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六日目:卵茶編 07話

みく子とゆっくりと歩きながら、教授の最近の様子だとか、後輩連中の話なんかをつらつらとする。
程なく、みどり食堂に着く。
学生の味方。安くて量が多い。味はそこそこ。学生の味方というよりも、貧乏学生の味方、だ。俺も世話になった。

………安くあげられた気もする。
いやまあ、カフェでケーキだのスパゲッティだのちょこっと食った程度じゃ腹に溜まらんので、正解といえば正解だ。

「さ、ど?んと頼んでね!今日は俺の奢りだ?!!」言葉の後半はおっさん声だ。
「何その声」冷静に突っ込む。
「良いじゃ無い。なんかこんなイメージじゃなぁい?」
「『奢りだ?』って?」
「『奢りだ?』って。まま、とにかく何にする?私も昼前にフィッシュバーガー食べただけなんだ!お腹減った?。」
「つうか、相変わらず金無いんじゃ無いの?」誘われた時から思っていた疑問をば。
ギクリとした表情をしてから、えへへと笑う。
「い?のぅ。大丈夫、近々入る予定はありますから!!」
「ん???…ま、良いけど。」

とりあえず、その辺の追及は置いといて、注文をする。
店内は、時間はまだ早いものの半分くらい席が埋まっていて、おっちゃんもおばちゃんも忙しそうだ。
おばちゃんが近寄ったタイミングで注文をする。俺はミックス定食。みく子は焼き鮭定食、ご飯は小盛り。

「…んで?みく子さんの方は?最近色々あったみたいだけども。」
料理が来るまで時間がありそうだし、本題…というか何というか…を切り出す。
「………ん?。」
目線をあちこちやるみく子。話しづらいのか、それともどこから話したら良いのか分からない、ってな顔だ。
「ん?????…」
「ど?した。」
あんまり考え込むので、聞く。
「ん?うん、え?とね。ん?。」
まだ少し必要なようだ。だがすぐに、
「…とりあえずね。」
「うん?」
「色んな人に、心配かけちゃったなぁって。」
「ふんふん」
「でもね。心配してくれた人とか、色んな人に会えたの。側に居た人にも。久しぶりな人にも。初めての人にも。」
「うん」みく子は、目線をくるくると動かしながらも、話すときには俺の目を見る。俺もしっかりと目を見つめて、相づちを打つ。
真剣に話を聞くこと。それだけが相談を聞く側に必要なことだ。答えが出るかなんて関係無い。

明るい表情で話すみく子。以前よりもむしろ明るくなっただろうか。

「色んな言葉を貰ったの」嬉しそうに、明るく言うみく子。
「変わって良かったのかもって思えたの」「理由は変わらなきゃいけないからだったけど」「心配してくれたことが嬉しかったの」「でもホントはみんな心配なんてさせたくなかったんだ」「今は納得してるよ」「今は後悔してないよ」「変わって良かったのかもって、思ってるんだよ?」

明るい表情のまま続けるみく子。
なんだろう、この明るさは。目が、いや、目の奥が痛い。
みく子の明るさが、白さが、文字通り網膜に焼き付けられているのだろうか?…痛みを伴って。

みく子から貰ったメール。
『もう大丈夫。色々あったけど、ちゃんと全部解決しました!』
深くは聞こうと思わなかった。携帯の奥に踏み込もうとは思わなかった。





きっとあの言葉は、嘘だ。





「ねぇ、卵茶くん?」
「変わってしまうことはいけないことなのかな?」

…ズキッ…

………
再会して初めて、名前を呼ばれた。

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