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書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
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五日目:蜜編 現在 71話

動く。カラダが動く。心拍数はドンドン上がる。だけれど怖くは無い。
走る。全身に行き渡る神経網の全てを駆使して走る。追いかけるのだ、只管に。
速く。より速く。その速度は人間のそれか? 違うとしても構わない。もっと、もっと、速く。

人体兵器の延長線上――不死の人間――それが僕だ。
人間でいう22歳頃にテロメラーゼは成熟し、それ以後は縮小しない。老化しない。
通常の成人男性に比べて、僕の五感は鋭く、回復は早く、過度の栄養補給を必要としない。
金髪の少年……完全なるテロメラーゼ"D"を組み込まれたクレイ・ノートンのカラダは、そのように訓練・加工された。僕はそれを受け取った。僕はそれを知っていた。そして――。

受け取った瞬間から、今日まで、ずっと失くしていたんだ。


【M線上のアリア】 現在/71


直線。真黒な車のテイル・ランプが見えた。駿足を駆使、目標を前方に目視確認。予想通り、車はニコラ邸に向かっている。「ミクコ!」吼える。だが届かない。走る。車は信号を左へ。
青信号。止まる必要は無い。全速力。追い付け。呼吸は乱れない。走れる。走る。

目標まで四四メートル。手を伸ばしても届かない。二二メートル。助手席側の窓が開く。――タンッ。
足下に衝撃。……弾丸? 黒人男性が拳銃を構え、窓から身を乗り出している。ミクコの声が聞こえる。何かを叫んでいるが、風で聞き取れない。――タンッ・タンッ・タンッ。連続音。
右腕。右脚。胸部に痛み。しかし傷は弾丸を吐き出し、すぐに塞がる。ブレーキ音。
「……バケモノか!」
助手席側から、黒人男性が降りてくる。後部座席の窓から、ミクコが降りようとしている姿が見える。しかし別の男に取り押さえられて騒いでいる。「……ミクコを返せ、今すぐに」
再び車が走り出す。僕は走る。黒人男性が身構えているが、関係ない。「停止してろ」
黒人男性が拳銃を構える。残念だ。止まって見える。肺を一撃。走り抜ける。

路地に入るとニコラの家の巨大な門が見えた。冷静。……冷静だ、僕は。全ての糸が繋がっている感覚だ。地下の研究室にミクコを連れて行く気か。最終的な「アクセプト」? 否……。
門の前で車は止まり、素早くドアを開け、ミクコを降ろそうとしている。ミクコは抵抗している?
変化を嫌悪し、己のカラダの変化に戸惑い、ニコラへの接触を決断し、アクセプトを受け入れる覚悟を決め、僕と目が合った時にも、振り返ろうとはしなかった。
そのミクコが、今、抵抗している?

アクセプト……カバラの契約の日、クレイ・ノートンの魂を、僕は食った。
ミクコがアクセプトを受け入れるという事は、そういう事。
キリコに己の魂を食わせる覚悟。しかし……。

ミクコは変化を怖れたのか?
(変わってしまうモノなんて、全部嘘)
アクセプトは彼女にとって自殺行為だった。それを望んでいたのか?
否、違う。ならば何故、ミクコの髪型は、アバンギャルドなパーマになった?
肌が白化した理由は、今ならば解る。しかし髪型が変化した理由は、ヒトツだけ。

「……本当は受け入れたかったんだろ、ミクコ! 変化する事を!」

変わらない為に、変わる事を選ぼうとした。
ミクコは自ら、そのアバンギャルドな髪型を選んでいた。
ミクコは自ら、その変なパーマに己の意思表示を込めていたのだ。

只、迷っていた。自分が否定する自分を受け入れる事を、迷っていた。
生き続ける為に、変わってしまう自分を、自分から変えようと迷っていたんだろ。
不細工なパーマだ。少しも似合っていない。それでもミクコ。それは中々良いパーマだ。
君ごと消えてしまうより、ずっと良い。生きる事を諦めるな。
アクセプトなど、無意味だ。

加速。運転手席から降りた黒人男性が拳銃を構える。タン・タン・タン。連続音三発。避けろ。見えるはずだ。直進する弾丸を回避して、泣き叫ぶミコクの手を……。あと数m。あと数cm。あと数mm。……泣いてないで、しっかり手を伸ばせ、ミクコ!

ガァンッ!!!!!

鼓膜に衝撃。別方向。至近距離からの射撃。
激痛。
吹き飛ぶ。
ミクコの手が離れて往く。
嗚呼、畜生、すぐ其処に在ったのに。
……頭部が吹き飛んだか? 流石に死ぬか? 此処まで来たのに?




「蜜クン……ッ!!!!!!!!」




絶望。絶叫に近い。ミクコの声。
久し振りに聞いた気がするな、毎日のように聞いていたのに。
……ミクコの声? ああ、そうか、僕はミクコを取り返さなければ。

身を翻し、着地。
反転。
ドロリと落ちるような鮮血。
否、すぐに止まる。

既に黒服の男達が僕を取り囲んでいる。
素早い。
銃口は十三方向から。

タンタンタンタンタンタンタンタンタンタンタンタンタン。

一斉射撃。
避けきれるか。無理か。諦めるな。
瞬間、僕のカラダが、勝手に空中に放り出された。

「……What!?」

見上げた黒人男性が叫ぶ。
空を飛んでいる。背後から何者かに持ち上げられている。
首を動かす。「……ヴィンセント!」
真白なスーツに身を包んだ悪魔。羊のような角。背中には巨大な蝶の羽。

「……全てを思い出したようだな?」
「……ああ、全てをな」
「ククク……」

ヴィンセントは得意の口調で笑うと、巨大な羽を翻した。
地上から黒服達が、上空に向かって発砲している。
僕等には届かない。深呼吸。「行くぞ、ミツ」

落下。
潜行するように、一気に落下。
加速。加速。加速。もう一度、手を伸ばせ、ミクコ!

「……蜜クン!!」

ミクコが手の伸ばす姿が、見えた。

「最期のチャンスだ! 磨り抜けながら、掻っ攫え!」

悪魔は叫ぶ。

「はははははははははははははは!!!!!!!!」

僕は笑う。
それは良い台詞だ、悪魔。
僕が救ってみせる、今ならば。
繋がれ! 繋がれ! 繋がってくれ!

「ミクコ――!!!! 手を伸ばせ――ッ!!!!」

矢のような落下。
僕とミクコの手と手が重なる。
掌が固く繋がり、僕は素早く、握り締める。
そのまま弧を描くように、上昇。

上昇。

上昇。


「……ありがと」


遠くから何発もの銃声が響き続けていた。
だけれど僕等には、もうまるで関係の無い出来事のようだった。
僕はミクコの掌を、只、力強く握り締めていた。
ミクコの掌は冷たく、細く、不細工なパーマが風に揺れていた。

オレンジ色の空は、もう本日を終えようとしていた。

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