スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

六日目:卵茶編 14話

初めて聴いたみく子の歌声は、透明だった。

例えるなら、小川のせせらぎ。稲穂を揺らす秋の風。
時に激しく、時に優しく。時に冷たく、時に暖かく。時に雄大に、時に矮小に。
せせらぎの音に人は安心を覚え、濁流に不安を覚える。風は人を凍えさせ、同時に寄り添わせる。メダカが住み、タンポポの綿毛を飛ばし、カニが住み、凪いだ水面に波を立て、カエルが住み…




……
………
違う。
全然違う。
全くもって、違う。

みく子の声は“人の”声だ。
悲しみを、喜びを、苦しみを、願いを。歌う。謳う。
その透明な歌に、みんなが誰かを投影し、自分を投影する。

一曲、二曲。

少し離れて見ていると分かるが、歌声に引かれてまた少し人が集まってきている。
その中に見知った顔を見つけ、近寄る。

「来やがったな、食いしん坊め。」

…アリエスに声をかける。
見とれるように人混みの最後列から眺めていたアリエスは、迷惑そうな顔をして
「とりあえず、少し静かにしとけ。」
相変わらず冷たい物言い。
「そんな!先輩に向かってなんて言い種!?」
「いいから。」
「………はい。」

アリエスは、みく子と共にゼミの後輩だ。
仲良くなれば先輩後輩関係なくタメ語。比較的、色々と高性能。冷静なツッコミとシカトのコンボが、ボケ属性には堪らない。そんなナイスガイ。
…まだ半袖かよ。見てて寒いよ。

2曲目が終わり、みく子の側でハーフっぽい男が話しかけている。きっとアレはロシュくん。

「よう。」
「おう。久しぶり。」
改めてアリエスに声をかける。続けて俺から、
「最近どうよ?…ってな話する場じゃねぇわな。」
「まぁね。」
「ん?…とりあえず、そうだな。別に世間話する場面じゃねぇし、俺向こうでまったり聞くし。帰る前には一度声かけるわ。」
「おう。…つうか、なんで居んの?」
「ヒ・ミ・ツ☆」
「………うん、で?」
ナイス受け流し。笑顔が痛いっす。
「…いやまあ、気にすんな。気になるなら後で言うし。」

『幼なじみ』

みく子が3曲目のタイトルを、よく通る声で言った。
アリエスもそちらを向き、聞く体制になったので、俺はそこを離れる。
そして、離れ際に
「…なあ、このライブ…」
アリエスが怪訝そうに振り向く。
「…このライブ、しっかり聞けよな。みく子にとって、多分すげぇ特別だからさ。」
怪訝そうな顔のまま、当然だとばかりに頷き、前を向く。

俺は元の位置に戻り、座り込む。
…なに言ってんだかな、俺は。また頭ん中で空回りしてること、バレてっかな。
俺は苦笑して、みく子の方を眺める。

オレンジ色の街灯の下で歌うみく子。
遠目にも汗が見える。





この寒い中で?

目を見開く。

“遠目にも汗が見える”

楽しそうに、嬉しそうに歌うみく子。

…フラッシュバック。
走った後のみく子の荒い呼吸。

…フラッシュバック。
ギターを抱えて座り込んだみく子。

…フラッシュバック。
笑顔と、震える声。




俺は、目を背ける。

何故か、自分の呼吸が荒いことに気付く。

心臓の音がやけに耳に響く。

うるさい。
みく子の歌が聞こえないじゃ無いか。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

≪六日目:ロシュ編 31話 | TOP | 六日目:アリエス編 12話≫


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。