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書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
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三日目:蜜編 現在 24話

ジェームス・ノートン。
ミドル・ネームは「ニコラ」。James Nikola Norton。
米国人。十二月生まれ。AB型。科学者。エリカの爺さん。変わり者。
他人と話す時に、相手の目を見ない。その代わり、首から下を舐めるように見る。

「無我が自立し、自律する時代が来る」
ある授賞式の舞台上で、爺さんが言った台詞が、これ。
人工知能とセキュリティシステムの研究で世界中から賞賛を浴びた。
だが、その著書には、人体に関わるものが多い。

「一般動物に見られる遺伝的病症」
「錐体細胞の波長認識メカニズム」
「遺伝情報の欠損と振動が人体に与える影響」
「赤オプシン遺伝子」
「緑オプシン遺伝子」
「錐体細胞」

背表紙を見ただけで読む気が失せる。
僕は爺さんが嫌いだった。表情も、仕草も、演技のような喋り方も嫌いだった。
それ以上に、僕の嗅覚に訴える、形の見えぬ、偽善者のような匂いが大嫌いだった。
初めて会ったのは小学校二年生の日。研究室。……研究室? 解らない。だが確かそうだ。
そこにエリカがいた。半年間。爺さんの研究室で、僕とエリカは出逢った。

小学二年生の日に、エリカは初めて日本に来た。その年の半年間を日本で過ごし、すぐにアメリカに帰り、その一年後に改めて日本に住んだ。僕の住む団地の近所に、厭味なくらい巨大な豪邸を立て、移住して来た。爺さんは既に有名人で、ほとんど家にはいなかった。日本にいなかったと言った方が正しい。爺さんの研究室はアメリカにあって、それがどうしてわざわざ日本に立派な豪邸を建てたのかといえば、エリカの両親の希望に過ぎない。それも正確に言えば、エリカの母親、爺さんの娘の希望に過ぎない。爺さんはアメリカに住んでいた。

爺さんは日本に個人の研究室を持っていて、その為に年に数回は日本と、娘夫婦が暮らす立派な豪邸にやって来た。研究室の名称は「ジェームス・ノートン・研究所」。日本に滞在する時も、ほとんど家には寄り付かず、それでもエリカの顔を見る為に三日に一回は顔を出す。その時間が僕は嫌いだった。まるで僕を、研究対象でも観察するような目で見る。

最近は近所の大学で、非常勤講師のような真似事をしている。
爺さんがアメリカに帰る事も少なくなった。
僕が爺さんに会わなければならない機会も少なくなった。
それは僕にとって安泰で、快適で、平穏無事な日々だったのだ。
なのに今、僕は爺さんに会おうとしている。

考えている内に眠ってしまった。
空腹のままで。


【M線上のアリア】 現在/24


「起きろ」
耳元から低音が聞こえる。薄く目を開ける。日光。朝。
視線を動かすと、彫りの深い男の顔が見える。ヴィンセント。「……帰ってなかったのかよ」
「会いに行くんだろ」
「……誰に?」
「James Nikola Norton」
……寝てる間に勝手に食ったんじゃないだろうな。否、頭痛は止んでいる。食ってはいない。切開しやがったか。別にどうでもいい。爺さんの記憶なら全て食ってくれた方が気がラクだ。僕はベッドから体を起こすと、風呂場に向かう。会いに行かなければならない。会いたくはないが。会わなければならないのだとしたら、今日。出来れば午前中に。エリカと一緒にパーティーに出かけてしまう前に。明日、みく子が会いに行く前に。壁時計を見る。午前十時。

(明日はお爺ちゃん、昼間は誰とも会わずに大学の研究室にこもってるはずだし)

シャワーの蛇口を捻りながら、昨夜のエリカの台詞を思い出す。
大学に潜入するか。それしか無いし、それ以外に方法が無い。学生なんて同年齢だし、別に潜入者とは思うまい。爺さんの研究室は何処にある? 知らない。誰かに聞けば解るだろう。

(そういう時に研究室に勝手に入ったら、エリカでさえ怒られるんだから)

怒られるも何も、会いたくないのにわざわざ会いに行く時点で、今更怒られようが関係ない。むしろ怒って欲しい。舐めるような目で見られるよりはマシだ。此方としても問い質したい事が山ほどあるから、感情的になってくれた方が動きやすい。爺さんは何を生み出した? 何故、みく子の口座に毎月四四万円を支払わなければならなかった? 何故、今になって突然、みく子が会いたがっている? それを爺さんは知っているのか? 一体、バイオロイドって何だ?

(それに普通の人には入れないし)

鍵。もしくは何らかの通行許可証が必要という意味か。もしくは……
「人工知能とセキュリティシステムの研究で世界中から賞賛を浴びたんだったな、爺さん」
排水溝に向かって流動的に、熱湯が下降している。
僕は独り言を呟くと、口元だけで笑う。
「爺さんが作ったセキュリティシステムと、悪魔との契約、どっちが強いかな?」
鍵を開ける為に食われる対価は、如何ほどか。10,884,591。その金額ほどじゃないだろう。

「爺さん、あまりみく子を弄ぶなよ」

右手で蛇口を閉めると、勢い余った水滴が零れた。
それは僕の体に触れる事無く、真っ直ぐに、排水溝に向かって流れていった。

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