く、学内で牛乳を浴びせあっている連中に遭遇してとばっちりで牛乳まみれに。…曰く、牛乳まみれで部室に避難したら部長とやらが何故か持っていたブルマに着替えさせられる。…曰く、何故かむしろ自慢気にそのまま授業に参加。
「そう、志津ちゃんも今日来るはずだよ!」………学祭は、是非とも行かねば。

しかし、なんで急にあの娘が重なったんだろう?そういえばニヤニヤ笑いのときのみく子も、みく子らしいと思いつつも、誰かが重なって見えたような…?

その後はしばらく、ライブに来る人のことやなんかを、時間が来るまで話した。

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六日目:卵茶編 10話

「さってっと…そろそろ行こうかな。先に集まってる人も居るかもしれないし、ね。」

みく子が立ち上がる。次いで俺も立ち上がり、レジの方へ。

「いっしょで。」
言いながら、みく子が財布を出す。
「千二百五十円ね?」とのおばちゃんの声に、みく子が財布を開き取り出したのは、二枚の千円札。覗きこむと、それで財布は空っぽ。少なくとも札は無い。

…俺は深々とため息をつき、みく子が小銭を用意してる間に自分の財布を出す。
そして、みく子の頭をポンポンと上から叩く。振り向いたみく子の顔の前に出したのは、こちらも二枚。ただし、万札。
「俺が出す。」
ビラビラさせた万札に、みく子はぐぅと黙り込む。

普通に千円札で支払いを済ませて外に出ると、みく子が不満気にぶちぶちと言う。
「奢るって言ったのに…」「心配させたお詫びだって言ったのに…」「確かにお金無いけどさ…」「でもでも入る予定あるって言ったもん…」

後ろでうるさい。
「い?じゃねぇかよ。金あるときには奢るのが俺の主義なんだよ。」
「だってぇ、今日だって話聞いてもらったのにぃ…」
「まだ言うか。…いんだよ。んじゃあ今日のライブに対する期待ってことにしとけ。」

「………はぁ。んもう。」
とりあえず呑み込んだらしい。でも、とみく子が続ける。
「…今日のライブは、一切お金貰わないつもりなんだ。だから、普通に奢られたってことにしとく?。…金が入ったら絶対奢りますからね!」
「あいよ。」
とりあえず納得したらしいみく子は、俺の前に出て、そのまま歩き出す。
「とりあえず、ゆっくり行こうか?お腹もいっぱいだしね?」
と、言葉通りにゆったりとした歩調で。

ふわふわと揺れるアバンギャルド。
白い街頭に照らされ、眼の中に残像が残る。


「ちょいと、みく子さんみく子さん?」
「な?ん?で?す?か??」やけにのんびりと返すみく子。

「んっとさぁ、さっきの質問。」
これだけで見当はつくはずだ。
「………ん?」
みく子は振り返ることなく、ゆったりと、促す。

「一応さ、俺なりの答え、用意してみた。」
「………ん。」
ゆっくりと流れる時間。

「………変化ってのはさぁ、普通、なんだ。」
「…」
「今この瞬間にも、一瞬前の自分とは違うんだよ…なんて、よくある言葉だけど。」
「…」
俺のときとも、さっきとも、また違って。
みく子はこちらを見ようとはしない。
俺もみく子を視界の端に捉えながらも、閉じたシャッターや街灯に目をやりながら、歩く。

「変化には、常に始まりと終わりとがセットで付いてくるんだ。」

「何かが変わってしまったときには、新しい何かがそこにあるんだ。」

「変わってしまったものを惜しむ気持ちはきっとあると思うんだ」

「でもそれよりも、生まれた新しい何かを、祝ってあげたいと、俺は思う。」

「…ちょっと、理想が過ぎるかもしれないけど。」

………
こんな言葉で伝わるとは思わない。思わないけど。



「…よし!!」
みく子が急に背伸びをした。
「やっぱり走ろう!きっとみんな待ってるから!!」
振り向いた顔には、やっぱり笑顔。

…走り出したみく子。
……揺れるアバンギャルド。
………残像。






ライブ会場の広場には、それなりの人数が集まっていた。

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