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五日目:蜜編 現在 68話

オレンジ色の空。
太陽がビルの隙間に、落下しようとしている。
気が付くと僕は、赤色のまま点る、信号機の前に立っていた。
横断歩道の向こう側に、夕闇に張り付くように聳え立つ、巨大な建物が見える。

――共都大学。


【M線上のアリア】 現在/68


校門の前に、黒い車が停まっている。
人影が動いている。よく見えない。校舎から一人の女。
真白な肌。夕陽を浴びてオレンジ色に。随分とアバンギャルドなパーマ。
それも、やはりオレンジ色に染まる。

黒人男性がドアを開け、女は車内に乗り込もうとした。
そこで目が遇う。
誰?

女の動きが止まる。
横断歩道の向こう側。遠い。とても遠い。
女は一瞬、僕を見ると、何故か泣き出しそうな表情をした。

……カサハラミクコ?

僕は立ち尽くしている。
赤信号なのだから、仕方が無い。
何より僕は、カサハラミクコなんて知らない。

女は、ゆっくりと、ゆっくりと、黒い車の影に飲み込まれた。
窓はフルスモークらしく、中の様子が見えない。
赤信号なのだから仕方が無い。

赤信号になったら、どうなっちゃうんだろう?

何度でも待つのよ、青信号を。

赤信号になる度に青信号を?

そしてまた何度でも数えるの。

何の為に……?


「パスタ、ほとんど食べなかったな」


青信号に変われば、行ける。
青信号に変われば、知れる。
青信号に変われば、言える。

君は誰だ?
僕は何だ?

腹が減った。家に帰ろう。誰と?

カサハラミクコと。

車のドア。

閉まる。

走れ。




僕は、走り出した。
横断歩道が青信号に変わる寸前。
車のエンジン音。走り出そうとする。行くな。

「待て……ッ!」

車輪が回転を始める直前、僕は窓を派手に叩いた。
運転者が此方を見る。驚く。「……蜜様」
黒人男性がドアを開け、降りてくる。
女は降りようとしない。

「……蜜様、何故、このような場所に」

黒人男性が僕の名前を知っている理由も、敬称を付けている理由も、解らない。
だけれど、その全てが、どうでも良い。「気になるんだ、今、車に乗った子が」
何故か、僕は息を切らしたように言う。心臓が蠢いている感覚。
どうして降りようとしない。泣きそうな表情を見せたのに。
僕を知っているはずだ。カサハラミクコ。そうだろ?

「……蜜様は記憶を失っている?」

黒人男性が指を鳴らす。
黒い車からメイド服を着た女性が二人、降りる。
双方、慄然としており、一人は眼鏡をかけ、一人は髪を束ねている。

「現時刻より、蜜様の呼称を"M2"に変更。目標から"D"を回収しろ」

黒人男性の声を合図に、二人の女性は身を低く屈めた。
何の為に? ――無論、

「処分だ」

接近。
眼鏡の女性の拳が、僕の顔面を掠める。無意識に避けるが、体勢が崩れる。曲がった膝の裏へ低い弾道。髪を束ねた女性が蹴り出した脚によって、僕は地面に倒れた。何が始まった?

「"M2"……処分の指示を受けました」

転がる僕を見下ろしながら、眼鏡の女性が言う。

「名乗った方が良いでしょう。私はシノブ。彼はキヒロ」

彼――髪を束ねた方は男か。否、そんな事はどうでも良い。処分? 何を言っている。
蹴られた膝が小さく痙攣する。殺される? 今、此処で? こんな場所で? 何の為に?
理由を求めるのは悪い癖だ。今更、理由を知った所で。再度、エンジン音。車が走り出す。

「……待て!」
「まだお解かりにならないでしょうか。貴方の相手は私達。早くお立ちなさいな。それとも此処で大人しく、このまま処分させてくれるのかしら? それとも"M2"の戦闘力は、この程度?」
「……さっきから何言ってんだ」

カサハラミクコを乗せた車が、行ってしまう。
僕は追いかけなくてはいけない。理由は解らない。只、そうしなければいけない。
何故、殺される? まるで理由など解らないが、このまま安穏と殺される訳にはいかない。

「……どいてくれ、邪魔だから」

髪を束ねた女性――否、男性――キヒロが身構える。
立ち上がろうとした瞬間、シノブのスラリと伸びた脚が、僕の顔面に打ち下ろされた。
ガンッ。

……痛くない。
否、蹴られていない。逆にシノブが地面に倒れている。何故?
背後から声。

「イカンねぇ、二対一は……」
「やっぱり蜜くんを尾けて来て、正解だったわね」
「まさか本当に大きなトラブルに巻き込まれてるとは思わなかったけどな」

拳を振りながら笑っているのは……「デンコさん?」
「そうだよ、デンコ。隣で薙刀を構えてるのが、カヨリ。まだ忘れてないか?」
本当に、何故か薙刀を構えている。「……何で?」
「だから、あのまま何かあったらマズイと思って、さっきから尾けてたんだよ」
「お店に通帳と印鑑も忘れたでしょ? はい、蜜くん」
カヨリさんは呑気に袖から通帳と印鑑を取り出すと、それを僕に差し出した。

「お店は板前さんに任せてるから、安心してね」
「さて……さっきの黒い車、追いかけたいんだろ? 此処は任せて、早く行きな」

デンコさんは好戦的な視線で呟くと、着物の裾を捲り、屈伸運動を始めた。
カヨリさんは薙刀を片手に、先程から終始、ニコニコと笑っている。
「……おい、勝手に話を進めてるんじゃないよ!」
殴り飛ばされていたシノブは、そう叫びながら体を起こし、手の甲で血を拭った。
キヒロは身構えたまま微動だにしないが、冷静な視線を保っている。

「フフン……いいね、実に悪役らしい雰囲気だ」

屈伸しながら、デンコさんは猫科の動物のように、緩やかに微笑んだ。
「アタシ達が突っ込んだら、君は一気に走るんだよ、解ったか?」
「安心してね、とっても強いのよ、デンコちゃん」
カヨリさんが薙刀を振り下ろす。

オレンジ色に暮れていく校舎前で、まるで予想外の戦闘劇が始まろうとしていた。

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