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五日目:蜜編 現在 75話

浅い眠りの中で考えた。
大切な人達に、伝える為に歌うのだとミクコは言ったけれど、何を伝える気なのだろう。想い。願い。祈り。其れ等を歌声に込め、誰かに伝えるとして、本当に今救われるべきなのは彼女自身だ。皆にお別れする為のライブでは無いと言ったけれど、実際は皆にお別れする為のライブだ。何故なら、現に彼女を救う明確な手段が無い。否、実際には在る。但し、まだミクコは、それを知らない。知らないからこそ、皆にお別れする為のライブにしなければならない。それを何とか否定しようとモガイテいるのが、今の彼女だ。

僕の中に存在する"D"を使えば、今すぐミクコは助かるだろう。それを彼女は知らない。覚悟ならば出来ている。何の覚悟? "D"を渡す覚悟。命を失う覚悟。それは彼女が望んだ事か? 望みはしないだろう。だからこそ伝えない。だからこそミクコは何も知らない。何も知らないからこそ、今の彼女に救われる手段は無く、明日のライブは皆にお別れする為の場だ。

「変わる事」に対して、本当は今もミクコは悩んでいると思う。
ミクコは二日前にニコラと接触しているはずだが、その際に何を言われたのだろう。少なくともミクコは自殺願望を抱えてニコラに会いに行ったはずだが、ニコラが提示した方法は彼女が望んだそれでは無かったのかもしれない。何故ならミクコは固い決意の中で尚、迷っていた。だからこそ僕に手を伸ばした。アクセプトとは別の救いを求めた。

真白な肌が、隣で寝息を立てる。眠るという事は、やがて起きるという事。彼女が生きているという事。守れるのか、僕に。少なくとも36日間。カバラの契約が、僕の全てを食いに来るまで。疑問は在る。だが訊いてはいけない。僕の中の"D"を彼女に悟られてはいけない。ニコラが望んでいるアクセプトと、ミクコが望んでいたアクセプトと、僕が予想しているアクセプトは、本当に同じか? キリコを取り戻す為の容器になる事を、ミクコは嫌がった。自分の魂が跡形も無くキリコに食われて、消える事を怖れた。……本当にそうか?

「クシュッ!」

不意に隣から、小さなクシャミ。ミクコが寝返りを打ちながら、寝惚けたように何かを呟く。よく聞き取れない。僕は彼女の手を握り、その手を自分の胸の上に置いた。目を閉じ、息を吸う。ミクコ、安心しろよ。君は死なない。僕の中に"D"が在るからな。目が覚めたら、ライブだ。


【M線上のアリア】 現在/75


世界が真白に包まれて、それが全てを取り戻した僕だと、僕は知った。
失ったモノを取り戻すという事は、失わなかったモノを捨て去るという事。何故なら僕には、僕の命以上の命なんて持てない。忘れてしまう、という訳では無い。身の程を知るという意味でもあるし、常に決断を迫られるという意味でもあるだろう。ミクコとキリコ。ミツとミツ。そして、ニコラは年老いた。最期には誰が存在する?

――ああ、そういう事か。此処は何処だ。夢か。今、視界に入った真実を、目が覚めた後も忘れなければ良い。ミクコが言ったな。アイロンが二台ある。古いのと、新しいの。変わらないモノと、変わりゆくモノ。どちらも同じ。どちらを選ぶべきか。ミクコは戻っていく。真白に。汚れ無き状態に。(記憶を全て戻すのに、汚れ無き?)あの日、ミクコは何と言った?

(体中が白く染まって、髪の毛も無くなって、目も見えなくなるわ。)
(それから声も出せなくなって、もうじき歌も唄えなくなるわ。)
(そうして最後は、私の体も無くなっちゃうのよ。)

何故? アクセプトがキリコの魂をミクコに移す為の行為なら、ミクコの体が無くなってはいけない。彼女の記憶が全て戻る時――すなわち初期状態に戻る時――ミクコが消えるという言葉は、彼女がアクセプトを受け入れるという意味では無いのか。暗喩。疑問。消えるのは魂? 体? 読み間違えた? 何処で?

(私からキリコを奪えるかね?)

成程、其処か。予感は確信に変化し、一本のイトが見える。しかし此処は夢だ。 今、視界に入った真実を、目が覚めた後も忘れなければ良い。しかし忘れるかもしれない。もしも忘れてしまっても大丈夫。今更、忘れてしまう事を怖れる必要は無い。何度も忘れた。それでも取り戻す方法を、僕は覚えた。おい、ヴィンセント、聴こえるか。今、此処にヒトツの真実が在る。僕以外、まだ誰も気付いていない真実だ。だけれど此処は夢だ。記憶を食う悪魔よ、どう思う? 夢ほど簡単に忘れてしまうモノは存在しないよな。それでも忘れなかったモノが、やがて現実になる。ニコラは僕等に罠を仕掛けた。四九年前から脈々と受け継がれた罠だ。

夢から覚めた世界は、素晴らしいと思うか?
ミクコは目覚めたらライブに向かうだろうけれど、僕とニコラの目は覚めないのさ。
だから殴りに行けなければならない。欠損状態を受け入れよ。これはニコラの言葉だよ。
アクセプトの意味が「受容」ならば、夢から覚めても、現実は何も変わっちゃいないのさ。

受け入れようとしているのは、ニコラなんだから。

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