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三日目:蜜編 現在 53話

「閉まっているな」

ヴィンセントが動かぬ扉に触れながら、僕を見た。
研究室の扉は開いたから、此方の扉も開くと思ったが、まったく何も予想しなかった訳でも無い。一応、セキュリティ・システムの世界的権威であるジェームス・ニコラ・ノートン邸の扉が(地下道とは言え)簡単に開くとは思えない。「……今、言ったろ、"開けよう"って」
僕はヴィンセントの右腕を手に取ると、その指先を自分の額に当てた。

「扉を開くのに必要な記憶は、どれくらいだ?」

ヴィンセントは小刻みに肩を揺らすように笑うと、静かに指先を広げた。
「失う事に恐れを感じなくなるのは、愚かだぞ、羊」
「得る事に怯えるのも愚かだ、ヴィンセント」
「ならば食おう、お前は何を望む?」

先程と同じ台詞を、もう一度。

「扉を開けろ、全ての答に繋がる扉だ」


【M線上のアリア】 現在/53


――ズンッ。
一瞬、墜落するような目眩の中で、僕は扉が開く音を聞いた。
重たい鉄の扉が、金属質な悲鳴を虚空に響かせながら、緩やかに開いていく。
静かに目を開ける。光は届いて来ない。「……これは?」

ガォゥン。ガォゥン。ガォゥン。
滑走路。車輪。ゼロ戦の両翼。鉄板のような座席。
扉が開く。重い。暗い。機械。照明。水槽。鉛色の無味無臭の機械音。

「……え?」

強烈な既視感。何処かで見た。何処で見た?
巨大な水槽。だが何も泳いでいない。脳髄を直進するような頭痛。
頭が痛い。何故だ? 暗闇から目の前に広がった光景。それは明らかに、研究室。
だが地下道の向こう側に在った、爺さんの研究室とは違う。何処か古臭い、旧式の施設。

(遺書は書きましたか?)

「……ウッ!? グァァアアァァッ!!」

激痛。今の声は。何だ。誰だ。

(戦場にはホタルがいる)

(それは無数に上昇する、魂のようだった)

(0に無限大を掛けても1にはならないのならば……)

先生を床に降ろすと、僕は出口を探した。
知っている。あの水槽の向こうに扉がある。僕は知っている。何故、知っている?
右手で頭を抑える。止まない頭痛。朦朧とする意識。あれ? 今、何が起こっているんだ? 僕は遺書を書いたか? 遺書って何だ? 此処は何処だ? 此処は研究施設。否、エリカの家の地下。水槽の向こうに扉が見える。とにかく此処から出なければ。(何の為に生きてる?)


――「蜜ちゃん、どうしたの!?」


扉を出て、何だかよく解らない階段を登り、細い廊下を通り、床に転がる僕を見付けて、誰かが叫んだ。……エリカ? 違うな。此処にエリカがいる訳が無い。だが随分、よく似てるな。
「蜜ちゃん! 何処から来たの!? 大丈夫!?」
エリカによく似た女が、床に膝を着いて、両手で僕を抱き抱えた。
「蜜ちゃん! 大丈夫!? どうしたの!?」
エリカによく似た女が叫ぶ。頭が痛い。異常だ。記憶を食われた影響か。否、少し違う気がする。とにかく、あまり揺らさないで欲しい。何処かで聞いた事がある声だな。ああ、そうか。

「……桐子か」

「え?」女の表情が、瞬間、固まった。
僕の意識は、そこで戻った。僕は、今、何と言った?
僕を抱き抱えた女が、確かめるように。「……蜜ちゃん、今、何て?」

目の前にいる女は、おばさん。エリカの母親。
僕が倒れている場所は、エリカの家の、一階の廊下だった。
天井から吊り下げられた豪華なシャンデリアが、少しだけ眩しかった。

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