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三日目:蜜編 現在 54話

サイレンが遠ざかっていく。
先生を乗せた真白な救急車が先生を運び、僕は記憶の外で、その音を聞いた。
視界は黒。目を閉じているから。光が見えた気がしたのは一瞬。豪華なシャンデリア。

「……落ち着いた?」

テーブルの上に陶器を置く音が聞こえて、同時に声がした。エリカの母親。おばさん。
静かに目を開ける。微弱な頭痛。エリカの家の応接間に置かれたソファの上に、僕は横になっていた。「高木博士、大丈夫かしら」。先生に付き添ったのはティアラ。この豪邸のメイド。彼女は僕が中学生の頃から此処で働いているから、先生の事は少しだけ知っている。

「蜜ちゃん、大丈夫?」

おばさんは穏やかな声で問うと、向かい側のソファに座った。
病院に運ばれるのを拒んだのは僕だ。僕に休んでいる時間は無い。第一、頭痛は感じるが、疲労は感じないし、そもそも空腹すら感じない。数日間、何も食べていないのに。明らかに僕の体は変だ。おばさんはテーブルに置いたティー・カップを手に取ると、琥珀色のダージリン・ティーを口に含んだ。右隣のソファには、ヴィンセントが座っている。だが、おばさんには見えていない。悪魔は足を組んで、何も言わずに目を瞑っている。

地下に存在する研究室。否、研究施設と言った方が良い。エリカの家の地下に広がる、あの巨大な施設の存在を、僕は知らなかった。……知っていたのかもしれない。見覚えがあった。エリカの家の地下の研究施設と、大学にある爺さんの研究室は繋がっていた。地下の研究施設は、何年前から存在した? 救急車が到着する前、倒れた先生を応接間まで運んだ時、おばさんは研究施設の存在に少しも動揺しなかった。おばさんだけじゃなく、メイド達も動揺しなかった。この家に関わる人間は、地下の存在を知っていたのだ。「……ねぇ、おばさん」

おばさんは右手に持ったティー・カップを上品に皿に戻すと、長い睫毛の奥の瞳を、滑らかにスライドさせるようにして、僕を見た。「何、蜜ちゃん?」。エリカに似ているな。だけれど僕の口から零れた台詞は別の傾斜から、少し幼く見えるおばさんの大きな瞳に向けられていた。

「"キリコ"って何?」


【M線上のアリア】 現在/54


「蜜ちゃん……それ何処で知ったの?」

天井から吊り下げられた、豪華なシャンデリアが見える。何処で知った? 地下の施設から現れたくらいだから、爺さんの研究室で知ったのだ。「爺さんのトコで。色々、知ったよ」。僕はソファに横になったまま、おばさんが語るはずの、次の台詞を待った。「色々……? そう……」
おばさんは少しだけ、震えているように見えた。

「キリコは……私のお母さんよ」

僕を見ずに、手元のティー・カップに視線を落としたまま。

「だから、エリカの、お婆ちゃん」

僕は、出来るだけ、ゆっくりと、ゆっくりと、ソファから上半身を起こした。
「それが……キリコ・ノートン?」おばさんは、少し驚いたように、視線を上げる。
「それが……霧島桐子……"MIX"……爺さんの研究室の水槽を泳いでた金魚?」

数秒間、おばさんは何も言わなかった。
応接間に昔から飾られている壁時計が、時間を刻んでいる。
「……何処まで、思い出したの?」
それは先生が僕と再会した際に言ったのと、まるで同じ台詞だった。

「……思い出した? 思い出してなんかいない。だけれど僕は、僕の知らない昔、真黒な金魚だった。それから真黒な蛙だったし、真黒な鼠だった。きっと他にも、真黒な何かだったと思う。地下にある巨大な研究施設に見覚えがあるよ。多分、僕は昔、あそこにいたんだと思う。僕のコードネームは"MIX_2"だった。そして多分……、」

一拍、呼吸を整えて、言う。

「僕は、霧島桐子を、知っている」

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