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五日目:蜜編 現在 64話

何故、僕は通帳と印鑑を持ち歩いている?
……普通じゃない。そもそも記憶喪失を自覚しながら、まるで焦燥感に駆られていないのも普通じゃない。全て知っていて、わざと失くしたような――それは喪失ではなく、喩えるなら自分で隠した宝物を、わざわざ自分で探しているような――感覚。何の為に通帳と印鑑を持ち歩いている? 通帳の名義を見る。「カサハラミクコ」……誰だ? 預金残額。10,884,591。
「……冗談だろ?」
肝心の財布の中には千円が二枚と百円玉が四枚。それから細かい小銭が少々。パスタの支払いには充分だろうが、我が財布ながら頼りない。……我が財布? 否、もしかしたら他人の財布(カサハラミクコの財布?)なのではなかろうか? 身分証明になるようなモノは無いか。例えば運転免許証。(僕は何歳なんだ?)財布を漁るが、何も出てこない。未使用のコンドームでも出てくれば笑い話になるし、少なくとも、この財布の持ち主が男性である可能性が高くなりそうなモノだが、それすら出てこない。「この財布の持ち主、ロクに働いてないな」

毒吐く。外を出歩いてさえいないんじゃないか? 普通に外出をすればスタンプカードの数枚でも貯まりそうなモノだ。ところが現金以外に何も無い。小遣い制なのだろうか。財布の持ち主(仮にカサハラミクコとする)は無職で引き篭もりの女なのか? 何故、そんな女の財布を、僕が持っている? 「……あ」。財布の隅から、隠れていた一枚のカードが落ちた。摘み上げる。図書館の貸し出しカード? 表面に氏名が記載されている。

「……トウヤマミツ?」


【M線上のアリア】 現在/64


男? 女? それすら判別し難い。知らない名前。
瞬間、突然、僕は怖くなった。何に対してかは解らない。とにかく怖いと思った。
これが誰の財布(自然に考えるなら"トウヤマミツ"の財布だろう)かは解らないが、僕はパスタを全て平らげる前に席を立ち、誰のモノとも知れぬ千円札を一枚、支払った。

喫茶店を出ると商店街の穏やかな活気が広がっている。僕一人、場違いな存在のような感覚。……誰? 自分が何者かも知らず、此処を歩いて良いのか? 不安。焦燥。襲ってくる。通り過ぎる人達、誰も僕を知らず、僕さえも僕を知らない。……誰? 頭痛。鈍痛。落ちてくる。

「あれ? こんな時間に何やってんだ?」

正面から声。真赤な口紅の女性。誰に声をかけている?
「おい、無視すんな」擦り抜ける瞬間、スーツの襟元を掴まえられる。
「何だい、蜜くん、まだ風邪治ってないのかい?」僕を知っている人の口調。……ミツクン?

「今、アンタ、僕の事、何て言った?」
「……は? 何言ってんだ?」
「僕を何て呼んだ?」
「やっぱり、こないだから変だな、君」

真赤な口紅の女性は、何故か和服に身を包み、買い物袋を下げている。
僕の額に掌を当てると「熱は無いな」と呟きながら、続ける。
「まぁいいや、ちょっと店寄っていきな、カヨリに看病させるから」
女性は強引に僕の手を引くと、豪快な歩幅で歩き始めた。
「そもそも蜜くん、このデンコさんをアンタ呼ばわりするたぁ、十年早いよ」

振り返りながら、笑う。

「何があったか知らないが、徒事じゃないね、ちょっと力になってやるよ」

歩く先に、やはり真赤な提灯が見えた。
真昼でも派手に映る看板に書かれていた文字は――『呑処 お松』。

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