スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

五日目:蜜編 過去 16話

真青な青空。遠方から二羽の鳥が飛んでくる。
搬送用の真白なトラックがエンジンを停止させると、僕は小さな檻の中に入れられた。
「お爺ちゃん、エリカの羊を何処に連れて行っちゃうの!?」
突然の出来事に驚き、檻の前で泣き喚くエリカを、娘夫婦が抱き締める。
「羊はね、悪い病気にかかっちゃったの。だからね、お爺ちゃんが病院に連れていくのよ」
ニコラは一足先にトラックに乗り込み、僕は檻の中でメェと鳴いてみせた。

悪い病気? ――魂が延々と移動を繰り返すならば、それは。


【M線上のアリア】 過去/16


悪い夢だ。
檻の中で揺られながら、僕は考えた。
娘夫婦の家に戻る事は、もう無いだろう。エリカに会う事も。

昨晩、ニコラは何と言った?
子も、孫も、君も、全てを犠牲にする。セシルも、エリカも、僕も、全てを犠牲にすると言った。霧島桐子を取り戻す為に。それから、僕を再び人間に戻す、とも言った。それは何の為に?

(私からキリコを奪えるかね?)

海が見えた。
一面に広がる静かな海。細い道に入る。小高い丘。真白な建物。
James Norton Laboratory――ニコラの新しい研究施設。何処かに似ている気がするが、驚く程の事では無い。此処で僕を人間に戻すというのか。あの場所に、酷似した場所で。

所員は全員、アメリカ人。当然と言えば当然で、途端に会話が聞き取れなくなる。考えてみると娘夫婦の家では、彼等の会話は常に日本語だった。やはり少なくとも安倉は、僕が誰だか知っていたのか。檻に入れられたまま、地下に搬送される。飛び交う英語での会話。

今更、僕を人間に戻して、ニコラは何をしようというのか。
白衣に身を包んだ所員達。更に進むと、真白な防護服を全身に纏った所員達が現れた。
照明。液体。発光するモニター。無数のケーブル。オレンジ色の培養液。その中に――。

人間の子供。

思わず、僕は息を飲んだ。八才程度の、人間の子供じゃないか。
少年はオレンジ色の培養液の中で眠っている(ように見える)。生きているのだろうか。まさかニコラは、目の前の少年に、僕の魂を移動する気なのか。人間に魂を移動する……? 実際に少年を目の前にして、その本当の意味を理解した僕は、愚かだと言える。今日まで、動物の中に魂を入れられた僕は、我が身を呪うばかりで気付かなかった。魂を入れる意味に。

少年の魂は、どうなる? 少年を殺すのか、僕は?
僕が魂を入れられてきた全ての動物達の魂は、一体何処に消えた?
何故、そうまでして魂を入れる? ニコラは何の為にアメリカまで来て、こんな事を?

(日本では無理だった。あそこは食い尽くされていてね)

食い尽くされていた? 何の事だ? 冗談じゃない!
――僕は檻から出され、全身に無数のケーブルを突き刺される。

(もしもキリコを取り戻せるとしたら、君はどうするかね?)

奪い返すさ! 貴様の手から! 全てを変えてみせるさ!
――それから脊髄に、巨大なケーブルを一本。全身が痙攣する。

(私は選ばんよ、手段を。悪魔にだって魂を売ろう)

奪い返す? どうやって? 羊から少年に魂を移動して?
――オレンジ色の培養液の中で、少年の金色の髪が揺れている。

所員達は慌しく動き回っている。ニコラの姿は見えない。
頻繁に飛び交う単語。"SNAKE"――動物間における魂の移動。最後の相手は人間。
逃げ出したい。ブン殴って反論の一つもしたい。羊の身では何も出来ない。
嗚呼、世界を変えてしまいたい……!!








「よぅ、羊……また会ったな」







慌しく動き回る世界の中に、声。
僕は目を開ける。目の前に立っていたのは真黒なスーツに身を包んだ、男。
否――悪魔。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

≪五日目:しのめん編 39話 | TOP | 五日目:蜜編 現在 67話≫


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。