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三日目:蜜編 現在 32話

雷が鳴り響く異様な雰囲気の中で「入部資格獲得・大喜利対戦」は始まった。
対面に座る、るどん嬢がサラサラとスケッチブックにサインペンを走らせる。サイコ師匠は顎に手を当てながら我々の回答を待ち望んでいるようだが、どうしてこんな状況になったのかを考えてはいけない。間違えても乗り気では無いが、この部室から退席する最善の策は、この大喜利に答えて適当にお茶を濁しておく事だろう。歪んだ笑みで「あ、やっぱり僕には無理でした」とでも言っていそいそと退席すれば良い。それだけの事だ。簡単なミッションだ。

「はい」と手を上げ、るどん嬢がサインペンを机上に置く。なるほど、そうやって答えたら良いのか。サイコ師匠が予定調和に指を指し「はい、るどん」と告げる。続けてお題を反復詠唱。
「竜宮城で乙姫様が"嘘でしょ!?"を連発。何があった?」
るどん嬢は真剣な面持ちで裏返しのスケッチブックを机上に立てると、その表面を見せた。

『浦島がイケメンだった』

「ほぅ……」サイコ師匠が声を漏らす。何を意味しているんだ、その声は。るどん嬢はスケッチブックのページを一枚めくりながら、勝ち誇った表情で僕を眺める。何なんだ、その表情は。
「はい、どんどん出してね、どんどんね」サイコ師匠が手を叩く。本当に何だ、この雰囲気。

「浦島がイケメンだったら、そら乙姫もテンション上がるわな」
「乙姫だってブサイクよりイケメンが来るのを待ってると思いますからね」
「さて、三平の答はまだかなぁ?」
「師匠、やっぱり素人には無理なんじゃないですかぁ?」

わざとらしく鼻にかけた声で、るどん嬢が言う。露骨な挑発。サイコ師匠は何も言わずに、先程と同じ姿勢で僕の回答を待っている。畜生、何なんだよ、お前ら。いいよ、ボケの解説とかしなくても。大体、何だよ素人って、お前らも素人じゃないのか。何か段々、腹が立ってきた。僕はスケッチブックに颯爽とサインペンを走らせる。ええい、ままよ! どうにでもなれ!

「……はい」
「おお! 来たね! はい、三平!」
「まぁ、素人にどれだけ出来るのか、見せてもらいますよ」

僕は裏側にしたスケッチブックをゆっくりと机上に立てると、サイコ師匠のローズ色の唇から豊潤に零れるであろう、お題の反復詠唱を待ったのだった。散らば諸共、見よ、僕の生き様。


【M線上のアリア】 現在/32


「竜宮城で乙姫様が"嘘でしょ!?"を連発。何があった?」

サイコ師匠の詠唱に合わせ、抜群のタイミングでスケッチブックを素早く回転させる。

『今月の衣装がレオタードに決定した』

「おぉ……」サイコ師匠が腕を組んだまま声を漏らす。だから何だ、その声は。るどん嬢が小さく舌打ちする音が聞こえた。何で舌打ちなんだ。るどん嬢はサインペンを持ち直すと、素早く何かを書き始めた。サイコ師匠が静かに口を開く。

「……ふむ、やるね三平。
 竜宮城をいわゆる娯楽施設に見立てると、乙姫は売れっ子キャバ嬢やんな。
 竜宮城としても毎月、客向けに色んな目新しい企画を用意しておかなアカン訳やな。
 そこで会議に出てきたのが"乙姫の衣装をレオタードにする"っちゅう案やったんやろうな。
 ところが乙姫としては……」

……ちょっと! ボケの解説するのヤメテ!
僕は下を向いたまま己のボケを恥じた。だが今更、恥じても仕方が無い。気が付けば既にガチンコ勝負が始まっている。対面のるどん嬢が不敵な笑みを浮かべ、僕を眺めている。負ける訳にはいかない。別に負けても良かったのに、何か負ける訳にはいかないような気分だ。
「はい!」るどん嬢が垂直かつ豪快に手を挙げる。

「はい、るどん! 竜宮城で乙姫様が"嘘でしょ!?"を連発。何があった?」


『浦島がブサイクだった』


……前のボケにカブせて来やがった!
お前さっき「乙姫だってブサイクよりイケメンが来るのを待ってる」とか言ってたじゃねぇか!完全に乙姫、情緒不安定じゃねぇか! そんなもん完全に男性不信のキャバ嬢じゃねぇか!
そりゃ乙姫だってブサイクが来たら「嘘でしょ? 嘘でしょ?」とか連発するかもしれないよ!でも乙姫だってプロだろ!? プロならブサイクでも笑顔で出迎えろよ! 頑張れよ乙姫!
畜生、そんなの僕達が憧れた乙姫じゃないよ! 僕が本当の乙姫を見せてやるよ!

「三平は、まだ?」
「……大丈夫です、出来ました、はい!」
「じゃあ三平、竜宮城で乙姫様が"嘘でしょ!?"を連発。何があった?」


『後からご本人登場』


「……誰だよ!」「じゃあお前、誰だよ!」
サイコ師匠とるどん嬢が、声を挙げながら同時に立ち上がる。
「あの、モノマネ……」
「いやそれは解るよ! ほんならお前、誰やねん!」
「本人の横でちょっと遠慮気味に歌ってるお前、誰やねん!」
「てゆーか誰のモノマネしとんねん!」

……落研のツッコミすごいな。いちいち濃いな。
るどん嬢が慌しくスケッチブックをめくる。「はいはいはい! 師匠!」
「はい、るどん」サイコ師匠が指名してから、やはり慌しくサインペンで書き殴る。

「竜宮城で乙姫様が"嘘でしょ!?"を連発。何があった?」


『戸籍を調べたら、実は"Z姫"だった』


「……ん?」
サイコ師匠が首を傾げる。「どういう事?」
「いやだから戸籍を調べたら"乙姫"じゃなくて"Z姫"だったんですよ!」
「ああ、ゼット」
「そう、ゼット!」
「うわ、すべった」僕が口を挟んだ瞬間。
「……すべってへんわぁぁぁぁ!!!! この三平がぁぁぁぁ!!!!」

るどん嬢が机をひっくり返す。派手な音を立てながら机が倒れ、サインペンが散乱する。
「違うわ、アンタ良いボケやったのに字汚いから、アタシら読めへんかったんやろ!」
「そうですよ、あんなに急いで書くから、何て書いてあるのか読めなかったんですよ」
「うん、ネタは良かった、悪いのはアンタの字や、ボケ急ぐから悪いんや」

るどん嬢は仁王のように勇ましく立ち竦みながら、呼吸を整え、やがて元の表情に戻ると「……ネタは面白かったですか?」と小声で呟いた。
「面白いですよ、ちゃんと字が読めれば」
「うん、悪くないわな」
「良かった……」るどん嬢は胸に手を当て、満足そうな表情を浮かべた。
倒れた机を戻しながら、思い出したように僕を睨む。

「でも三平、お前は許さんで! ウチ絶対スベってへんからな!」

えぇぇぇぇぇ……。
というか、この人こんなに関西弁だったっけ。さっきまで標準語だったのに。
感情が高ぶると関西弁が出てくる体質なのだろうか。そんな漫画を昔、何処かで読んだ気がする。だが思い出せない。何という漫画だっただろうか。思い出せない。別に良いけれど。

「……まぁ、入部試験はここまでかな」

サイコ師匠は腕を組んだまま、溜息混じりに終了を告げた。
るどん嬢が四つん這いになり、床に転がったサインペンを追いかけている。
台の隙間に入り込んだサインペンを、必死に腕を伸ばして取ろうとしているが届かないらしく、何度かコチラを見るが、あえて助けない。「三平、何か棒持ってきてや!」聞こえない。

「ちょっと! おい! 三平! 聞こえてんねやろ!?
 取れや棒! お前聞こえてんのに無視すんなや! その棒取ってや!
 ちょっと! なぁ! 三平! 三平て! 三平さん! その棒取ってくれへんかなぁ?」

聞こえない。

「……三平さ?ん? ごめんやけど、その棒取ってくれませんかねぇ??」

何の為に置かれているのか解らない、完全に用途を失った棒を手に取る。「はい」
「……三平、お前、後で絶対覚えとけよ」
「あ、棒、要らなかったです?」
「いやん! ごめんて!」

棒を渡すと、僕は再び席に戻り、続けてサインペンを取り戻したるどん嬢が席に着くと、サイコ師匠は「今から重大発表をしますよ」と言わんばかりに、わざとらしく咳払いをした。別に重大発表など聞きたくはないが、この部室にいる限りは聞かねばなるまい。

「それでは三平の入部試験の結果を発表します……」

窓の外は雨。
再び、遠くで雷が鳴る音が聞こえた。
どうでも良いが、この緊張感、別に必要ないだろと、僕は思った。

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