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書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
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二日目:蜜編 現在 23話

通帳を開いたまま、四秒間は停止していたと思う。
思考と空気と心臓が同基準で停止した後で、現実を正確に認識し始める。認識する為に必要な時間が、四秒。それでも認識は追い付かず、疑問を伴ったままの言語が口から零れ落ちる。「何で?」呼びかけた訳でもないのに、ヴィンセントが無言で通帳を覗き込む。笑う。
預金通帳に記載された、僕らの残額。

10,884,591。


【M線上のアリア】 現在/23


一千万円。クイズ番組の賞金で耳にした事はあるが、実物を見た事は無い。
僕とみく子の通帳に記載されている残額。そんな金額を稼いだ覚えは無い。正直、この通帳の中身を見るのは初めてだった。みく子が全て管理して、袋を開ける事を許さなかったから。

最初のページを見ると九百万円近い金額が、この通帳に移されている。それを振り込んだのは、みく子自身。そこからは毎月、僕の給料と、みく子の給料が振り込まれる。労働の証だ。それから、それとは別に、毎月四四万円、誰かが振り込んでいる。計算上、僕とみく子が稼いだ金額以上を、みく子は引き出していない。四四万円には手を付けない状態にしている。

恐らく意図的に、みく子はそうしている。僕が仕事を辞めた(らしい)一年前から今月まで、収入はみく子の花屋のバイト代のみだったが、その際も足りない分は、それまでに稼いだ僕らの拙い預金を計算して引き出している。四四万円に手を付けるような引き出し方はしていない。

四四万円は毎月、何処から振り込まれている?
振り込み主を見る。通帳には「JNL」と記載されている。見覚えは無い。
個人の名前か。それとも企業の名称か。みく子は花屋以外にも、何か別の仕事をしていた?
「それは無い」思わず口に出す。第一、時間が無い。みく子は大学に通い、花屋で働き、路上で唄った。それ以外の時間は? みく子は我が家に帰ると、よくパソコンを触っていた。ネットで仕事を? いや、その線も無いだろう。パソコンで何をしていたかと言えば、ネットで仲良くなった人達と、文字で会話をしていたくらいだ。四四万円を稼ぐ事はないだろう。

ライブチャット系? まさか。考えてもみろ。通帳最初のページには、みく子自身が九百万円を移動している。それは以前から四四万円の支払いが続いていた事を意味する。昨日今日、突然振り込まれるようになった金額では無い。もしも四四万円が毎月、尽きる事なく振り込まれていたのだとしたら、それは何年前から?

生まれた時から。

僕とみく子が稼いだ分を細かく貯金し、僕とみく子が出逢う前から、みく子が自分で貯金し続けていたのだとしたら、まったく手を付けずに貯まった四四万円。それは生まれた時から。
「失敗したバイオロイド」
独り言。誰がみく子を生んだ? 四四万円? どういう意味だ? 冗談じゃない。みく子は悪魔に何を望んだ? 恐らく、きっと、自分の体を普通に戻す事。それは予想に過ぎない。悪魔に会っても、契約はしなかったかもしれない。それでもみく子は、現在、悪魔に会いたがっている。それは何故だ? 一体、誰がみく子を、そんな体で生んだ? ……JNL。

(ノートン教授にね、会うの……どんな手段を使ってもよ)

核心めいた、一つの単語が、僕の頭に浮かんでしまった。嗚呼、呟きたくは無い。呟きたくは無いが、それは零してしまわないと一秒後にも破裂してしまうような、悲しすぎる確信で、僕はそれを零す為に、零してしまった。……James Norton Laboratory。

「……ジェームス・ノートン・研究所」

黒色のビニール袋に描かれた不細工なネズミが、僕を見て笑っていた。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
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