スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

一日目:蜜編 過去 06話

鍵を差し込んで、扉を開いた。
みく子の部屋は、小さなアパートの二階の隅だった。
家具は少なく、雑誌の一冊も散らばってなく、ほとんど生活感が漂っていなかった。
きっと普段は恋人の家に入り浸っているのだろう、なんて勝手な妄想を、僕は働かせた。


【M線上のアリア】 過去/06


「シャワー、先に浴びちゃって、タオル出しておくから」

そう言うと、みく子は浴室の明かりを点けた。
薄暗い部屋に、浴室から洩れるオレンジ色の光が、伸びている。
僕は言われるままで浴室に向かい、水で重たくなったジーパンを脱ぎ、靴下を脱いだ。

置いた瞬間ベチャリと音がして、床の上には水が流れた。
零れた雨水だ。雨水は室内に入った今も雨水で、何処にも向かう事は無かった。
キュッキュッキュ。

シャワーの蛇口をひねると、温かい湯が流れ始める。
この瞬間、僕が何処に向かって流されているのかはよく解らないけれど、
温かい湯は温かく、それまでの疑問を全て、理由も無く洗い流してくれるような気はした。

「はい、スープ、飲んで」

浴室から出ると、バスタオルに身を包んだ僕に、みく子はスープを出した。
インスタントのスープは湯気を立て、緩やかに波を立てていた。
「じゃあね」と言い残し、みく子は浴室の扉を閉めた。

「じゃあね」も何も、ここはみく子の家だし、僕はバスタオル一枚だ。
よく考えるに(よく考えなくとも)バスタオル一枚という姿も、この場合いかがなものか。
まぁ、僕が着ていた服は、まさに今、全自動洗濯機の中で回転しているはずなのだけれど。

何となく座るのも申し訳ない気がして、僕は立ったままスープに口を付けた。
温かいな、これはコンソメ・スープだろうか。
あんまり考えた事は無かったけど、そういやコンソメって変な言葉の響きだよな。

静かだ。
窓の外から雨音が聞こえる。
雷は止んだようだ。
電気を付けていないので、部屋は暗いままだ。
キュッキュッキュ。

みく子が蛇口をひねった音。
が、聞こえる。

ザーザーザー。
これは雨音か? それともシャワーの音か?
ほんの扉一枚向こう側で、みく子はシャワーを浴びている。
液体が上から下に流れるように、僕が飲み込んだスープが喉を経て胃に落ちるように、
みく子の上から降り注がれる温かい液体は、オレンジ色の髪の毛を経て、細い首筋を通り、
鎖骨で一度止まり、そこから分散し、一方は美しく伸びる腕から、指先の先の先の先へと、
もう一方は穏やかに膨らむ乳房を登り、その中心を経て、深いくぼみへと落ちていくだろう。
それでもまだ落ちきらず、ひたすらに落下点を探している。

僕はスープに口を付けた。
幸運な事に、それはまだまだ温かかった。
みく子がシャワーを止める音が聞こえて、僕はその残りを飲み込んだ。

「体、冷えてない?」

みく子の声が聞こえて、僕は振り返った。
浴室の扉を開けて出てきたみく子は、下着姿にTシャツ一枚だった。
全自動洗濯機が回転する音だけが、部屋中に響いている。
ゴゥンゴゥンゴゥン。

雨音は、もうあまり気にならなかった。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

≪一日目:蜜編 過去 05話 | TOP | 一日目:蜜編 過去 07話≫


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。