ロシュ編
蜜編
サク編
蓮火編
アリエス編
黒編
しのめん編
奏湖編
ちこ編
志津編
タイキ編
ゆん編
なつめ編
卵茶編
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
■ロシュ
みく子の元カレ。
二枚目、頭脳明晰、スポーツ万能で浮気者。
みく子と別れてエリカと付き合いながらも、みく子に未練がある人。
■蜜
みく子の現彼氏。
みく子のアバンギャルドなパーマを見て怒った。
世界を救いたいと思ってる人。
■サク
みく子の初恋の人。
みく子のことだけを考えながらも、人生に絶望してる。
悪魔と契約なんかしちゃってる人。
■蓮火
みく子の知り合い。
路上ライブで知り合い、アバンギャルドなパーマを見て
「とりあえず、そのパーマだけは直せよ!」と路上で叫ぶ人。
■アリエス
みく子と同じ研究室の学生。
先輩には卵茶もいる。
教授にいろんな意味で愛されてる人。
■黒
みく子のチャット友達。
るどんとビリヤードしたりもする。
みく子と実際に会ったことはない人。
■しのめん
みく子の友達。
どう見ても二児以上の父親としか思えない老けた大学生。
色の識別が出来ない人。
■奏湖
みく子の元後輩。
大通りにある24時間営業のマックス・ドックスの元気な店員さん。
みく子のライブポスターをそこら中に貼りつけた人。
■ちこ
みく子のストリート友達。
みく子と同じようにストリートで歌ってる。
昼は喫茶店、夜はダイニングバーじゅごんで働いている人。
■志津
みく子の友達。
「ふろーら・しょうだ」でバイトしてる。
落研で「るど」と漫才コンビを組んでる人。
■タイキ
蓮火の兄。
タクシードライバーをしている。
弟の蓮火のことをいつも考えてる人。
■ゆん
みく子の友達。
普段はたまにメールでやりとりしてる。
みく子のライブのポスターを作った人。
■なつめ
みく子の高校の同級生。
高校時代はみく子の生演奏を聴いたりしてた。
現在は立派に社会人をしている人。
■卵茶
みく子のゼミの先輩。
みく子とはよくメールをする仲。
後輩にはアリエスもいるがどちらからも先輩扱いを受けていない人。
■M線上のアリア CM動画 A巻発売編!
 
 

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

一日目:奏湖編 01話

「うわ、すごい色だな。」

キャンパスで見かけた、綺麗なオレンジ色のサラサラロングストレート。
大学ってあんな髪色でもいいんだなぁ、なんて、つい先日まで高校生の私には衝撃的だった。

大学の入学式も終わり、少しずつ新しい生活に慣れ始めていた頃。
ノートを貸し借りするくらいの友達は出来たが、まだ一人で居ることが多かった。

その日、講義のために教室で教授を待っていた。
定刻になってもなかなか教授は現れない。
まぁ、大学の教授なんて大方そんなものなので、特に気にしていない。
しかし、三十分教授が来なければ休講決定だ。
二十分を過ぎたあたりで教室は騒がしくなり、あちらこちらから「今日休みかなー?」「ラッキー☆」と聞こえてくる。

そわそわする教室の雰囲気に、私も文庫本を読みつつ、落ち着かなくなってくる。
と、トントン、と肩を(恐らく人差し指で)つつかれた。
「ねぇ、今日講義ないのかなぁ?」

・・・誰?
ゆっくりと振り返る。

しばらく返事が出来なかった。
そう、入学式の日に見かけた、あのオレンジ色の髪の人だった。


「・・・・・・あ、あぁ、そうですね、多分。」
あんまりジロジロ見たら失礼だな。私。

「んん???、どうしよっかなぁ。まだ次の次の時間もあるから帰れないし。
ってか先生、前の講義の時に言いなさいよね?!」

なんとなく話しやすい人だな?と思っているうちに休講が決定した。

「ね、時間あるならお茶でもしない?」
お、女の人にナンパされた(笑)
まぁそれは冗談にしても、私もこの後の講義までは間が開くので、ご一緒することにした。

大学近くのカフェで席に着き、私はショートケーキのセットを注文した。
オレンジ色の彼女は「紅茶だけでいいや」と言った。

話をしていくうちにわかったのは、彼女の名前が“みく子”だということ。
ひとつ上の学年で、学科は違うということ。
そして、彼女は時たま路上で歌を歌っている、ということ。
「ぜひ聴きに来てね!大サービスしちゃうから」と、笑い混じりにそう言ってくれた。
あぁ、きっとこんなふうに微笑まれたら男の人はコロッといっちゃうんじゃないかなぁ、って感じの、小悪魔的な微笑みだった。

窓際に座った私たちに、午後の陽が差し込んでくる。
彼女のオレンジの髪がキレイに透けて輝いていた。

きっとこの人は、この髪の色のような歌声をしてるんだろうな。
ふとそう思った。

どこで歌っているのか場所を聞くと、最近始めたバイト先のすぐ近くだった。
「聴きに行きますよ、差し入れ持って。私も大サービスしますから。」

私の次の講義のため、みく子さんとは一時間くらいで別れた。
「じゃあね、奏湖。路上で待ってる(笑)」
「はい。楽しみにしてますよ。」

明日のバイト上がったら、早速差し入れを持って彼女の歌を聴きに行こう。
スポンサーサイト

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

一日目:奏湖編 02話

今日は二十二時あがりだ。

バイトとはいえ仕事中なのに、時計が気になって仕方ない。いつもとは違う理由で。


昨日知り合ったみく子さんの歌を、聴きに行く約束をしているのだ。
今日一日、ずっとそのことを考えて過ごしていた。
高校の時から路上で歌っているってことは、常連のファンなどいるのだろうか。

今は夕食時のピークを過ぎたので混んではいない。
時計が二十二時を指すかどうかというところで、退勤して急いで私服に着替える。
「なぁに?デートでもあるのぉ?」
バイト先の先輩からそう冷やかされつつ、急いで飲み屋通りへ向かう。
そういえば今日、バイト先の数人で飲み会があるらしい。
まぁまた今度顔を出せば問題ないだろう。

昨日教えられた場所に着くと、ギターの音と女の人の歌声。そして人だかり。


遠巻きに確認すると、やはりみく子さんだった。
寂れた飲み屋通りで、みく子さんの歌声は際立っていた。




やっぱり、思ったとおりの、思った以上の歌声だなぁ。



みく子さんを取り囲んでいる人達はきっと、この声に、この歌に逢いたくて此処に来るのだろう。
曲が終わって、周囲の人達とみく子さんが話している。
私はすっかり聴き惚れて、ぼうっとその光景を見ていた。

すると、みく子さんと急に目が合い「あ???!!ホントに来てくれたんだ!」と
大声で言ったもんだから、そこにいる全員が一斉に私を見る。

きゃぁあ?!恥ずかしくて死にそう(汗)
「・・・・・・ぁ、はぃ・・・・・・。」

みく子さんはお構いなしに「こっちおいで?!」と、手を招いている。
私の前に、みく子さんとの道が出来た。
しょうがないので前に進み出る。
「昨日ねぇ、大学でナンパしたの、この子。」
と笑って周りの人達に私を紹介した。
「もぅ?みく子っぽいなぁ(笑)」「へぇ?じゃあ同じ大学だわぁ」とか、色んな声が漏れる。
「んじゃあそろそろ曲いくよ?。もうちょっと聴いてくれるかなぁ??」
みく子さんが言った。


その日は雑談もあわせて一時間くらい。
たっぷりの期待は充分満たされた。
ギターをケースにしまいながら「今日はありがとね。来てくれて嬉しかったよ。」とみく子さんが言った。
「いやいや、こちらこそ。きれいな声で、歌も上手くて、感動しちゃった。」
えへへ、とみく子さんが笑った。
「時間とかもあんまり決めずにやってるからさ、暇ならまたおいでよ。」




それから私は、定期的にこの路地に足を運んでいる。
みく子さんの歌を聴きに来ている人たちとも顔見知りになり、大学内で声をかけられたりするようになった。
みく子さんのおかげで私の交友関係も広がっていて、なんだか面白い。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

一日目:奏湖編 03話

「お疲れ様でした?♪」
バイトを二十二時に終え、私服に着替える。

「ん?、じゃあいつもので!」先輩に向かって元気にオーダーする私。
はぁーっと小さく(私には大きく聞こえたけど)ため息をついて答える先輩。
「はいはい。フィッシュ・バーガーとバニラ・シェイクのコンボね。
まったく、飽きないねぇアンタも。」

んー、食べるのは私じゃないんだけどね。「コレがいい!!」って譲らないんだもん、みく子さん。

作りたてのフィッシュ・バーガーとバニラ・シェイクを持って、私はいつもの路地へ向かう。
まぁしょっちゅうってワケにはいかないんだけど、夜番になる時は大体差し入れ付きでみく子さんの歌を聞きに行く。


やっぱりイイ声してるなぁ。それにキレイだし。


今日はまだ始めたばかりらしく、人もそんなに集まってはいなかった。
「ハイ、どーぞ!」と、紙袋を渡すと、瞳をキラキラさせて「ありがとぉうう!」となんとも嬉しそうな答えが返ってきた。
「じゃあまぁ、休憩ってことで。(笑)」と言って、みく子さんはすばやくフィッシュ・バーガーを取り出す。
みく子さんが食べている間、(でもお喋りは参加してるんだけど)声をかけられた。
「ねぇ、今度ここに集まってる人たちで飲み会するんだけど、来ない?」
あ、確かこの人、みく子さんの友達で、同じ大学の志津さん。

「行ってもいいんですか?」恐る恐る訊くと「駄目だったら誘わないから(苦笑)」と突っ込まれた。
「そっか(笑)じゃあ行かせてもらいます」
そこで連絡先を交換して「詳しいこと決まったらまた連絡する」と言って、志津さんは他の人と話し出した。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

二日目:奏湖編 04話

私とみく子さんが一緒の講義は、実は一コマしかない。
そりゃあ学年も学科も違うんだから、しょうがないんだけどさ。
後から知ったことだが、志津さんもこの講義をとっているらしい。

私とみく子さんが出逢ったあの日は、志津さんはお休みだったみたい。
落研の先輩にでも捕まっていたんだろう。

学食でカツカレーを食べていると、志津さんからメールが入った。
「今日三時限目出る??例の話したいんやけど」

私はメールを返す。
「はい、出ますよ?。じゃあちょっと早めに行きますね」

十分ほど早めに着くと、志津さんがいちごポッキーを食べつつみく子さんと話していた。
「あー、こっちこっち!」と手招きしている。
二人の後ろの席に着くと振り返って志津さんが、いちごポッキーを差し出しながら
「えっとねぇ、来週の金曜日、七時半に『呑処 お松』前に集合ね。
予定、大丈夫そう?」と言ってきた。
来週の金曜日はバイトもないので大丈夫です、と伝えると、志津さんは手帳に(カナちゃん ○)と書き込んだ。

志津さんは「なんでお酒飲めない私が幹事やらにゃならんのだぁ?!」と吼えている。
みく子さんは「飲み会、楽しみだなぁ?。お志津、幹事ありがとね☆」と、お得意の小悪魔スマイルで志津さんの顔を覗き込んだ。
志津さんは、うっ、と息を呑んで、まぁ、いいけど、と小さく答えている。

話しているうちに教授が来てしまったので、そこでおしゃべりは中断した。


講義が終わると、志津さんとみく子さんはバイトへ行ってしまった。
お花屋さんのバイトかぁ・・・可愛くていいなぁ。
二人がたまに話しているのを聞くけど、店長さんもいい人そうだし。
今度寄ってみようかな。



飲み会の日―――――


七時半ごろには『呑処 お松』の前に見慣れた顔が集まっていた。
「はーい、じゃあ中に入るよ?!!」
人数が多いので幹事も大変そうだなぁ。

私は人の流れに乗って真ん中より奥側に座ることになった。
近くには知り合いが居なかったので、人の話を聞いているうちに結構飲んでしまった。
目の前には日本酒(冷)と白ワイン、カシスオレンジのチャンポンセット。
ふわふわしてなんだか楽しい。

隣の人が「ごめん、モスコミュール頼んでー」と空いたグラスを持ち上げながら出入り口付近の人に頼んでいる。
それに続いて「あー俺、このピンクのやつ頼んでー」 「ピンクのやつってなにー?じゃぁ私こっちの黄色とオレンジのやつー」と注文が飛び交う。
みんなも結構酔っているわ。

頼まれた男の人が「え?えっ?」と焦っている。どうしたんだろう?

「おい、早く頼めよー!」
「そうだ、頼め頼めー!あははー。」

ちょ、酔っているとはいえどうなのよその態度はっ!

「おい、注文ぐらいさっさとしろよ!」

「え、えっと…」

「ピンクのやつだって!」

「ぁ・・・ぇ・・・?」

あの人困っちゃってるじゃん。そんな捲くし立てないで自分で頼めばいいのに。

「もしかして、ピンクが解らねーの?」

「………」

瞬間、騒がしかった場が静まる。
え、そうなの?だからそんなに焦ってたの?

「おいおい!あいつ色がわから…」

「ピーチフィズですねー」

ピッという電子音と共に女の店員さんが現れ、次々とオーダーを入力して戻って行った。

かぁっこいー!!
なんてかっこいいんだ、あの店員さん!女の子だけど惚れそうだ。

さっき騒いでいた男は、店員さんの登場に面食らっていたが、すぐに調子を取り戻して隣と話している。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

二日目:奏湖編 05話

飲み会も終盤に差し掛かった頃、志津さんがウーロン茶のグラスを持って隣に来てくれた。
「カナちゃ?ん、どぅよ?」
・・・答えようが無いですよ、その質問(笑)
そういえば、と、私はさっきの人誰ですか?と志津さんに訊いてみた。
「ん?しのめんくん?」とグラスを口に付けつつ教えてくれた。

「同じ大学で、ウチらと同じ学年やね。」

「ほぇー。じゃあ大学で見かけているかもしれませんね。」

「そうだねー。」

しのめんさんが本当に色が分からないのか、とは訊けなかった。
志津さんがそれを知っているのか分からなかったし、第一失礼だ。

それから「花屋のバイト、羨ましいです」とか「いやいや、意外と体力勝負よ?てんちょ?が急に注文受けてきたりするし」とか、別の話をしていた。

向かいに座ってるコが「ねぇねぇ?、クレヨンに生まれ変わったら何色になりたい?」と訊いてきた。
なんて唐突な(笑)

「俺は赤かなー」

「えー?ピンクじゃない?エロいからー」

「私はやっぱり純潔な白よね♪」

「金!俺金がいい!」

色んな所から、まさしく色々な意見が飛び交う。

「ねー、みく子はやっぱりオレンジでしょ?」

「私は、もっと白に…ううんなんでもない」

みく子さんは少しだけ寂しそうな顔をしてから 、いつものように微笑んでいた。

少し不思議に思ったけど、次の出来事でかき消されてしまった。

「お前はー?」

「…っえ?」

さっきピーチフィズを頼んだ人が、しのめんさんに訊いた。
しのめんさんは何かを考えているふうで、すぐに答えなかった。

「やっぱりお前、色が解らないんだろー!?」

「……」

なっ!なんてデリカシーのないヤツなんだお前はっ!!

「そうだよ」

「うっそだろー?じゃぁさ、俺のTシャツ何色??」

「…」

「適当に知ってる色言えって!」

「……緑?」

「はー?お前の目にはこの黄色が緑に見える訳?」

私は我慢できなくなって、あの男を張っ倒してやろうと立ち上がる直前、



「ちょっとあなたね!」


・・・・・・あ、さっきのかっこいい店員さん。

しのめんさんとあの男の間に割り込んできた。

「色が解らない事がそんなに可笑しい?」

「は?」

「私達が普通に感じている色だって、本当に全員が同じように見えているとは限らないのよ」

「何言っちゃってる訳この子?」

「じゃぁ、あなたが着ているそのシャツを見た全員が、あなたが思っている黄色と同じ色だっていう確証はある?」

彼女は、その場にいる私たちがのめり込んでしまうほど、巧みに演説した。

彼女の話を聞いているうち、私は全く反省した。
訊かずとも、口に出さずとも、私はしのめんさんを傷つけていたのかもしれない。
しのめんさんが、本当に色が分からないのか、知りたがっていたんだ。心の中では。


その後、お店の偉い人が止めに来るまで、彼女は話し続けた。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

二日目:奏湖編 06話

一連の騒動は、飲み代を半額にしてもらうことで決着がついた。
みく子さんはバイトや研究で疲れていたんだろう。途中から眠ってしまった。
あの酔っ払った男は、いつの間にかそそくさと居なくなっていた。

店を出て、たむろしていると、さっきの店員さんが少し離れたところで、私服で携帯を見ていた。

自然と足が彼女へ向かって歩き出していた。

「さっきはすみませんでした。」
自分のことではないのに、謝罪の言葉が出た。

「?何であなたが謝るの?あなたは悪くないでしょ?」
その通りではあるんだけど。

「いや、うん、そうなんだけどね。。。」
言葉が続かない。

しばらくの沈黙の後、彼女が
「・・・あたしこそごめんね。ちょっと気が立っていたの。
でも言い方が悪かったわ。
私、エリカっていうの。あなたは?」

「ううん、いいの。奏湖っていいます。」

「またお店、来てよね。あいつ抜きで(笑)」

二人で笑った。


それ以来、私の所属しているサークルの飲み会で、幹事をやるときは『呑処 お松』をつかうようにしている。
エリカとは少しずつ仲良くなっていった。
同じ大学の先輩(みく子さんたちと同い年)だと、後々知ることになるが、エリカが「敬語は絶対に使わないでよね!」というのでタメ語で話している。
友達なんだから、とエリカは言うのだ。
彼女のそういうところが好きだなぁと思う。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

二日目:奏湖編 07話

季節は秋。
鰯雲の秋空が高く感じる。
今日は、朝からバイトをして夕方、いつもの路地へ向かっている。
みく子さんはいるだろうか。


路地に入ったところで、なにやらしゃがんでいる女の人を見つけた。
でも髪の色がみく子さんじゃない。誰だろう?

その女の人は、ケースからギターを取り出しているようだった。
この人も歌を唄う人なのだろうか。

「っんしょ!」と、元気よくストラップを肩にかけて、女の人は振り返った。
「あ」

意外と近くにいたのでばっちり目が合ってしまった。
このまま通り過ぎるのはいかがなものか。

「あれぇ、初めての子だねぇ。
アタシこれから歌、歌うんだけど、聴いてかない?」

そんな人懐っこい笑顔で言われちゃあ、なおのこと素通りできない(笑)
「あ、ハイ、いいですよ。」
芸の無い返事をして、彼女に近づいた。




それからゆっくりとアルペジオでギターを弾き始める。
キレイな旋律。

歌声は、今日みたいな秋の夕暮れにぴったりのアルト。
ちょっとだけ、淋しい。
でも素敵。



曲が終わって、彼女が話しかけてきた。
「ふぅ。どぉだった?気に入ってくれたかなぁ?」

「はい!綺麗な声なんですねぇ。曲も良かったです。」

「そう?嬉しいなぁ。ありがと♪」



「あれ?二人とも知り合いだっけ?」
私の背後から、みく子さんがギターケースを持って現れた。

「今知り合ったの!ね??」と彼女が私を見る。
勢いで「はい」と答えてしまった。

みく子さんは大きな目を更に大きくして私と彼女の顔を交互に見ていた。
その様子が面白くて、私たちは笑ってしまった。

「で、名前なんていうの?わたしはちこ。」と彼女が自己紹介をした。
「あ、私は奏湖っていいます。みく子さんの大学の後輩です。」

それから少し、三人で話した。
みく子さんとちこさんは、この路地で知り合ったらしい。
ちこさんはたまに、歌うだけでなくみく子さんの歌を聴きに、ココへ来ることもあるそうだ。

「じゃあ、会っていたかもしれませんね」と私が言うと、ちこさんは
「そうだねぇ。この前の飲み会は行けなかったからなぁ、私。」と言った。
そっか。そういえば見なかったような気もする。


「あぁッ!」

急に思い出したから、大きい声出しちゃった。

「・・・どっ、どうしたのっ!?」とみく子さんとちこさん。

「ぁ、いや、写真出来ているので、取りに行かなきゃと思って・・・。それをすっかり忘れていたんです。」

我ながら恥ずかしい。大声出すほどのことか。


「そっか、奏湖ちゃん写真部だっけ?」と、みく子さん。
ちこさんが小さい声で「へぇ?そうなんだ。」と言った。
「そうなんです?。」ちょっとだけ照れくさい。

写真部といっても、自分で現像したり、高い一眼レフを使うような人はごく一部だ。
学園祭で展示はするけど、他の活動は主に飲み会と言ってもいいだろう。

「たまに私も撮ってもらってるんだ?」
みく子さんがちこさんに言う。
「みく子さんは画になるから」と私は言った。

普段、人物は撮らない。空や花など、風景ばかりを撮っている。
撮られるのを嫌がる人が多いから。
でもみく子さんは「全然いいよ?」と撮らせてくれるので、お言葉に甘えているのだ。
出来た写真はもちろん本人に渡しているが、いくつか承諾を得て学園祭に出させてもらうことになっている。

時計を見ると十八時四十八分。
写真屋さんは十九時に閉店だから、ダッシュすればまだ間に合う。
私は二人に別れを告げて、駅前の小さな写真屋さんへと向かった。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

三日目:奏湖編 08話

大学ニ年の夏休み前に、私は大学を辞めた。

理由は、元々勉強熱心な方でもなかったし、大学に行く意味が分からなくなってしまったから。


だからもう、一年半くらいフリーターをしている。
そう、あのマックス・ドックスで働きながら。




今朝、テレビで台風十八号が近づいているって言っていた。
雨の写真が撮りたくて、防水カメラを準備する。

窓から外を見る。
うわ・・・凄い雨。
傘を差して外へ出る。大通りへ向かってみよう。



街は鉛色だ。
強い雨がアスファルトに跳ねている。



ファインダーを覗くと、雨の音が遠ざかっていく。



「あぁ!!奏湖ちゃんっ!!」
ドキーッ!!!

急に名前を呼ばれ、身を硬くする。
そーっと振り向くと、あぁ?!!
「ちこさんかぁ? もぅびっくりしたじゃないですかっ!」

「ごーめん? 奏湖ちゃん久しぶりだねぇ ほれ、その敬語やーめれって?」

「敬語はクセみたいなモンですから(笑)」

「(笑)ところでこの土砂降りの中、何をしてるの?」

「雨の写真を撮りにね、思いついたらじっとしていられなくなっちゃって」

「なるほど。奏湖ちゃんの撮る写真は素敵だもんなぁ。」

えへへ、と照れ笑いになってしまう。

「ぁ、奏湖ちゃんの連絡先 聞いておいてもいいかなぁ?」

私は「いいですよ?、私も聞こうと思ってたんです(笑)」と言い、メモ帳に携帯電話の番号とメールアドレスを書いて渡した。

「ありがと。 台風の中気を付けてね。」とちこさんは去っていった。


ちこさんの背中を見送りながら、シャッターを切る。



「あ!夕方からバイトだった!!」
雨の中、コケそうになりながらダッシュでマックスへ向かった。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

四日目:奏湖編 09話

昨日は夜番だったので、0時まで働いていた。
深夜はドライブスルーのみの営業なので、そんなに人手は要らないのだ。
今日昼番だしね。


制服に着替え、手を肘まで洗う。
朝礼をしてお店に出ると
「かーなーちゃん☆」一番のお客様はなんと、みく子さんだった。
「みっ、みく子さん!ど?したんですかその頭はっ!?」

みく子さんと会うのは、久しぶりだった。
多分・・・八月以来?

なんで私がこんなに驚いているのか。
みく子さんは元々オレンジ色のさらさらロングだった。
でも、久しぶりに会う彼女は、アバンギャルドすぎるパーマをかけていたのだ。
しかもよく見ると、肌が病的なほど、目の奥が痛くなるほど真っ白になっている。


「ん?、まぁ色々あったってコトだわね。
ところで、今度路上でライブするんだ。ポスター作ったから、ココ貼らせてもらえないかな?」


なんだか色々あったらしい。
聞きたいけど多分長い話になるだろうし、説明する気も無いだろう。
思い詰めた様子ではないし、心配はしなくてもいいのかな。

「わかりました。店長に話つけておきます。」
ポスターの束を預かる。え?こんなに?(汗)

「あ、あとバニラ・シェイクね!」
「かしこまりましたぁ」

シェイクを準備して、急いでポスターの束をロッカーに仕舞いに行く。
戻ってきてシャイクに蓋をする。

「百円丁度、お預かり致します。」
「じゃあよろしくね」
いつもの小悪魔スマイルだった。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

四日目:奏湖編 10話

しばらくすると、男の人がお店に入ってきた。
あれ?この人どこかで・・・・・・?

そうだ、飲み会!
もうニ年位前の、飲み会で一緒だった人だ。
名前は・・・そうだ、しのめんさん!!!

「いらっしゃいませ、こちらでお召し上がりですか?」
言おうか言うまいか考える。

「フィッシュ・バーガーのセットで。」
あああ、気づいてないだろうな。てか一方的に私が知っているだけだわ。

「お飲み物は何にいたしましょう?」

「ジンジャーエールで」

うーん、よしっ、黙っておこう。(笑)

注文のものとおつりを渡す。

しのめんさんはトレイを持って、みく子さんの座っている席に向かう。
大きな声で「おはよーごじゃーまーす!」という声が聞こえた。

少し経つと、しのめんさんはお財布を持ってこちらに来た。
「フィッシュ・バーガー単品で三つ。」との注文。
え?フィッシュ・バーガー四つも食べるの?
あ、もしかしてみく子さんに・・・?


「少々お時間かかりますので、席にお持ちいたしますねー。」
会計を済ませ、番号札を渡す。

「お待たせしましたー。」とスマイルつきでしのめんさんの前にフィッシュ・バーガー三つを届けた。
去り際に「みく子さん、良かったね。」と小さく言った。
やはり、しのめんさんはフィッシュ・バーガー達をみく子さん側に置いた。

それからお店がちょっと混みだして、二人の様子を窺うことは出来なかった。


しばらくするとしのめんさんが「じゃぁ!」とみく子さんに言って席を立った。
彼はトレイを片付けると私に「ごちそうさまでした。」と言いながら店を出ていった。
私は閉まっていく自動ドアに向かって
「ありがとうございましたー!」と元気良く答えた。

ピークタイムをはずしたお昼休み。
店長にみく子さんのポスターを貼って良いか確認した。

少し考えた後「ホントはだめだぞ」なんて言いつつも、ニ日間くらいなら、と許してくれた。

急いでお昼ごはんを口に詰め込み、ポスターを駐車場の壁や、店内に貼った。
自分で言うのもなんだけど、がんばった、アタシ。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

| TOP | 次のページ≫


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。