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書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
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六日目:卵茶編 16話

ギターは最後まで、つま弾くだけだった。
確かめるように、一音ずつ。ほぼアカペラだ。
他の曲と同じように表すなら…メールの先にしか居ない、でもそこにいつも居てくれる、そんな“誰かさん”への感謝を歌った曲だった。

“誰かさん”への曲。

俺じゃ、無いはず。

………でも、と思ってしまう。
みく子の歌は、まるで語りかけるようで。一人一人がきっとそう感じているんだろうけど、まるで俺に向けて、俺のために歌っているようで。
とはいえ、自惚れるな、とは思う。俺のことだなんて一言も言ってないし、感謝されるようなこともしていない。
………でもやっぱり、勘違いであったとしても、たまにはそんな自惚れも良いのかも、と思えた。

…届いたよ、みく子。
…泣きたいくらいに、届いたよ。

「次はデュエットでいきまっす♪」

みく子は、あっさりと次の曲へ行った。

うん、それで良い。
今ごろになって気付いたけど、なんだか一曲一曲が誰かへのメッセージのようになっているらしい。
関わってくれた人へのみく子なりの感謝の形なんだろう。

俺はもう充分だ。
ここに居るはずじゃ無かった、居るべき人間じゃない…という気持ちが少し薄れたよ。
少なくとも、今の歌が聞けた。俺が今日みく子と会ったことで今の歌が生まれたのなら、なおさらだ。



…ん?おや。
みく子と一緒に歌いだしたのは、みく子にギターを貸したあの女の子だ。
この曲もまた、あの子ために歌うのだろう。

始まりは、ハモりではなく、綺麗なユニゾン。
みく子は笑顔。
そして女の子も同じような笑顔だ。

二人の姿が重なる。

…なんだろう。
飯屋での、みく子に志津さんが重なったのと同じ感覚。
なんなんだろう。

?決心はそれぞれのストーリーの中♪
ヴーヴーヴー

歌のフレーズに、右の尻ポケからのバイブ音が重なる。
取り出して見てみると…

「…くわぁ、めんどくせ。会社からかよ。」
小声で呟く。
しかしこんな時間に?

出たく無い。
みく子の歌を聴いていたい。

出たく無い。
出たく無いが…

日常からの逃避の理由に、みく子を使うわけにも、いかんだろう。



急いで広場の暗がりの方へ…みく子の裏側、人の居ない、明かりの少ない、広場のもう半分だ。
それでもなお端の方に寄って、電話を取る。

「…もしもし?」
「あ、良かったぁ、出てくれて?」
社長の奥さんだ。

話を聞くと、クレームが出て明日の朝一で対応しなきゃならんので、明日の段取りが変わるとのこと。しかもそのせいで材料が足らなくなるので、明日予定していた作業は明後日に…なとなど。
(うわ?、明後日に回すったってそれも日にち無かろうが)
みく子のライブに早く戻りたい焦りもあるが、五分近く話して、やっと片が付く。

電話を切って振り返る。まだみく子は歌っている。
良かった、こんなんで終わってたら今晩眠れなくなりそうだ。

ゆっくりと近付いて行くと、そこで曲が終わり、誰かがみく子に何かの袋を渡していた。
受け取り。
笑顔。

改めて、思う。

街灯に照らされて。
以前のようなオレンジ色の髪、肌もオレンジ色。笑顔。
友人たち。
変化など無かったかのような。

ここはまるで『過去』だ。
一人一人に歌を贈りライブを終え、オレンジ色の街灯を離れ、明るい笑顔のままに立ち去るみく子を想像する。
…切ない気分になって、そのまま腰を降ろす。
暗がりの中で、みく子と同じ植え込みの反対側、四、五メートル離れて、みく子に背を向けて。

「次で、最後の曲です。」

………最後が、始まるらしい。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
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