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二日目:蜜編 現在 21話

商店街の信号機付近に落雷したらしい。
停電。しかし突発的な影響は少ない。深夜。午前一時。
人の気配のほとんど無い道路では大した騒ぎにはならず、豪雨だけが、現状を騒ぎ立てる。それでも騒ぎにはならない。豪雨は騒ぎ立てる為だけに騒ぎ立てているからだ。音は無い。否、音は音によって掻き消されている。

雑音が僕らの苦悩を、全て掻き消してくれたら良かったのに。
雷雨が僕らの原罪を、全て跡形も無く洗い流してくれるなら良かったのに。
「みく子……?」
通話は既に切れていて、もう何も聞く事が出来なかった。
かけ直しても繋がらず、不細工なコール音だけが、虚しく響いている。
僕は地面に落とした傘を拾い上げると、それを差す事もせず、上空を見上げた。
何も見えない。月も見えない。

「ククククク……」

「……知っていたのか?」僕はゆっくりと問う。
背後。睨むように振り返る。レイン・コートに身を包んだ悪魔。ヴィンセント。

「俺は何も知らないさ」
「嘘を言うな」
「本当だ、面白いくらいにな」
「何が面白い」
「言ったろ? 悪魔は俺だけでは無いと」


【M線上のアリア】 現在/21


僕はヴィンセントを気に留めず、歩き始めた。ヴィンセントは退屈そうに背後から付いてくる。何も話す事は無い。誰かと話したい気分ではない。それが悪魔ならば尚更。「何処へ行く?」
「関係ない」
「お前の家は向こうだぞ」
「付いて来るな」
商店街の停電は続いている。暗闇。それでもオレンジ色の街灯は明るい。路地を曲がる。

どうして、みく子が悪魔の存在を知っている?
二日間、立て続けに非現実的な現実に遭遇し、しかも受け入れなければならなかった。
バイオロイド。悪魔。契約。対価。漫画か映画の中で羅列されるような、夢想的な単語。

「何なんだよ、お前達は」
「……呼んだか?」
「何なんだよ、悪魔って、何でみく子が、お前を知ってるんだ」
「俺を知っている訳ではなかろう。俺はお前の恋人の事は、知らないよ、いや……」
「何だよ」
「知らないと言えば嘘になる、だが、俺と契約した訳ではない」

"あの日の悪魔"。
あの瞬間、みく子は確かに、そう言った。
みく子は悪魔に会った事がある。そう考えた方が自然だ。仮にそうだとしたら、みく子は何時から、何年前から、悪魔の存在を知っていた? そして確実に解る事は、今のみく子は、その悪魔に会っていない。仮に契約を結んだとして、今は結んでいない。……契約破棄?

突如、現れ始めたアルビノ。白化。
それは本当に、数日前に突如現れたモノなのだろうか。
本当はずっと前から、何年も前から、みく子はそうだったのでは無いか?

「ヴィンセント、もし仮に僕が契約破棄を望んだら、僕はどうなる?」
「……契約破棄?」
「お前が僕の記憶を食う事を拒否するのさ、そうしたら僕はどうなる?」
「どうなる、とは?」

瞬間、僕は次の質問をするのを躊躇った。
躊躇ったが、質問しなければ、次の疑問を解決する事が出来なかった。
一瞬、目を瞑る。「……例えば体が白くなる、とか、そういう事はあるか?」

「それは無い。契約破棄の罪として、何らかの罰を課す事は無い。何故なら繰り返すが、記憶と代償は等価値だ。我々は契約において同等の関係だ。罰として体が白くなる事は無い。我々の契約者の体が白くなるならば、契約者が自ら悪魔に望んだ結果か、望む前から元々そのように生まれてきたか、そのどちらかだ」

契約破棄の結果、体が白くなる訳では無い。
みく子の白化が、自ら望んだ結果? それは有り得ない話だと思う。
みく子は自分を失敗したバイオロイドだと言った。その一因としての、白化なのだと思う。
それが現れたのは数日前、突如。

みく子は、望まずとも元々そのように生まれてきた。
失敗したバイオロイドとして? 解らない。だが、恐らくはそうだ。
僕が出会った頃のみく子は白かったか? 確かに色白ではあったが、今ほどでは無かった。
……白化を抑えていた? どうやって?

「……記憶の対価として得た代償が、効果を失くす事は有り得るか?」
「どういう意味だ?」
「……例えば失った記憶が戻るとか」
「有り得ない。我々は記憶を完全に食う。それを思い出す事は無い。体験しただろ?」
「……確かに思い出せない。だが、記憶を取り戻した気分にはなった」
「それは羊、お前の勝手だ、取り戻した気分に浸るのはな」

ヴィンセントはレイン・コートのポケットに手を入れて、緩慢に笑った。
それから、わざと思い出したフリでもするように「……ああ、だが、しかし」と付け加えた。

「第三者の手によって記憶を取り戻すなら、それは例外だ」
「……どういう意味だ?」
「例えば俺が食った、羊、お前の記憶をだよ。それを別の羊が取り戻そうとする。何の為に? それは知らぬ。だが、悪魔が食った記憶を、まったく元の状態に戻す方法は一つだ。別の羊が悪魔と契約して、自分の記憶の代償として、お前の記憶を取り戻す。たったそれだけだ」
「……そうすると、どうなる?」
「お前の記憶はまったく元の状態に戻るよ。非常に喜ばしい事だ。だが、そうなった場合、俺とお前の元々の契約はどうなる? お前は俺から得た代償を完全に失う。それが契約破棄だ」
「……何処かで誰かの記憶は食われているのに?」
「当然」

悪魔らしい方法だ。結局、悪魔にとって人間の記憶など、単なる食い物にしか過ぎない。
僕は仮定する。みく子の白化は、僕と出逢う前から、もう何年も前から、もしかしたら生まれた時から、とっくに始まっていた。「あの日の悪魔に会いたい」みく子が呟いた核心的な言葉。

僕は仮定する。第三者がいる。
悪魔と契約し、みく子を深く知っている、別の誰かがいる。
もしも別の誰かが、みく子の記憶を取り戻そうとしているのだとしたら?
何処にいる? 解らない。僕は何処へ向かうべきだ? 解らない。だけれど、とにかく。
僕は未だ停電の復旧しない商店街を、歩き続けた。


七度閃光。


遠くで、雷鳴。

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