fc2ブログ
ロシュ編
蜜編
サク編
蓮火編
アリエス編
黒編
しのめん編
奏湖編
ちこ編
志津編
タイキ編
ゆん編
なつめ編
卵茶編
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
■ロシュ
みく子の元カレ。
二枚目、頭脳明晰、スポーツ万能で浮気者。
みく子と別れてエリカと付き合いながらも、みく子に未練がある人。
■蜜
みく子の現彼氏。
みく子のアバンギャルドなパーマを見て怒った。
世界を救いたいと思ってる人。
■サク
みく子の初恋の人。
みく子のことだけを考えながらも、人生に絶望してる。
悪魔と契約なんかしちゃってる人。
■蓮火
みく子の知り合い。
路上ライブで知り合い、アバンギャルドなパーマを見て
「とりあえず、そのパーマだけは直せよ!」と路上で叫ぶ人。
■アリエス
みく子と同じ研究室の学生。
先輩には卵茶もいる。
教授にいろんな意味で愛されてる人。
■黒
みく子のチャット友達。
るどんとビリヤードしたりもする。
みく子と実際に会ったことはない人。
■しのめん
みく子の友達。
どう見ても二児以上の父親としか思えない老けた大学生。
色の識別が出来ない人。
■奏湖
みく子の元後輩。
大通りにある24時間営業のマックス・ドックスの元気な店員さん。
みく子のライブポスターをそこら中に貼りつけた人。
■ちこ
みく子のストリート友達。
みく子と同じようにストリートで歌ってる。
昼は喫茶店、夜はダイニングバーじゅごんで働いている人。
■志津
みく子の友達。
「ふろーら・しょうだ」でバイトしてる。
落研で「るど」と漫才コンビを組んでる人。
■タイキ
蓮火の兄。
タクシードライバーをしている。
弟の蓮火のことをいつも考えてる人。
■ゆん
みく子の友達。
普段はたまにメールでやりとりしてる。
みく子のライブのポスターを作った人。
■なつめ
みく子の高校の同級生。
高校時代はみく子の生演奏を聴いたりしてた。
現在は立派に社会人をしている人。
■卵茶
みく子のゼミの先輩。
みく子とはよくメールをする仲。
後輩にはアリエスもいるがどちらからも先輩扱いを受けていない人。

■各エピソードへジャンプ
| TOP |
■M線上のアリア CM動画 A巻発売編!
 
 

一日目:プロローグ 00話

Hello?
聴こえていますか。
君が最初に聴いた歌と、君が最後に聴いた歌。

Hello?
聴こえていますか。
零れ落ちそうなリズム。一回。二回。三回。四回。

聴こえているなら手を伸ばしてね。きっと間に合うはずだから。
何も無い世界に、一体どうやって、色を付けようか。
……ねぇ、君は何の為に生きてる?


【M線上のアリア】プロローグ


――何となく訪れ始めた秋に向かって、私は一人で息を吐いた。
普段通りの花屋のバイトの帰り道、見慣れた公園は紅葉に染まり始めている。
店長がくれた、売れ残りの小さな赤い花束を抱えて、私は急ぐでも無く、止まるでも無く。
只、何となく歩いているのは、只、何となく別に意味と目的なんて無いからだし、只、何となく気侭に歩いていた方がラクだからに過ぎない。少し古びたアパートの鉄階段を昇って、鍵を回して、わざと勢い良く、扉を開ける。テレビから流れる笑い音が聴こえた。「ただいまぁ!」

「……おかえり、早かったね」
テレビを観たまま、此方を振り向きもせずに、恋人が形式通りの返事をする。
「蜜クン、見てよコレ、店長に貰っちゃった!」
「……また売れ残りの花でしょ?」
やっぱり振り向きもせずに、恋人は言う。
「売れ残っても、お花は、お花! 大体さ、お花は自分が"売れ残った"なんて思って無いよ! 人間が勝手に売り買いしてるだけなんだから! 売れ残っても、お花は、お花!」
そこまで言うと、ようやく恋人は、身体は寝たまま、顔だけを此方に向けた。
「……へぇ、どんな花?」
「あのねぇ、コレはねぇ、ワレモコウっていうお花だよ」
「……へぇ」

私はパソコンを起動させ、Tシャツを脱ぐと、それを洗濯機の中に放り込んだ。
「あれ、洗濯まだ?」
「ああ、後でやるよ、テレビ観てから」
「あんまり夜中に洗濯すると、ご近所の迷惑になるんだよ」
蛇口を捻ると、まだ冷たい水が流れた。
浴槽にお湯を溜める、水道の音が響く。
「あれ、黒ちゃん、今日はまだ来てないなぁ……」
お気に入りのオレンジ色のソファに座り、パソコンのモニターを覗くと、私は独り言のように呟いた。まるで彼は反応せず、相変わらずテレビを眺めている。それほどテレビが好きなのかと訊ねたら、きっとそんな事はなく、只、何となく眺めているだけだろう。
「先にお風呂入っちゃうけど、蜜クンお腹すいたでしょ、何食べたい?」
「ナポリタン」
「また? 好きだなぁ、ナポリタン」

恋人と同棲を始めて、もうすぐ二年が経とうとしていた。一口に二年と言っても、それなりに紆余曲折があり、それなりに長い月日を重ねたような気がする。だけれど、やっぱり、私は急ぐでも無く、止まるでも無く。このまま毎日が続くと良いなぁと、只、何となく思っている。

「……ああ、そう言えば、みく子」
「何??」
「何か分厚い便箋みたいなの、届いてたけど」
「へぇ、誰から?」
「んと、何だコレ、えと……JNL?」

テレビの中から下品な笑い声。
「……へぇ、何処かの新しいショップの案内状か何かじゃない?」
下着を洗濯機の中に放り込み、浴室の扉を閉じた。

シャワー音。
難しい事は、あまり考えたくない。大抵の出来事は、水に流せば忘れてしまう。だけれど世の中には、どうしても忘れられない事もあって、それはどれだけ石鹸で擦っても落ちない汚れみたいに、私の中に住み着いて、決して逃そうとはしない。それが「……運命、か」
全てを忘れてしまえたらラクなのかな。あの頃みたいに。何を忘れたのかさえ思い出せないまま、気が付けば忘れてしまった。きっと色んな事。浴槽に浸かり、自分の指を眺める。

「……え」

瞬間、私は気付いてしまった。
私の中に住み着いて、遂に姿を現した、或る小さな変化に。
思わず鏡を覗く。自分の目を見る。それから肌。それから髪の毛。「……嘘でしょ」
心臓がドクンと一回、大きく波打つ。予感。不安。湯気が鏡を曇らせて、私の姿は、すぐに消えた。それはまだ、とても小さな変化で、私以外には気付かないはずだった。
だけれど、いずれ皆、必ず気付いてしまう。

トプン。
音を立てるように、私は息を止め、浴槽の中に潜った。
目を閉じて、膝を丸めて、温かい水中で、あまり何も考えずに、一人で泣いてみた。
誰にも気付かれてはいけない。だけれど必ず気付かれてしまう。私に訪れた小さな変化は、ゆっくりと蝕むように、私を音も無く壊してしまうだろう。だから、今は一人で泣いた。
水中に響いていたのは心音。
唯、私の心音――。

――二週間後、私はパーマをかけた。
お気に入りだった真っ直ぐ伸びた髪に、かなり派手なパーマをかけた。
最初に見たのは、恋人。

「……何それ?」
「何それって、別に、パーマだけど」

私は素っ気無く切り返すと、台所に立って湯を沸かした。

「……何で勝手にパーマかけたんだよ?」
「何でって、髪型変えるのに、わざわざ君に相談するルール、あったっけ?」
「……何だよ、その言い方」

恋人は怒っている、と思った。だけれど出来るだけ、何も考えないようにした。
痛い事も、辛い事も、あまり考えないように。出来るだけ、一切の感情を殺すように。
そうしなければ、これから訪れるであろう、もっと大きな変化に、きっと私は耐えられない。

「それに何で最近、いきなり肌が白くなってるんだよ、それも勝手に何かしたのかよ?」
「別に、何にもしてないよ」
「大体、君は何時も勝手なんだ。勝手に決めて、何処かに行って、勝手に帰ってくるんだろ」
「それは学校とか、バイトとか、路上の弾き語りじゃない。別に遊んで歩いてる訳じゃな……」

止めた。これ以上、何も言いたくなかった。喧嘩なんてしたくも無いし、言い争いもしたくない。何かを失いたくて、こんな真似をしている訳じゃない。只、私は、只――。
「ごめんね、心配かけて。……一緒にスープ飲む?」
私は恋人に、お湯を入れたばかりのインスタント・スープを手渡した。
静かに湯気が立っていた。
二人で並んで唇を付け、それ以上、私も彼も、もう何も言わなかった。

真夜中。
恋人が眠っている隣で、私は目を覚ました。
テーブルの上には、あの分厚い便箋が置かれたままだった。

(……JNL)

全ては変化している。一秒毎に。こうしている間にも、また一秒が進んだ。
そうして私は、0と1の狭間を、何度も、何度も、繰り返す。
何処かで止めなきゃ、私の狂った一秒を。
そろそろ元に戻さなきゃ。

そして私は、便箋に、触れた。
スポンサーサイト




書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

| TOP |