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二日目:ゆん編 05話

「ゆん…ちゃ…」

いつだっただろう。
静かな真夜中に消え入ってしまいそうな声で
みく子が電話を掛けて来たのはいつだっただろうか。
そんなに前じゃないしそんなに最近でもない。
はっきり覚えていない。
ただあの快活な凛としたあの声が涙を零すのが
大きな衝撃だったことだけが記憶に残っている。
彼女が私に弱音を言ったのは後にも先にもこのときだけだ。


電話口でみく子は多くを語らなかった。
ひたすら泣いていた。
夜の闇と同じように静かに深く泣いていた。
そして発したただ一つのことは

「いつか歌えなくなるかも知れない」

彼女が路上で歌っているのは知っていたし
一度だけ、たった一度だけ聞きに行ったことがある。
歌うみく子は本当に素晴らしかった。
生きることに喜び、たくましく奏でる彼女に
聴衆は魅了され、辺り一帯がきらきらとして見えた。
一段ときらきらしているみく子に嫉妬した。
愛されているみく子に、愛することを知っているみく子に
嫉妬した私自身はその場で一人醜かった。


それ以来私がライブに足を向けることはなかったけれど
歌がみく子にとってどんなに大切なものかは感じていた。
その彼女が唯一私にもらすほど不安に思ったことは
自らの歌声を失うことだった。


大きな不安の前に私はあまりにも力不足で
歌えなくなったってみく子はみく子だよ、
そう励ますことしか出来なかったように思う。
いつもはきらきらしているはずのみく子の
予想もしなかった泣き言に私は少し安心した。
やはり私は醜かった。


みく子が落ち着いて電話を終えてから
私たちは二度とその話に触れなかった。
私はそれを一過性の漠然とした不安だと思っていた。


しかし彼女の中ではずっと続いていたのだ。
終わっていなかった。
みく子は再び繰り返す。
ふたつの食べかけのラーメンを挟んだ向こう側で彼女は言う。

「さよならのライブをしようと思うの」

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