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書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
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三日目:蜜編 現在 40話

何らかを解決する為に、僕達は穴ばかり探しているのだと思う。
悪魔との契約の穴。記憶の穴。それからセキュリティ・システムの、穴。
穴の中に問題を解決する為の宝物が隠されているとでも信じているかのように、僕達は穴を探しているんだ。その五分間が長いとは思わなかった。先生は重そうな鍵束を駆使しながら、何かを開こうとしていた。それは何か? 解らない。宝物が隠されている宝箱のようなモノだ、と僕は思った。実際はそれほど立派な代物ではない。研究室に潜入しようとしているだけだ。

当然ながら、避難経路にセキュリティ・システムが存在しない訳では無い。だが正面から潜入しようとする行為に比べれば、それは随分と容易になる。普通に考えて「避難しなければならない場面」とは、緊急を要する事態が発生している場面である。その避難時にわざわざ複雑なセキュリティ・システムを解除してから避難しようとは思わない。避難経路を通る人には、必ず相応の理由がある。それは「外に出る」というだけの単純な理由ではあるが、そこに複雑なセキュリティ・システムが存在しては、単純な避難が出来なくなる。

発想を転換しただけの話だ。「外に出る」為の避難経路を「内に入る」為に使おうとしている。問題なのは、爺さんの研究室から始まる避難経路が何処に繋がっているかを知る事で、先生曰く「ニコラの研究室から始まる避難経路の存在は誰も知らない」らしい。避難出口が存在する事さえ知られていないかもしれない。その誰も知らないはずの存在を、先生は知っている。

「出口は何処に繋がっていると思う?」
鍵束の中の細長い一本を差し込みながら、先生が言った。
四角い空から降ってくる雨に濡れながら、僕は小さく首を傾げた。
一般的に考えたら、研究室の外。大学の敷地を出ない範囲で安全な場所。

「ニコラの家だよ。エリカの家と言った方が解りやすいか? 地下を掘っている訳だ。信じられるか、あの距離を掘ったのだよ。だが先程の下水道を見たなら信じられるだろう。奇妙だろう、この辺の土地の地下は? 元々は志野山が買った土地だ。……それも思い出せないか? まぁ良い。とにかく高々、研究室の避難経路が自宅に繋がっているというのは、いくらニコラが世界的な権威と思われているのだとしても奇妙だ。何故、そんな事が許されると思う?」

雨はこれほど狭い場所にさえ、容赦なく降り注ぐ。
今まで着る機会の無かった真新しいスーツが、見る影も無く汚れさていく。
台風が過ぎれば、再び晴れた空が現れるのか? 信じる気にはなれない。
降り止まない予感。降り止む期待。

「国が許可しているからだ。ニコラの研究は元々、国家絡みの研究だからな」

そして先生は、鍵を開いた。


【M線上のアリア】 現在/40


そこは避難経路の途中だった。
否、鍵を開いたら、すぐ目の前に避難道が広がっていた訳では無い。
目の前に広がっていたのはボイラー室のような場所で、恐らくは学生と爺さんの研究室に熱を伝える為の場所だと考えられた。先生が注目したのは、その床。コンクリートの床の一角がタイル状になっている。教室に使われているようなタイル。その何枚かを床から剥すと、鋼鉄製の床が見えた。否、床では無い。それは扉だった。「避難経路に下りる為の扉だ」

先生が更に数枚のタイルを剥すと、鋼鉄製の扉の全貌が現れた。黒色。漫画に出てくる核シェルターの入口のようだ。漫画? 一体どんな漫画に出てくるというのか。先生が扉を持ち上げようと腰を屈めたので、僕もそれに倣う。「……重いぞ」確かに重い。何故、こんな場所に、こんな代物を作ったのか。扉を持ち上げると、地下に伸びる梯子が見えた。まさか。またか。

「安心しろ、先程よりは短い」
先生が梯子を降り始め、僕も後に続く。開けたままの扉から漏れる薄明かり以外に、光は存在しない。先生は四度目の潜入だと言ったが、過去三回、こんな場所を一人で降りていったのだろうか。梯子を下る音しか聞こえない。「気を付けろ、地面だ」足下から先生の声。

意外と早い。僕は梯子から手を離す。地面。微かな風を感じる。
なので、そこが避難経路の途中だった。恐らく位置的に考えると、此処は大学と下水道の中間に存在するのではないだろうか。この道を片方に歩けば、爺さんの研究室へ辿り着くはずだ。そしてもう片方に歩けば……エリカの家? 信じられない。先生は爺さんの研究を「国家絡みの研究」と言ったが、地面を掘っても許されるなら、それは事実だろう。そんな事より、爺さんの研究が国家絡みの研究ならば、みく子の存在はどうなるのだろう。国家絡みの存在、という事になるのだろうか。次第に暗闇にも目が馴れてくる。道幅は想像以上に広い。

「実際の避難時には非常灯が点くようだ。まぁ、薄明かりだがね。見えるか? 天井の所々に照明のようなモノがあるだろう。残念ながら今は点かない。先程、そのシステムを切ってしまったのでね。その代わりライターがある。まぁ、無いよりは幾分マシだろう」

先生はポケットから百円ライターを取り出しすと、指先で音を鳴らすようにして火を点けた。暗闇の中では大した効果は無い。だが確かに、無いよりは幾分マシだ。そこに先生がいる事が解る分、少しは安心出来る。それに大学の地下から研究室に行くだけなら、長い距離では無いはずだ。歩く。歩く。歩く。会話は無い。疑問は増えている。先程から、ずっと。

……思い出せない?
何を思い出せというのか。そもそも、僕は本当に知っていたのか。
先生の言葉の節々に表れる「僕が知っていたはずの事」を、もし仮に僕が知っていたとして、ならばこれほど悩む必要は無かったのか。悩む必要が無かったとして、ならばどうして僕はそれを忘れた? ヴィンセントに食わせたか。食わせた記憶は無い。当たり前だ。どの部分を食わせたのかなんて、そもそも覚えている訳が無い。避難経路に、足音だけが響いている。

カツン。カツン。カツン。

爺さんの研究室に行けば、全てが解る。
全てとは何だ?
暗闇の中で、光を探している。
それが必ずしも正しいとは限らないが、そうする。

それは変化だ。
現状の変化を求めている。
暗闇から光が漏れる、穴を探している。

(変わってしまうモノなんて、全部嘘)

何時だったか、みく子は言った。
ならば僕は嘘だ。僕は嘘だらけの存在だ。
だけれど、みく子。
僕は嘘だらけのまま、君の世界を救いたいと願うんだ。

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