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書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
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三日目:タイキ編 06話

だらしなく、何故か垂れたように見える目尻。心持ち上目遣い。
一筆書きで書けてしまえそうな山形のその目の形は、僕の高校時代の仲間内で「エロ目」と呼ばれていた。
この日の夕方の僕の目は、常にその形をしていたことだろう。

花を届けてから、送迎の約束時間までを難なくこなした僕は、確認の為に本部へ連絡を取った。
どうやらお迎えだけで今日の仕事は済みそうだ。
送った後は交代の時間。今日の、最後の仕事に取り掛かる。

まずは最初の目的地、帝都ホテルへ。
先に二台の同僚が到着していた。
同じグループらしきお客さんが、列に並んでいる。
グループの先頭には、さもお偉いさんのような方々が並んでいる。
ただ待つのも暇なので、こういう場合はどのお客さんが乗るのか、列の人間関係を見ながら予想をする。これも変な癖の一つだ。

「僕のに乗るのは、えぇと…な、なんだって!?」

其処に立っていたのは、女性二人。
一人は、胸の大きく開いた、マロン色のベロアのロングドレス。
もう一人は、薄紫色をした、肩のないシルクのロングドレス。
正にパーティーに相応しいそのドレスの共通点。
それは、「大きく入ったスリット」であった。

もう一度言おう。ドレスの共通点。
それは、「大きく入ったスリット」であった。

死角になるほうの右手で、僕は小さくガッツポーズをした。
ガッツポーズの後、そのまま手を動かしながら「叶姉妹かよ!」とつっこんでみた。
男心だ。察してくれ。
後は祈るのみ。頼む順番そのまま変わらないで…。

僕の車がその二人の前に止まる。
後部座席のドアを開けながら、小さく「ビンゴ?」と囁いた。

「え?」

女性二人の、囁き声に対する当然の疑問。

「あ、いえ、気になさらないでください。」

僕はバックミラーが気になって仕方ないですがね。
悟られてはいけない。集中するんだ!
「それでは、出発しま?す」と間抜けな言葉を発した後、僕はバックミラーをチラ見した。

「パーティーの出席が急に決まっちゃって。
 運転手さん、今日急に決まったんでしょう?
 私、最近寝不足なのに困っちゃう。ねぇ、まりモさん?」

「私も昨晩は四十枚もホットケーキ焼いて疲れてるのに。
 そういえばあめ湯さん…」

「お二人とも大変ですねぇ」と笑いながら、僕の目は既に「エロ目」であった。
なんだろう。外は台風なのに、ここだけ暖かい。そんな感じだ。
みく子の歌声を聴いた弟も、こんな気分だったのか?いや、違う気がするな。

斉藤さん宅に到着すると、大きな門が開かれていた。
ゆっくりと噴水のある庭を通り過ぎ、その邸宅に相応しい玄関前に停車した。

車を降りる二人に、心底残念そうな声で「ありがとうございました?」と言った。
次の指示を受けて大学駅へ向かう。

「また女の子なら、今日はもの凄い女の子率ですな!」

一人、テンションが空回りする男の姿。
傍から見ると悲しくなってくると思うの。でもいいの。

到着して、辺りを見回す。どうやらここは僕一台らしい。
駐車スペースに車を停め、お客さんを探す事にした。
しかし、雨中の駅前は混雑している。

「斉藤様のパーティーに出席されるほのか様はいらっしゃいますか??」

大声で叫ぶと、一人の女性が傘を差して近付いてきた。
僕の大声で注目を浴びてしまった彼女は恥ずかしそうにこう言った。

「私です。よろしくお願いしますね。」

ニコッと笑った彼女は、黒のワンピースに、黒のボレロ、それにピンクのコサージュを付けていて、トドメにヒールといった出で立ちの素敵な女性だった。
後部座席の扉を開き、運転席に移動する途中、死角になる方の、今度は左手で小さくガッツポーズをした。
第一陣は既に到着している。急がなくては!
だが、アクシデントは起こるべくして起こるのか。
それを起こしたのは、僕だった。

「いや?今日はついてるわ。」

しまった。先程集中力を使いすぎ、心の中が口から漏れた。
弟よ、お前はその力を主にカンニングに使ったが、僕は煩悩にその力を…すまん。ていうか、本当にごめん。

「え?何がですか?」

それは当然の疑問。

「あ、いえいえ、台風だというのに、斉藤様のお陰で仕事が、ね。
 そういえば斉藤様のお宅は豪邸でした。
 あのパーティーだと、集まる方も相当な職種の方ばかりなんですかねぇ。
 失礼ですが、お客様は…」

「私ですか?水彩画家をしております。」

「あ?そうなんですか、画家に大切な事ってあります?」

「画家に限りませんけど、何事にでも感動する気持ち、ですかね。」

必死で誤魔化した。明るい人で助かった。
話し続けるタクシー運転手。パーティー前に気を悪くしなければいいが。

斉藤さん宅に到着。あぁ、無常。
先程と同じ様に玄関前に停車し、後部座席の扉を開く。

「ありがとう。」

彼女はそう言うと、大きな扉に向かって歩き出した。

「いえ、こちらこそ。」

後姿を見送りながら、そう呟いた。
しばらく、そのまま停止。
一体どんなパーティーなんだろうかと、内容が気になって仕方なかった。

パッパー!

同僚のクラクションで我に返る。
斉藤さん宅を後にし、会社に戻りながら溜息をついた。
困った事に目が「エロ目」のままだ。
そのまま今日の仕事は終わりだった。

余韻に浸りながら家に辿り着き、シャワーを浴びながら今日の出来事を思い出す。
酷い雨だったが、今日は女の子や花を送ってばかり。こんな日があってもいいな。
あんな人達が集まるパーティー。
きっと楽しいに違いない。

「あ、そういえば。」

ようやく弟の事を思い出し、シャワーを終えてベッドに倒れ込んだ。
僕の能天気さと全く正反対に、弟は今真剣に悩んでいるかも知れない。
みく子の事を少しは解ったんだろうか。
携帯電話を手に取った瞬間、窓の外が光り、雷音が響いた。

ベッドから降り、カーテンを閉じる。

「答えは見つかったか?」

そう呟いて、携帯電話を机の上に置く。
そうだ、今更僕が何を言っても、きっと終着点は変わらない。

もう一度ベッドに倒れ込もうとした時、携帯電話の着信音が激しく鳴り響いた。
それは、弟からのメールだった。

携帯電話を手に取る。内容を見て、僕は小さく笑った。
僕には意味が解らなかったが、これが弟なりに掴んだ答えだろう。
メールの内容を静かに声に出した。

「みく子は大丈夫。」

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