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三日目:蜜編 現在 56話

「……そこまでの話は先生……高木博士から聞いたよ」

終始、おばさんは小さく震えていた。もしかしたら聞いてはいけない事を聞いているのかもしれないし、話してはいけない事を話しているのかもしれない。だけれど疑問は深まる。僕はそれを解かねばならない。「僕は、金魚になった。だけれど今、僕は此処にいる。僕は誰だ?」
右隣でヴィンセントが目を閉じたまま、静かに笑った。

「キリコは停止した? じゃあ研究室にいた金魚は何だ? 高木博士は、あれがキリコだと言った。じゃあキリコの身体は何処に行った? 爺さんは何をしようとしている? どうやってキリコを取り戻そうと? みく子とキリコに、一体何の関係がある? アクセプトって何だよ!」

感情。振り下ろす先を見失っている。おばさんを責めても仕方がない。豪邸は静かだ。音が無い。僕は何処へ行けば良い? 何をするべきだ? 今更、誰一人、救われる事なんて望んでいない気がする。否、爺さんと僕だけが、それを失う事を畏れて、未だ這いずり回っている。

(……もう一度、あの日の悪魔に会いたい)

否、違う。
昨夜、雷雨の向こう側で、みく子は確かに言った。"悪魔に会いたい"。
悪魔"コルト"との契約に汚染された研究所。恐らく、みく子は知っている。その契約は何時、結ばれた? 解らない。だけれど、みく子の台詞の意味は、唯ヒトツ。「救われたいんだ」

霧島桐子が停止して、現在に至るまで。
その悲劇を誰かが救わなければ、何も終わりはしない。


【M線上のアリア】 現在/56


"MIX"の人体実験が失敗した後、ノートン博士は研究室に篭った。
その間に"MIX_2"の人体実験が始まった。すなわち人間の魂を一旦、下等な動物に移動し、順序を経て、最終的に人間に戻す事。肉体を変えながら、魂が生き続ける。"MIX_2"の最初の実験は成功し、次の段階に移ろうとしていた。金魚から、両生類へ。

魂を移動させた容器の表面は、黒く染まる。原因は不明。それが実験の進行に重大な欠陥が発生させる訳ではなく、研究者達は、その症状と魂の小刻みな進化を"黒い進化"、要するに彼等が信仰する神への冒涜の意味を込め、自嘲的に"SNAKE"と称した。

蛇――新たなる進化への、黒い一本道。
実際の実験に蛇が使用された訳では無い。金魚、蛙、鼠。"MIX_2"の魂は長い年月を経て、次第に人間の肉体へと近付いていく予定だった。ところが冷凍された四体の新生児の存在が、新たな展開を生む。ノートン博士が突然、スクリプトの理論を完成させたのだ。

スクリプト――すなわち細胞を操作し、肉体そのものを不死にする研究。
細胞は無限に分裂する事が出来ない。初代培養細胞は五十回程度の分裂を繰り返すと細胞周期が停止する。それがすなわち老化であり、死だ。その現象に深く関わるのが"Telomere"。
テロメアは染色体の末端に存在する構造であり、細胞分裂を繰り返すとテロメアは短縮していく。テロメアが短縮する事により、細胞は老化する。老化を遅延するには、単純にテロメアを延長すれば良いのだが、その方法を見付けるのが簡単では無かった。

ところが四体の新生児は、それぞれ完全なテロメラーゼを発現させていた。テロメアを延長する酵素。その完全なテロメラーゼが発現した肉体では、テロメアが短縮する事は無かった。無限分裂寿命細胞。細胞が死なないのだ。ノートン博士は"B"によって、それを発見した。

"B"――後に"BUSTER"と名付けられる新生児は、ノートン博士の手によって育てられる。同時期、"MIX_2"の魂は金魚から蛙へ移動され、アクセプトとスプリクトの両研究は並列して進められる事となった。数年後、ノートン博士は"C"・"D"の解凍に着手する。同時期に彼が実践した研究は、クローニング。完全なテロメアーゼを発現させた細胞の培養と、複製。ノートン博士の実験は全て成功し、研究施設には次第にスクリプト派の所員が増えていった。

――その頃から、ノートン博士の生活に、奇行が見受けられるようになる。
日常生活の些細な出来事を、何も覚えていないのだ。研究に関わる事は全て覚えているが、所員と交わした会話や、数分前に食べた昼食の記憶が無い。覚えていない事に対して理不尽に怒り、奇声を発する。所員達は、それを彼の研究に対する姿勢と集中力によるモノだと信じていたし、それ以外の理由など疑いたくは無かった。ところが実際、ノートン博士の記憶は蝕まれていた。何に?「……解らない」。おばさんは小さく呟いた。だが、僕は知っている。

"MIX_2"の魂が蛙から鼠に移動される事が決定した日、ノートン博士は意外な提案をする。停止した"MIX"の魂を、金魚に移動する。それはノートン博士が、今も霧島桐子に執着している事を意味していた。スクリプトの実験体を"SNAKE"する。反対意見は出なかった。

瞬間、誰もが予感したのだ。
ノートン博士は、停止した霧島桐子を蘇らせようとしている。
新たなる不死の肉体を創造し、そこに彼女の魂を呼び戻すつもりなのだと。

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