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書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
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五日目:蜜編 現在 69話

屈伸運動を終えると、薙刀に巻かれていた長い紐を受け取り、両の袖を素早く縛る。襷がけ。「……さて、始めようか」
小さく、それでいて重い深呼吸。校舎前に学生の姿は見えない。キヒロは先程と変わらず低く身構え、シノブは短く歯軋りを鳴らした。数瞬の沈黙。

刹那、大きく旋回。
最初に仕掛けたのは意外な人物――カヨリさん。彼女の長い柄が鋭く、低く弧を描き、二名のメイド服に襲い掛かる。飛び上がり、空中に退避する、瞬間。デンコさんの正拳が、狙い済ましたかのように、浮かび上がったままのシノブの水月を貫く。間髪入れず、直角。着地間際のキヒロの霞へ、強烈な肘。「ヴッ……!」。シノブは声を発しようとするが、呼吸が出来ない。

「ホラ何やってんだ! 早く走れ!」
デンコさんが此方を振り向かぬまま叫ぶ。反応するように、キヒロが無表情で立ち上がる。
「……チッ、効いてないのか」
再び、深く深呼吸。
カヨリさんは防御の円を描くように、僕の前に立った。

「勝手な、真似はさせないよ……此処で"M2"を処分するのが、私達の役目」
呼吸を整えながら、シノブが立ち上がる。
相手の意思を確認すると、デンコさんは静かに、腰を低く構えた。
シノブが問う。

「……それは空手かしら」

デンコさんは笑みを浮かべた。
「ははッ」
拳を固く握り直すと、酸素を吸い込む。
「ははははッ」
真赤に濡れる口紅が、笑みの形を留めたまま。

「……はははははははッ! 違うね! 喧嘩だよ!」

一直線に、踏み込んだ。


【M線上のアリア】 現在/69


会いたい、と思った。
あの瞬間、確かに僕は、そう思った。カサハラミクコに会いたい、と思った。
一瞬だけ見たカサハラミクコは、泣きそうな表情を浮かべた。何故? 恐らく、僕を見たから。だけれど彼女は何も言わずに真黒な車に乗ってしまったし、真黒な車は走り去ってしまった。何故、僕が今、命を狙われているのか、その理由は多分それほど重要では無い。
今、僕がするべき事は、唯一。

「チャンスがあれば何時でも走るのよ、蜜くん」

背を向けたまま、カヨリさんが呟く。防御に徹している。今、僕は守られているのだ。
今、僕が成すべき事は何だ? 一緒に戦う事? 否、違う。追いかけて、それを掴まえる事。
キヒロが身を翻し、デンコさんの上段蹴りを躱す。そのまま磨り抜けるように接近して来る。
「失策った! カヨリ!」
「はい!」
カヨリさんは素早く手首を返し、柄を捻る。そのまま力強く、突く。
直線の軌道。キヒロは横に避けた。しかし――カヨリさんは柄を持ち替えると、まるでバトンを操るように、薙刀を横方向に半回転させた。避け切れず、反射的にしゃがみ込む。
「蜜くんに近付いちゃ駄目よ!」
切先(木製ではあるが)をキヒロに向けると、カヨリさんはそれを振り下ろした。「……クッ」
ガインッ! 鈍い金属音。薙刀を受け止めたキヒロの右腕から、異音が響く。
「……何の音?」
同時に前方、回し蹴りを放った直後に、デンコさんも呟いた。

「コイツら、只者じゃないな、さっきからカラダが硬くなってきてる」

――瞬間、頬の血を拭いながら、シノブはスカートの裾を捲ると、太股に巻き付けていた箱状の物体に指を伸ばした。「仕方ないわね……」。奥深く指を入れると(まるでメジャーのように)細長いケーブルを取り出す。「……ンッ」。続けて擬音が響く。シュルルルル。

「姉さん、それは……!」キヒロが叫ぶ。
「フン……此処で"M2"を処分出来なければ、どちらにせよ私達は廃棄されるのよ」

疑問を抱く暇は無かった。シノブは右腕を高く掲げると、取り出した細いケーブルの先端を、そのまま自らの脊髄に突き刺した。「グッ……はアァッ!」唾液交じりの嗚咽。痙攣。シノブは数秒、小さく両脚を震わせると、まるで絶頂に達したかのような恍惚とした表情を浮かべた。

「……走れ! 逃げろ蜜!」

デンコさんは叫んだが、体勢を立て直したキヒロが此方を見ていた。状況が読めない。それは僕だけではなく、デンコさんとカヨリさんも同じだろう。何かが起ころうとしている。死ぬのか。死ぬのは厭だな。その前に、会いたい。誰に? ……カサハラミクコに。何故?

「フフフン……"M2"……処分しますわね」

目の前には恍惚とした表情のまま、まるで液体のように透き通ったカラダに変貌したシノブが立っていた。それは夕陽を浴びてオレンジ色に見える。歩く。その度に、表面に浮かんだ波紋が揺れる。「……冗談だろ」。デンコさんは拳を構えたまま、小さく声を発した。

「蜜、早く行けよ! 何してんだ!」
「蜜くん、早く行って」

二人の声が聞こえる。キヒロは身構えたまま、動かない。
シノブがデンコさんに近付き、まるで液体のような腕を、彼女の首元に伸ばす。
「完全なテロメラーゼを持たない私達が、この"SNAKE"に絶えられる活動限界は、せいぜい三分……窒息しそうな気分だわ。"M2"、あなたは良いわね、恵まれたカラダで。あなたは水や酸素だけじゃなく、他の生物のカラダさえも手懐けられるんでしょう?」
言いながら、デンコさんの首を絞める……否、デンコさんの首とシノブの指が同化している?
「ング……ッ!」デンコさんは、まるで水中に顔を押さえつけられたように、苦悶の表情を浮かべ始めた。溺れている? アスファルトの上で? シノブは指先で触れているだけだ。

「……は……離……せ」
「ホラ早く渡しなさい! あなたの中にある"D"を! 完全なテロメラーゼを!」
「蜜……お前……は、や、く、逃げ……ろ」
「デンコちゃん!」

カヨリさんが飛び掛る。
しかしキヒロが行く手を阻む。旋回する薙刀。キヒロには届かない。
跳躍し、切先に飛び乗る。「……軽い?」キヒロは結い上げていた長い髪を解いた。
「降参した方がいい……姉さんは本気だよ」

"D"を渡せ? 何を言っている。何を渡せば良い。
助けなければ、二人を。会わなければ、カサハラミクコに。まだ死ねない。生き延びるには。
何を知らない? 何が足りない? ――(記憶)(それは記憶)(お前自身が失くした記憶)

戻れ。戻れ。失われた僕の記憶よ!
救いたい人を、救え!
今すぐ救え!
救え!








ズンッ。








22――。
何かが全て繋がるような鈍痛。
刹那。全面。白色。
閃光。

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