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五日目:蜜編 過去 17話

真黒なスーツに身を包んだ男は、全身に無数のケーブルが挿された僕の目の前に立った。
逆光と、無造作に伸びている頭髪のせいで、表情は解らない。口元は笑っているようにも見えるが、笑い声は聞こえない。また会ったな? 会った覚えは無い。それに何故、先程から慌しく動いている所員達は、どう考えても邪魔な位置に立っている、この不審な男に注目しない?

「悪魔など見慣れているのだろ、此処の人間達は」

悪魔?

「とにかく、また会ったな、羊。幸運な再会か、運命の再会か。お前はどちらだと考えるね? 残念ながら運命などと、悪魔の前で口にはするな。計るべくして計られた、必然だと思え。羊、お前は俺を知らないだろうがね」

悪魔と名乗る男は、その風貌に似合わないほど、随分と流暢に喋った。

「派手に食い散らかしているようだな、此処も」

……食い散らかす? 似たような台詞を、ニコラも言っていた。

「コルトの仕業だろう。重複契約。共有契約。分割契約。厄介な奴を相手にしたな」

……契約? やはりニコラも言っていた。契約は完了した、と。

「記憶の対価に報酬を得る。それが契約だ。此処は契約に汚染されているな」

……待て。先程から、悪魔と名乗る男は、僕の考えている事に反応していないか?

「イエス、お前の考えている事は全て聞こえているよ、羊」

……どうやって!

「それが悪魔だからさ、羊」


【M線上のアリア】 過去/17


男は十六符を刻むようにクククと笑うと、オレンジ色の培養液に満たされた水槽の前に立った。金髪の少年。数名の所員達が水槽に潜り、少年の全身にケーブルを差し込んでいる。男は表面のガラスに指を添えると、静かに呟いた。「運命からは逃れられないと思うか、羊」
運命? 今、此処で、数分後に、目の前の少年のカラダに魂を移動させられる事からさえも、僕は逃れられない。それが運命ならば、受け入れるしかないじゃないか。

「先程、俺は何と言った? 悪魔の前で、運命を口にするなと言った。お前に訪れる全ては、計るべくして計られた、必然だと思え。そして計られた必然を、お前が変えるのさ、羊」

僕が? どうやって?

「宇宙は膨張し、再び伸縮するという話を知っているか? お前達の神が生み出した宇宙は、まるで呼吸をするように、膨張して伸縮する。それを何度でも繰り返す。そこでは始まりは終わりになり、終わりは始まりになる。俺は、今回が何度目の自分なのか、自分でも解らない。だが、俺は知っているぞ、羊。俺はこの場所で、今、お前に会う事になっていた。そして未来、俺とお前は何処かで再び会うだろう。それを覚えている。だが、それが何なのかは知らない」

難しくて、よく解らない。

「何度でも時空を移動している。過去から未来へ。未来は現在と呼ばれ、また現在から未来へ。そして未来から過去へ。否、単純に繰り返しているだけかもな。とにかく俺は、この輪廻を早く断ち切りたいのさ、羊。お前が世界を変えるなら、恐らく、それも可能なのだろう」

もっと簡単に説明してくれ。

「俺と契約を結べ、羊。お前は世界を変えたいのだろう? ならば、俺が叶えてやろう。お前が背負う代償は大きいが、俺が導いてやろう。お前の望みが叶う時、俺の望みも叶うのさ」

僕が叶えば、お前も叶う?

「悪魔は己の望みを、己で叶える事は出来ないのでね。誰かを食って、叶えるしかないのさ。どうにも難儀な存在だ。早く辞めてしまいたい。お前が世界を変えてみろ、羊」

僕は桐子を救いたかった。だけれど無理だった。否、違う、無理だったんじゃない。僕は何もしなかっただけだ。今更、目の前の少年に魂を移して、誰かを殺して生き延びて、また人間に戻って、それで僕は何をすれば良い。ああ、世界を全て変えてしまいたい。

「良いぞ、羊。もっと願え。もっと強く。お前の脳味噌から滴る切ない願いが、今、俺の食欲をそそるのだ。お前の記憶は豊潤で新鮮だ。人間、金魚、蛙、鼠……ククク。素晴らしいぞ、羊。お前は何年、生きてきた? これほど大量の潤沢な記憶を留めている人間も珍しい」

人間? 僕が?

「人間さ、魂を失わぬ限り、何処まで行こうとも、お前は人間なのさ」

僕に、世界を変える事が出来るのか?

「イエス、だが焦るな。今は無理だ。これほど大量の記憶を全て食ったとしても、世界を変えるほどの巨大な願いの代償としては、まだ足りない。だが方法はある。俺は契約の重複も、共有も、分割を認めないがね、お前の成熟を待っている事は出来る。それが本来の、悪魔の契約でもある。羊、お前は受け入れるか? 俺とカバラの契約を結ぶ事が出来るか?」

……カバラ?

「カバラ……意味は"受容"と"伝承"。10個の"球"と22本の"小径"。運命を必然に変えて、必然を人生に変えろ、羊。今から、お前は人間に戻り、22本の"小径"を完成させるのさ」

……22本の小径を完成させる?

「ヒトの成長数が、カバラの完成数と等しくなった時。22。すなわち羊、お前が22歳になる時。それがどれほど巨大な願いだとしても、俺は全てを叶えよう。世界を変えられるのさ。そして羊、その時、お前が背負う代償は……」

死。

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