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一日目:蜜編 過去 03話

詩人が口を動かして声を発すれば、詩が生まれ、
お笑い芸人が口を動かして声を発すれば、漫才が生まれるように、
歌を唄うべき人が口を動かして声を発すれば、そこには音楽が生まれるんだ。

世の中、そんなに単純なモノじゃないかもしれないけれど、
事実、実際、みく子の歌は、そういう歌だった。
それは彼女の髪の色と同じように明るく、周りを優しく包み込むように、響いていた。


【M線上のアリア】過去/03


寂れた飲み屋通りの路地が、みく子の場所だった。
誰もが「どうしてこんな場所で?」と思うような場所かもしれない。
何せアスファルトは汚れて、何でか知らんけど常に濡れてるような状態だし、
同じく何だか知らんけど、何故か常に週刊プレイボーイが捨てられているような場所だった。

「そういう場所にこそ、歌って必要だと思わない?」

これは唄い終えた後に、マックス・ドックスでみく子が言った台詞。
窓際の席からはM字型のブサイクなダックスフントが描かれた看板照明が見える。
みく子はフィッシュ・バーガーを(もちろん僕の奢りで)三個食べ、
ポテトとシェイクを(もちろん僕の奢りで)胃の中に入れると、満足そうに言った。

「だから歌って素敵なのよねぇ」

「まぁ、確かに素敵だった」と、僕は言った。
みく子の歌は確かに素敵で、しかも一定のファンがいるようだった。
寂れた飲み屋通りの路地のくせに、そこには十数人が集まり、みく子と共に唄っていた。
オッサンから若い子まで、みく子を囲んで一緒に歌っていた。

「何時も同じ場所?」
「そうよ、何時も同じ場所、じゃないと困るじゃん」
「誰が?」
「歌を楽しみに待っていてくれる人が、困るじゃん」

みく子は、多分、今夜、数千円を稼いだ。
ギター・ケースの中に千円札が数枚見えたから、間違いない。
確かにみく子は、あの横断歩道で「お金ないからね、少し稼ごうかと思って」と言った。

ところがみく子が、そのお金を何に使ったのかと言うと、
コンビニで食べ物を色々買い込んで、それを全て野良猫に与えたんだ。
一匹や二匹じゃない、もっと沢山の野良猫が集まる場所があって、そこに餌を置いた。

「財布落としちゃってから二日間、餌あげてなかったからね」

みく子は笑って、野良猫の中の一匹を撫でた。
なるほど確かにみく子は「少し稼ぐ」とは言ったけど、何に使うか言わなかった。
二日間、腹を空かせて考えていた事が「野良猫の為に金を稼ぐ」だなんて馬鹿げてる。
馬鹿げてはいるけれど。

「みく子、マックス行こうか」

……という経緯で、話は戻る。
それで僕達はマックス・ドックスにいる、という訳だ。
金を稼いだみく子が、僕の奢りでフィッシュ・バーガーを三個も食ったのも、
そのような理由による。

みく子は三個目のフィッシュ・バーガーを美味そうに平らげ、
シェイクをゾゾゾと音を立てながら吸い込むと、満足そうに息を吐き出して、
要するに、こう言ったんだ。

「そういう場所にこそ、歌って必要だと思わない?」

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