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三日目:蜜編 現在 50話

暗い道を歩いている。
研究室から地下道へ。先程とは真逆に進んでいる事になる。
相変わらず光は無い。ギリシア神話に似たような話があったな、と思った。
振り返ってはいけない。振り返れば大切な何かを失うだろう。それが何かは解らないが。

オルフェウスは冥界の途中で振り返り、大切な妻エウリュディケを失くした。
僕にとって、それは、みく子か?
それとも、もっと別の、失くし果てた過去から脈々と繋がる、巨大な何か。

記憶か。


【M線上のアリア】 現在/50


先生を背負い、僕は地下道を歩いていた。
ヴィンセントは退屈そうに隣を歩いているが、手を貸そうとはしない。
先生の呼吸は乱れていた。汗が止まらない。考えてみれば、得体の知れないバケモノに脳味噌をえぐられて、無事で済む訳が無い。あれは何だったのか。……アクセプト? あの瞬間、先生は言った。(アクセプトは完成しているのか。)あれがアクセプトなのだとしたら、みく子は一体、何をしようとしている? 表面上、先生の額には傷一つ付いていなかった。血も流れてはいない。だけれど先生の容態は、次第に悪くなっていく。背中が重い。

「……あの男、バスター、あのまま放っておいて良かったのか?」

僕が声を発すると、それは暗闇に反響した。
ヴィンセントが此方を振り向いたような気がするが、よく解らない。

「イエス。問題は無い、目が覚めても我々の事は覚えていない。どの道、お前達が侵入した事など、ジェームス・ニコラ・ノートンは気付いている。重要なのは、お前が契約者だと、相手に悟られぬ事だ。あくまでも"人間の犯行"だと思わせておく限り、相手も無理にお前を追跡したりはしない。お前を相手にするよりも、今は大切な用件に追われているだろうからな」

ヴィンセントは、彼にしては随分と流暢に、言葉を重ねた。
爺さんが追われている大切な用件?

「……みく子か」
「お前には、まだ時間がある」
「あれがアクセプトだとしたら、みく子はどうなるんだ」
「……否、あれはアクセプトでは無い」背後から声。先生が息を吐き出すように告げる。

「……話しただろう、あの研究は、元々、人体兵器の実験だったと……」
「先生、無理に話さない方が」
「Bは……単なる実験体に使われていたようだな……あれはアクセプトでは無い」

先生の心音が、背中越しに伝わる。
尋常では無い速度。人体兵器。戦争に使われるはずだった人間。

「アクセプトは……もっと美しい……」
「先生」
「だから私達は……夢を見た……美しいだけの……愚かな夢だ」

直感。先生は死ぬ。少なくとも、このままでは。死んでしまう。先程と真逆の道を進んでいる。先生を背負ったままで、あの道を戻る? 無理だ。先生を背負ったまま、あの長い梯子を下ったり、重い扉を開けたりするのは危険だ。無理だ。ヴィンセントが手を貸すとは思えない。

「先生、このまま真っ直ぐ進みますよ」
「……何?」
「真っ直ぐ進めば、エリカの家だ」
「馬鹿か……お前は……ッ!」声を荒げようとして、咳き込む。
このまま背負い続けていても、先生は死ぬ。ヴィンセントは何も言わない。僕は馬鹿だ。知っている。エリカの家に進むという事は、爺さんの家に進むという事。せっかく無事に研究所から逃げて来たというのに? 確かに馬鹿だ。「知ってますよ、僕は馬鹿だ」

「……置いて行け、此処に私を置いて行け」
「それこそ馬鹿を言っちゃいけない」僕は振り向きもせずに笑う。
「先生、やっぱりオルフェウスは、あの時、振り返っちゃいけなかったんだ」
「……何の話だ?」

エリカの家。
僕と、エリカと、爺さん。そして先生が、出逢った場所だ。
先生は、僕とエリカに夏休みの宿題を教えてくれた。もしも、その前から、ずっと前から、何十年も前から、先生が僕を知っていたとしても、僕にとっては、それが先生との出逢いだった。

「僕はエリカの家に行く。先生、文句は言わせませんよ」

先生は何も言わなかった。
否、呼吸が乱れて、何も言えなかったのかもしれない。
ヴィンセントの足音が聴こえる。悪魔の足音。僕は何を引き連れてるんだ?

「ククク……お前は本当に面白い」

一直線に、進む。
大切な何かを守ろうとする時に、後を振り返ってはいけない。
闇に、飲み込まれる。それでも目指しているのは、光だ。
光を、取り戻そうとしている。

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