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三日目:蜜編 現在 52話

「死んだ人間を蘇らせるのも、可能かもな」

僕が発した文字列に、ヴェンセントは反応しなかった。
研究室で先生から聞いた話。水槽で泳いでいた金魚……キリコは、死んだ訳では無い。
キリコが死んでいるならば、あの金魚をキリコと呼ぶのは変だ。魂を受容するのがアクセプトならば、キリコの魂は今、金魚の中に在る? 荒唐無稽だが、そう考えるのが自然だ。疑問は残る。ならばキリコの元の身体は、何処に行った? そして僕の魂は過去、何処に在った?

先生が見せた数枚の写真。真黒な金魚。蛙。鼠。
それらは過去、僕自身だった。先生は「まだ続きがある」とも言った。
塗り潰されたような黒。相反するような、みく子の白い肌。遺伝情報の欠損。アルビノ。
僕の黒髪。ニコラの嘘。悪魔の契約に汚染された研究室。そこで一体、何が生まれた?

「……エリカ」

思わず口から零れた単語。「どうした?」悪魔が問いかける。
「いや、……このまま真っ直ぐ進めば、エリカの家なんだなと思ってさ」
一直線に伸びる暗闇の向こうに、エリカの家が在る。瞬間、何故か、ほんの少しだけ。

僕は、そこに辿り着きたくなかった。


【M線上のアリア】 現在/52


「そういえば、研究室に来るまで、何処に行ってたんだよ?」

両肩を動かして、姿勢が崩れた先生の身体を背負い直すと、隣を呑気に歩く悪魔に、僕は問いかけた。実際、研究室でバスターに襲われた時、ヴィンセントが現れなければ、恐らく僕達は二人とも殺されていた。爺さんの最終的な研究(みく子を利用したアクセプト?)にとって、もしかすると僕の存在は、邪魔なのではないだろうか。存在しても、しなくても関係ない、では無い。僕が存在すると(そして何らかの真実に気付くと)不都合があるのではないだろうか。あの瞬間、バスターの液体化した指が先生の頭部と同化した。それから僕を見て「久し振りだ」と言った。その直後に、続けて言った。(そして今すぐお別れだ)。

「お前が来なきゃ、僕達は死んでたよ。でも何処に行ってたんだよ?」

図書室で僕の記憶を食った後、勝手に消えたりしなければ、余計な危険は少なくて済んだかもしれない。先生がヴィンセントを見る事が出来る(先生も"汚染された研究所"で悪魔と契約した一人なのだろうか)事に気付いた時点で、もっと話は早く進んだかもしれない。

「……あの大学には、継承者が居るようでな」

「継承者?」ヴィンセントが発した単語に、僕は同じ単語で訊き返した。
悪魔を見る事が出来る人間の条件。契約者と継承者。その片方。ビルの裏で猫を見ながら話した時も、継承者に関して、ヴィンセントは多くを語ろうとしなかった。唯一、言った言葉は「血。羽。刻印」。

「図書室の前を通った学生の中に、継承者が居たな」
「継承者がいると、何がマズイんだ?」
「チッ……」舌打ちの音が聞こえた。珍しい。悪魔が苛々している。

「継承者は俺達を食う。俺達が人間共の記憶を食うようにな。俺達の悪意を食うのさ。それを奴等は"消す"だとか"召す"だとか、奇麗な言葉で飾るがな。本質は俺達と変わらない。奴等は悪魔の"悪意"を食うのさ。それは俺達、悪魔にとって"死"と同義だ。気分が悪い」

成程。悪魔……ヴィンセントは、図書室で継承者の存在に気付いて、逃げたのだ。
悪魔にも苦手なモノがあるとは思わなかった。思わず僕は、小さく笑った。「……へぇ」
「……何が可笑しい、羊」
「別に。誰にでも苦手なモノってのは在るんだなと思ってさ」
「苦手なのでは無い。俺達が一方的に嫌っているだけだ。継承者など苦手なものか」
「あ、そ」

背中から先生の呼吸音が聞こえる。先程に比べて、随分と荒くなっている。大学からエリカの家まで、直線距離にすると、どれくらいだろう。それほど遠くは無いはずだ。そもそもエリカが共都大学を受験したのも「家から近いから」という、実にどうでも良い理由だった。あまり根拠は無いが、僕は意識を失くしているであろう先生に向けて、話しかけた。

「大丈夫、もうすぐ着きますよ」

大丈夫、呼吸は続き、心音は聞こえる。先生は死なない。
エリカの家に着いたら、おばさんが居るはずだ。事情を話せば救急車を呼んでもらえる。爺さんは家に戻るだろうか? 否、恐らく明日の昼間、爺さんはみく子に会う。家に戻るような時間は無い。そのまま研究室に戻ってくれると助かる。事前に爺さんに会っておきたかったが、事情は変わってしまった。色々と知ってしまった今、もう僕は爺さんに会わない方が良い。

爺さんが日本に越して来た理由も、今なら解る気がする。
何故、単なる団地育ちの僕が、気が付けば金持ちのエリカと幼馴染になったのかも。
爺さんは、全て知っていたのだ。全て知った上で、ずっと僕の成長を、監視していたのだ。

否、エリカと幼馴染になる、ずっと前から。
あの日、エリカが言った台詞【----"devil ate it" 404 NOT FOUND----】……頭痛。
何を言ったのかは思い出せない。だが今から思えば、核心的な事を、エリカは言ったんだ。

「扉だな、羊」

数歩先を歩いていたヴィンセントが、立ち止まる。
重い壁に手を当てながら、此方を振り返っているような気配を感じた。
先生を背負ったまま歩いている僕は、暗闇に浮かぶ、その姿を確認して、一言。

「開けよう、全ての答に繋がる扉だ」

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