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二日目:蜜編 現在 15話

マンションの入口に立つと、簡単に自動ドアが開いた。一歩、踏み出す。随分セキュリティーの甘いマンションだと思う人がいるかもしれないが、とんでも無い。このマンションほどセキュリティーの厳重なマンションも、そうそう世の中に無いのではないかと僕は思っている。

二歩、踏み込むと「こんばんは」の声。女性の声。高級ホテルのロビーようなエントランス。否、高級ホテルのロビーだ、と言って差し支えない。フロントには従業員らしき女性が立っているが、もちろん従業員ではない。彼女達が警備員を兼ねている事を、僕は知っている。それにしても容姿端麗なメイドのような警備員が、よくぞ存在したものだ。一体どんな募集広告を見て応募し、どんな面接を経て採用されたのかを知りたい。僕はフロントに向かう。

「エリカに会いたい。蜜が来たと伝えてくれ」


【M線上のアリア】 現在/15


従業員兼警備員である彼女は、笑顔で僕の発言を聞くと、一瞬、目を大きくして僕を見たまま固まった。それから慌てるように「気付かずに失礼しました。暫しお待ちを」と言ったが、僕に気付かないと何が失礼なのか解らない。女性は内線らしき受話器を耳に当てると、何度か「ですから蜜様が……」と繰り返した。それにしても相変わらず豪華なマンションだ。このロビーだけで僕とみく子の部屋が何個入るか計算しようとしたが、落ち込むだけなので止めた。

「……蜜様。エリカ様の了解が取れました。エレベーターでお上がりください」

何故か固唾を飲み込むように言う。まるで大事件の幕開けのようだ。確かに一年振りではあるけれど、エリカの家でエリカと会う前には大抵、このような儀式を通過しなければならなかったので、その点では馴れている。だが、この緊張感は異質だ。そもそも、いきなり会いに来る時間でもない。「どうもありがとう」フロントの女性に言い残すと、彼女は深々と頭を下げた。

エレベータに近付くと、屈強な黒人男性が一人、現れる。馴れたものだ。
男は僕を見ると、流暢な日本語で「お久し振りです」と頭を下げる。名前は何と言ったかな。「すみません、決まりなので」と言うと、簡単なボディー・チェックを受ける。ジーパンのポケットに触れた時に、手が止まる。「あ、ごめん、ハーモニカ」僕は笑いながらポケットに手を入れると、ヴィンセントから受け取った銀色のハーモニカを取り出した。「お預かりしても……?」

「……いや、これは持っていたいな、お守りみたいなモンだから」
「……OK」

男は苦笑混じりに頷くと、エレベーターのボタンを押した。数秒後、高速エレベーターが降りてくる。間抜けな音を立て、扉が開く。「ごめんね、急に押しかけちゃって」僕は男を見上げながら言う。男は口元で微笑みながら「No problem」と言ったが、問題が山積みだから此処に来た訳で、残念ながらノー・プロブレムでは無い。だけれど、僕も笑った。

エレベーターの扉が閉まる。最上階のボタンを押す。上昇。
音も無い。自分が上方へと移動している感覚も無いままに、僕は上方へと移動している。
ヴィンセント、僕が行くべき場所は、本当に此処だったのか? 何らかの記憶の代償として。

気になっている事がある。
僕はエリカとの思い出を、鮮明に思い出す事が出来る。
断片的に。

だけれどエリカの顔が思い出せない。
エリカの笑い声は思い出せるけれど、その瞬間、エリカがどんな顔で笑っていたのか。
僕は今、まったく思い出す事が出来ないんだ。

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