ロシュ編
蜜編
サク編
蓮火編
アリエス編
黒編
しのめん編
奏湖編
ちこ編
志津編
タイキ編
ゆん編
なつめ編
卵茶編
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
■ロシュ
みく子の元カレ。
二枚目、頭脳明晰、スポーツ万能で浮気者。
みく子と別れてエリカと付き合いながらも、みく子に未練がある人。
■蜜
みく子の現彼氏。
みく子のアバンギャルドなパーマを見て怒った。
世界を救いたいと思ってる人。
■サク
みく子の初恋の人。
みく子のことだけを考えながらも、人生に絶望してる。
悪魔と契約なんかしちゃってる人。
■蓮火
みく子の知り合い。
路上ライブで知り合い、アバンギャルドなパーマを見て
「とりあえず、そのパーマだけは直せよ!」と路上で叫ぶ人。
■アリエス
みく子と同じ研究室の学生。
先輩には卵茶もいる。
教授にいろんな意味で愛されてる人。
■黒
みく子のチャット友達。
るどんとビリヤードしたりもする。
みく子と実際に会ったことはない人。
■しのめん
みく子の友達。
どう見ても二児以上の父親としか思えない老けた大学生。
色の識別が出来ない人。
■奏湖
みく子の元後輩。
大通りにある24時間営業のマックス・ドックスの元気な店員さん。
みく子のライブポスターをそこら中に貼りつけた人。
■ちこ
みく子のストリート友達。
みく子と同じようにストリートで歌ってる。
昼は喫茶店、夜はダイニングバーじゅごんで働いている人。
■志津
みく子の友達。
「ふろーら・しょうだ」でバイトしてる。
落研で「るど」と漫才コンビを組んでる人。
■タイキ
蓮火の兄。
タクシードライバーをしている。
弟の蓮火のことをいつも考えてる人。
■ゆん
みく子の友達。
普段はたまにメールでやりとりしてる。
みく子のライブのポスターを作った人。
■なつめ
みく子の高校の同級生。
高校時代はみく子の生演奏を聴いたりしてた。
現在は立派に社会人をしている人。
■卵茶
みく子のゼミの先輩。
みく子とはよくメールをする仲。
後輩にはアリエスもいるがどちらからも先輩扱いを受けていない人。
■M線上のアリア CM動画 A巻発売編!
 
 

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

六日目:志津編 11話

新しいネタは、出来かけのような、まだまだのような。
ちゃんと覚えて、本番に困らないようにしないとなぁ。。。

花屋でのバイトも終えて、本日はチョンボもなかったのでまごちゃんのお車もなく、夜道を一人で歩いていた。
アパートの近くにある公園に差し掛かった時に、何かの気配を感じてそちらへ視線を遣る。

ドサッ。

ドサッ?
何の音?

改めて見てみると、腰程の高さの石積みがしてある。
その向こうは、花壇だろうか。
木と木の間から声がする。

「おい、いきなりそれはないだろう」

感情のない声。
てか、意味が解らない。

「?」

何か、目のようなものが見えた。
石垣の上に手が一組見える。

「お前、俺が見えてるだろう?さっきのは、無意識か?」

「なんのこと?」

やっと言葉を発すると、目が動いて人影が現れた。
ひょろんとした、おっさん。
黒いジャケット・・・・あ。

「学校で見たと思った、自転車のおっさん」

「おっさん言うな」

感情の見えない、それでいて不快ではない声が言う。

「お前、俺が見えてるだろう?」

また訊く。

「見えてるよ。透明人間のつもりですか?」

「バカか、おま・・・え・・・」

何故かおっさんが言い澱んだ。

「お前、それに気付いてるのか?」

おっさんの目は、私の肩越しに視線を向けている。

「ああ、これ?知ってるよ。見えるの?」

ふぅん。
私の背中にあるモノが見えるのかぁ。
って、

「あんた、悪魔やなっ」

「鈍いのぉ」

「ほっといて。触るよ」

「やめろ」

「私が触ったら、天に帰れるよ」

「やめろ。まだここに居る。それより、そのおでこを見せてみろ」

「ふん」

髪を掻き揚げておでこを見せてやる。
悪魔は、ちらっと一瞥すると、目を逸らした。

「HANNAHの刻印か」

「お祖母ちゃんの。これを知ってるなんて、あんた偉い悪魔やな」

「偉いぞ。だから自由が利く。天に帰されてたまるものか」

「そして、人の記憶を食い散らかしてるんやな」

「うるさい」

態度は大きいけれど、実はびびってる。
私があと一歩近づいて、この手で皮膚に触れたら、天に帰ってしまう。
悪さしかけてきたら、おでこの刻印で消滅させることもできる。
だけど、この悪魔は敵意を持ってないらしい。
ここは住みやすい場所だからか、穏やかになってるらしい。
お腹一杯ということか。。。

「さっきのは、無意識か?」

「さっきの、何?」

「睨んだ」

「なんか気配がしたから、注意を向けただけ」

「いきなり突き飛ばされた俺の身にもなってみろ」

「無理」

「痛かったぞ」

「ひひひ」

「お前のほうが悪そうだな」

「失礼な」

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

六日目:志津編 12話

夜目にも暗い瞳の悪魔が、思い切ったようにこちらを向いた。

「お前は、何故ここに居る?」

「他に行くところが無いから」

ふふん、と悪魔が鼻で笑う。

「自分の仕事を知らないということか?」

「さぁ」

答える訳が無かろう。
でも、私はこの悪魔を天に帰す為にここに居る訳ではない。
そうでなければ、悪魔のお喋りに付き合ったりしない。
速攻で天に帰している。

悪魔を一匹倒したところで、この世から「悪」が無くなる訳でもない。
人はその不安から、簡単に悪魔を生み出してしまう。
皮肉なことに、その悪魔が光を増強する。
ここは、そういう世界だ。

「くそぉ。お前が何を考えているのか、見えん」

なにやらボヤくので、背中の羽を広げてやる。
普通は見えないけれど、悪魔には見える。
考えてることは見えなくても、他の人が見ることのないモノを見られるんだから、いいじゃない。

「やっぱり、それか」

「羽で触っても天に帰るのかな?やってみようか?」

「や・め・ろ」

非常に迷惑そうなので、止めておこう。
あんまり調子に乗ると、お祖母ちゃんに叱られる。

「あんたは、なんでここに居るの?」

今度は質問してみよう。

悪魔は、石垣の上で胡坐をかいて、自分の手を見ている。

「ここは学生が多い。若いヤツらは、能天気にしてるか、ギリギリのところでのた打ち回ってるか。美味い餌があるからな」

「美味い餌は、昔の良い思い出でしょう?」

「ああ、それが一番美味い」

「失くした本人は、どれだけ大事なものを失ってるのかすら気付けない。
 極悪非道やな」

「賛辞を戴くとはな」

「あ・・・」

ふふん、とまた笑う。
ので、睨んでやった。

ドサッ。

ああ、さっきもこうやって落ちたのか。
本当に見えない手で突き飛ばされたみたいに、後ろにすっころぶのね。

「睨むな」

ひょいと石垣に上り直して胡坐をかきながら、感情のない声が苦情を言う。

「だって、面白いもの」

「面白い・・・。お前、悪魔と遇うのは初めてか?」

「うん」

「・・・・・」

悪魔も呆れるらしい。
こんな表情を、よく見かけるよ。
人間の間に居ると。
そして彼らは言う。
『天然』と。
ボケてるんじゃないのだけれどね。

「加護してる人たちに感謝しろよな」

お前に言われたーないわっ。

懲らしめるぞ。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

六日目:志津編 13話

暗い公園の縁で、悪魔がにやりと笑う。

「頭の中は見えないが、表情は丸見えだぞ」

ああ、そうだな。
表情位は見えるだろう。
悪魔にだって目は有る。

「お前みたいな未熟者が人を救うのか?」

悪魔が真顔で訊いてきた。
本心から疑問なのだろう。

「人を救ったりはしないよ」

真実だ。

「救わないだと?」

「うん」

「では、何故お前に救われたと思ってる人間が居るんだ?」

「知らない。私は、ただ傍に居るだけだもの。
 特別に凄いことが出来る訳ではないよ」

真実だ。

「お前はバカか?・・・睨む・」

ドサッ。

遅かった。

「睨むな、バカ」

感情の無い声の苦情、再び。
いや、三度?

悪魔は懲りずに、また石垣の上に胡坐をかく。

「人は、自分で立ち上がるよ」

悪魔の苦情は無視して話を続ける。

「本当の絶望なんて、そんなに簡単に経験できないもの」

「ん。確かにな」

「心のどこにも光がなくなることなんて、実際にはそんなに起こらない」

「それは、観て知ってる」

「だから、昔の人は『絶望は死の病』と言ったのよ」

「あれは観てて楽しい」

「観てるだけ?追い詰めたりしてない?」

「何もすることがないな。勝手に追い詰まっていく。
 そして、悪魔を呪うのさ」

悪魔が笑う。

「そんな状態の人は、誰かに逢うことも無いのが普通だから、私は遭遇したことがないな。
 遭遇したら、ビックリしてジタバタしそうだわ」

「お前はバカだからな」

ドサッ。

「でも、普通はそこまで悲惨なことにはならないから、自分で立ち上がるのよ。
 それでも、充分に悲惨だったりするけれど」

「悲惨を食うヤツは、そういうところでニタニタしてる」

「悲惨を悪魔が食っても、悲惨は減らないの?」

「減らない。良い思い出が減るのは、それが良いモノだからだ」

「ふぅん」

「悲惨は悪魔を肥やすけれど、無くなりはしない。
 そこから、涙や呪いの言葉を啜り取る。おぞましいぞ」

「そうね。観たくはないな。記憶を食うのだって、充分おぞましいでしょうに」

「俺は美しいぞ。悪魔の美しいは、お前のおぞましい、かもしれないが」

ふと、悪魔が聞き耳を立てるような素振りをした。

「誰か来るな」

「ん?そう?」

「お前は、バカだわ鈍いわ、落ちこぼれか?」

ドサッ。

悪魔が何度目かの墜落を果たしたときに、ぱたぱたと足音が近づいてきた。

「あー、志津さぁん。こんなところで何やってるんですかー」

心配そうなるどんの声がする。

「ごめんごめん。猫さんと話してた」

公園の石垣の上には、黒い猫が一匹、澄まし顔で座っている。
これなら、るどんにも見えるだろう。

「ええー!んもぅ、何やってるんですかっ!帰るって電話してきたのに、なかなか帰ってこないから心配したじゃないですか。
 ・・・・・あ、黒猫・・・」

にゃぁ。

黒猫が小さく鳴いた。

私はすかさず羽を広げて、るどんにおっ被せた。
これで、悪魔は何も出来ない。
頭の中を覗くこともできない。
るどんに、そんなことはさせない。

るどんには見えない羽で覆ったまま、二人で並んでアパートに向かう。

後ろの石垣の上には、もう黒猫は居ない。

また、落ちて、そのまま押さえつけてある。
アパートに入ったら、解放してやろう。

『バ、バカ野郎。なんてことするんだ。放せっ』

感情の無い声が喚いている。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

六日目:志津編 14話

公園からアパートまで、すぐそこ。
アパートに着くまでの間、るどんにしっかり小言を戴く。

「今夜は出かけるていうのに、何やってるんですか。
 サラリーマンのお父さんみたいに『帰るコール』までしてきといて。
 猫さんと喋ってたて、ふざけてます?」

サラリーマンの奥さんみたいやぞー。
そんなことを言ったら、肘鉄を食らいそうなので、ひたすら謝る。
あー、俺、何時からサラリーマンのお父さんになったんやー?

アパートに着いたので、公園で地面に頬ずりしている悪魔を解放してやる。
何か喚いているけど、聞こえないふり。

部屋に入って、着替えとおやつを一辺に済まそうとしてジタバタしていたら、
窓の外で「バンッ!」と衝突音がした。
るどんには聞こえなかったようだ。
何気なく確認しに窓辺に行く。

窓の下で悪魔が胡坐をかいて、不貞腐れている。

あー、ここは結界を張ってあったわー。
ごめんごめん。
てか、結界が見えなかったのか?
また、会うことがあったら訊いてみよう。

「志津さん、どう考えても間に合わへんよ?」

るどんが時計を見ながらジーンズのジッパーと格闘している。

「こういうときは、奥の手やね」

そう言って、まごちゃんに電話をかける。

『はいよ?』

電話を取る前に名前が判るって、いいのか悪いのか。
不意打ちの他所行きの声が聴けなくなった。

「まごちゃん、ピンチ?」

『どないしたん?』

「車ですぐに来るあるよろし」(ぷちっ)

「ぷちっ・・・て」

るどんに呆れられながら、おやつのクッキーをもう一枚齧りながら戸締りをして、
アパートの玄関先にでる。

空気を探ってみるけれど、悪魔の気配は消えている。

「そういえば、最近、黒猫が増えてるみたいですね」

るどんが暢気に世間話を始める。

「にゃに、黒猫が?」

「うん。線路の向こうのマンションとかアパートとかかたまってるとこがあるやんか?
 あの辺りでも、黒猫がうろうろしてるらしいよ。
 猫嫌いの子が、気味が悪いてゆってた」

「ふぅん」

ふぅん。
ふぅん。
ふむふむ。

きっかり五分で、まごちゃんの車が到着。
どこを通ってきたら五分で来られるんや?

「ピンチてなんや??」

半分寝惚けたようにのんびりと訊く。

「ライブに遅れてるの。近くまで送って」

普通なら、歩ける距離ではあるが、ここは頑張れ車。

「あっちの、繁華街の外れまで」

「お志津、自分で走ったほうが速いやろう」

「いーや。近くで降ろしてくれたらいいから。
 なんやったら、どこかのパーキングに突っ込んで、まごちゃんも来たらいいよ」

「ほんなら、行くで」

るどんと私は、大急ぎでシートベルトを装着。

自分で走るよりは、うんと早く目的の場所に着いた。


もう、人が結構集まっている。





今夜は、みく子の路上ライブ。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

六日目:志津編 15話

「オレンジ」

みく子の声が曲名をコール。

夜気が肌寒い。
人が集まっているところに近づくと、静かな熱気を感じる。
みく子の歌声に引っ張られるようにして、魂が白熱していく。

「志津さん、レインボー履いてきて良かったね。
 ミニスカートやったら寒いでしょ」

るどんが『レインボー』と名づけたニーハイソックスに、腿の半分までカバーしてもらってなんとか寒そうにせずに済むくらいに空気は冷えている。
冷たい空気の中で、白熱していく魂。

集まった人を見回すと、知った顔が幾つも見える。

「Change The World」

みく子が次の曲をコール。

ん?

路地の思わぬ方向から誰か来る。
あの歩き方は、見覚えがある。
誰だっけ?

自販機が並ぶ所に通りかかると、風体がはっきりと見えた。
濃いグレーのジャケットにコーラルピンクのスタンドカラーのシャツ。
ジャケットの左の襟で、何か光った。
ブローチ?
音符?

パンツも濃いグレーで、少しだけクセのある歩き方で、どんどん近づいてきた。

ソニア!

ああ、私がこの世で一番愛してる薔薇の香り。
基本的な薔薇の香りにオレンジ色を垂らしたような、薔薇の甘ったるさを知性に置き換えたような。
この香りは「ソニア」とい名のパステルカラーみたいなオレンジ色の薔薇の香り。
花は大きからず小さからず。
香り高く、押し付けがましくなく。

はぁ。。。

「お志津、お前のアへ顔見てもしゃぁないんやが・・・」

はっ!

「まごちゃんっ」

さっき、車の中でほんのり香っていたのは、このソニアだったのか。。。
トランクに隠してたのか。

なんで?

「いやぁん、私の為にぃ?お誕生日でもないのにぃ?」

「アホか。なんでお志津にやらなあかんねんな」

あ、そ。

うほっ。
そかそか。

「Festina-Lente」

みく子のコール。

「ふぇすてぃな・れんて?!」

私は叫び返して、まごちゃんの手からソニアの花束を奪うと、頭の上に差し上げてみく子が歌っている方へ進んだ。
目の前の人が脇へ退いて通路ができる。
後ろで『アホ、何すんねんっ!』とか言ってる気がする。

正面に「Festina-Lente」を歌うみく子が居る。

最前列まで行くと、みく子の目の前で立ち止まって歌の残りをみく子と見詰め合いながら聴く。

ギターの余韻が夜気に吸い込まれたところで、みく子の傍に一足飛びに進む。
両手に抱えたソニアを差し出そうとしたとき、みく子が半笑いで首を振った。

「お志津、違うでしょ」

バレてたか。
花束をそのまま頭の上に持ち上げると、後ろから花束を持っていく。
何もなくなった両の手をそのまま広げて、みく子に抱きつく。
みく子の耳元で囁く。

「びっぐ、はぐはぐ」

「さんきゅ」

こうして私たちの挨拶は交わされ、まごちゃんの為にその場を離れる。
振り返ってみると、まごちゃんがみく子に優しいオレンジ色の花束を渡していた。
みく子が嬉しそうに受け取る。

あれ?
最前列の真ん中を外したところにカメコが居る。
てか、サイコ師匠!
なんか凄いカメラでみく子とまごちゃんを勝手に撮影している。
多才やなぁ。。。


「まごすけさん、めっさカッコイイですね」

るどんが囁いた。

「ほんま、めっさカッコイイな。あほてんちょーとは思えんわ」

「志津さん」

るどんに小突かれて、たははと頭を掻く。



「モノクロ」

みく子の次のコール。


まごちゃんが、ちょっと後ろにさがった私たちのところに来た。
凄く控えめにニコニコしてる。

「まごちゃん、花束まで用意して、ライブがあるの知ってたん?」

ここは訊いてみなくちゃだっ。

「んー?昨日、お前にアレンジ見せたやろ?
 あれな、今夜のライブに持っていくていう女の子に頼まれてたアレンジやってな。
 訊いたらみく子やて言うやないか。
 ほな、ひとつ花束を張り込もか思てな」

「張り込んだわ。ソニア何本?」

「三十本」

「ひょぇ???。。。って、それ、あんたの歳やん」

「悪いかっ」

「悪くないですっ」

るどんがすかさず割って入る。

「るども三十本の薔薇の花束貰ったら、滅茶苦茶嬉しいもん」

「ソニアやしな」

「あ、お志津。そうか。お前あの花、死ぬほど好きやったな」

まごちゃんとるどんが可笑しそうに笑う。

むくれてやる。


「秋空の向う」

みく子のコール。

歌声は疲れ知らずのように、夜の空に伸びやかに放たれる。

あ、花屋のご近所の『じゅごん』のおねいさんだ。
そういえば歌うって言ってたな。
みく子の声と相性抜群。

『すげー』

るどんとまごちゃんと私は、同時に唸った。


きんも???。(両側から後頭部をはたかれる)

思っただけやのに。。。
この二人、かなんわ。



「バニラ・フィッシュ」

みく子のコール。

最前列で近くのマックスで一番元気なおねいさんが、マックスの紙袋を持って、何故か緊張した感じで聴いている。
あのおねいさんでも、緊張することがあるんやなぁ。
いや、私もるどんも、漫才やる時は緊張するけど。
やる側は、緊張を出せない。
勝手に漏れるけどさ。

緊張しているマックスのおねいさんが、とても可愛く見える。




「アリア」

みく子のコール。

ライブの締めの曲。



終曲の余韻に浸りながら。
まだ痛い後頭部をさすりさすり、ふと視野の端に動くものを捉える。

黒猫。
すれ違う若い兄ちゃん。
黒猫が、にゃぁと鳴く。。。

公園で会った黒猫とは違う。
確かに増えてるのかもしれない。

でも、それは、今夜気にすることではない。


ライブが終わって、人が散り始めた。
白熱した魂を大事そうに抱えて。

「お志津、帰るかぁ」

まごちゃんがのんびりと言う。

「志津さん、帰ったらネタの続きを考えなね。稽古できへんかったら、るど噛みっ噛みになるよ」

るどんが至極尤もなことを言う。
けど。


ネ、ネタかぁぁぁぁぁぁぁ!
今夜くらい忘れさせてくれぇ???!

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

七日目:志津編 16話

灼熱の夏の後、台風一過で急速に季節は進み、秋になった。
秋になったは良いけれど、秋晴れの日には恵まれず、
ほとんどの日をぐずついて過ごした十月の空。
夜毎に冷え込む今日この頃。

いよいよ学祭の日。
朝、目が覚めて寝惚け眼で空を窺うと、真っ青な秋晴れの高い高い空が見える。

出番は午後からなので、もうちょっと寝ようかなと逡巡していると部屋のドアをノックする音。

『志津さぁぁぁぁぁぁん!』

大声ではないけれど、切羽詰ったるどんの声がする。

んもぅ???、なんでこんな日に早起きなんよ??。。。

ドアを開けると、るどんが転がり込んできた。

「志津さん、大変っ!」

「おわよー」

「あ、おはよう!大変っ!」

「どないしたん?」

「今日、何着よっ?」

ぅわ???????っ!
今頃?今頃?今頃?

「スカート履くぅ?」

そう言ってにやにや笑ってみる。
はいはい、そこで凝固しなくていいからね?。

「嘘、嘘。ジーンズがいいでしょ?」

「ビックリさせんといてよ?。ジーンズ以外に何を履くのよ。
 そうじゃなくて、上は何を着たらいいと思う?」

「んー、私はダークグレーのワンピースにモスピンクのボレロやでー」

「ロー・ウエストで切り替えて、プリーツになってるミニ丈のワンピース?」

「うん」

「で、レインボー?」

「うん」

「センスが良いんか悪いんか解らん取り合わせやんね?」

「うん」

「んじゃ、るどは、モスグリーンのベストにしようかな」

「綿入れ?」

「そそ・・・って、綿入れ違うってばぁ。ダウンやってばぁ」

「似たようなもんやん。あのボア、付けときや」

「ボアね。付けとく?」

「うん」

「判った。ほんで、何時に学校に行くの?」

「今、何時?」

「十一時」

「えっ!」

二人で無駄に慌てながら仕度をして、学校に向かう。
がんばれ足!

落研の部室に行ってサイコ師匠にちょっとだけ小言を戴いて多目的ホールへ。
楽屋入り口の重たい扉を開けて中に入ると学祭のスタッフが揃いのジャンパーを着て立ってる。

あれ?

「あれ?志津、お前何?」

んーーーっと、こやつは何者じゃ?

「ふとっち!」

中学・高校の時の悪友ではないかいな。
ああ、そいや居るとは聞いてたけど、なんで学祭のスタッフ・・・そっか、音関係か。。。

「キャッツ・ポゥです?」

「あ、落研の漫才コンビ。やっぱり志津やったんか」

「はいよ。そんなに笑うなっ」

「コートはここで預かるから。そっちの人も」

寒いから自前の衣装の上から適当なコートを羽織っていたのを、楽屋に入る前に剥がされた。
楽屋といっても、小さな控え室なので、別にスペースを取ってクロークにしているらしい。

「音屋がクローク係なん?」

「いや、偶々通りがかっただけ。控え室に行ってな」

はいよ?。
なんか高校の文化祭を思い出すなぁ。。。
調整室に入って助手やってたなぁ(邪魔してたとも言う)。

控え室で最後の合わせを簡単にやってドキドキしていたら呼ばれた。

いよいよや。

------------------------------------------------------------

ちゃかちゃんりんちゃんりんちゃんりん、でんでんっ!



る・し「はいっこんにちは??!キャッツ・ポゥですっ!」

  る「めぇ?もりぃ??♪」

  し「それは『キャッツ』。ポゥはどうするのよ」

  る「ポゥ?・・・ポゥ・・・あいしてポゥポゥ」

  し「ポゥポゥて、ジャッキー・チェンの幼名やんか」

  る「成長の後これを改め、成龍(しぇんろん)と申すなり」

  し「なんまんだぶなんまんだぶ・・・」

  る「生きてる!」

  し「え?」

  る「ジャッキー・チェンは、まだ生きてる。死んでへん」

  し「ああ、生きてはったんか」

  る「生きてはったんか、て。そうやのぅて、ポゥて何よ」

  し「ポゥは動物の手やね」

  る「キャッツ・ポゥで猫の手?」

  し「そうそう、忙しい時に借りるやつ」(手でにゃう)

  る「猫の手も借りたい、言いますね」

  し「そやから、めっさ忙しいときは『にゃんにゃこ舞い』て言うでしょ」(にゃうにゃう)
 
  る「それを言うなら『てんてこ舞い』です」

  し「ほんで年寄りが無理してたら『年寄りの鼻水』」

  る「こっちが洟出るわ」

  し「桃栗三年、ネタ八年」

  る「待ちぃな。一つのネタに八年もかかってたら卒業してしまうわ」

  し「留年しまくってギリギリやなぁ」(腕組み)

  る「いや、真面目に悩むとこ違うし」

  し「真面目に悩むよ。ネタやで?」

  る「学校を卒業するほうが大事でしょうに」

  し「そうなん?」

  る「そうなん?て。就職の内定もろてて卒業できへんかったら、どないすんのよ」

  し「また来年??」(にっこり手をふりふり)

  る「来年は無いの、来年は。せっかく貰った内定やねんから、素直に就職しようよ」

  し「そぅですか?。いや?、嫌やとは言いませんけどぉ、困るわぁ?」(くねくね)

  る「何をお困りですか?」

  し「永久就職でしょう?」(もじもじ)

  る「誰が?」

  し「私」

  る「どこに?」

  し「えっと・・・」

  る「もう、ええわ」

  し「ありがと」(頭を下げかける)

  る「まだまだ!」

  し「へ?」

  る「まだ帰ったらあかん。さっき出てきたとこ」

  し「あ、ほんまや」

  る「あ、ほんまや、やあらへんわ。そない早よ引っ込んだら、次の人が困るでしょ?」

  し(舞台の袖を窺う)

  る「何をしてるの?」

  し「なんか、裏でごつーん言わへんかった?」

  る「裏でごつーんは、志津さんやん」

  し「そうやん。さっきの、痛いわぁ」(膝をさする)

  る「(客席に向かって)ちょっと皆さん、聞いてくださいよ。
    この人、さっき、ほんまに裏でごつーんとしましてん」

  し「鬼の首取ったように言いいないな」(うわ。なんちゅうアドリブかますんや)

  る「私ら、今はこういう高い所に立たせてもらってますけど、
    別に私らがエラいからやないんですよ」

  し「エロいかもしれへんけどね」

  る「そうそう。
    ほんでね、ここへ上がらせてもらおうと思たら、
    舞台の高さの分、段々を上がらなあきませんねん。
    ここやと五段の階段が裏にあるんです」

  し「五段あるね」

  る「この人、五段の階段を無事に上がれへんかったんです」

  し「一、二、三,し・・・ぅわーっ!ごつーんっ!」(こける振り)

  る「思くそ膝ぶつけて、出番直前に涙目になるて、どうやの?」

  し「痛かってんもん」

  る「痣になってる?」

  し「ほら」(ニーハイソックスをぺろっとめくる)

  る「うわ。えらい色になってるわー。
    って、どうでもええけど、志津さんミニスカートで足前に出して、
    ニーハイソックスぺろって」

客席最前列『眼福、眼福』

  し「え?パンツ見えた?・・・」(あ!卵茶くんや、やっほ?)
                    (普通に話しかけながら、手を振る)

  る「そこからやったら、見えた?」(普通に卵茶に話しかける)

 卵茶『内緒っ』

  し「ほんまに痛いねんから」(漫才に戻りながら、ネタはどこ行ったと脳内大捜査線)

  る「次の人が同じ目に遭うても困るから、早く切り上げて帰ろうとしない」

  し「早く切り上げようとしたんやないねんけど、
    るどんが、もうええわ言うから、つい釣られて」

  る「じゃこですか」

  し「じゃこは釣れへんやろー」

  る「いわし?」

  し「もうちょっと大きいのんにしとこうよ」

  る「あじ?」

  し「似たようなもんやなぁ」

  る「さんま」

  し「旨いなぁ」

  る「食べたいなぁ」

  し「どうせなら鯛にしとけへん?鯛の刺身に塩焼き。残ったアラで潮汁」

  る「腐っても鯛て言うしね」

  し「うんうん・・・腐ってんのかっ」

  る「ついうっかり本当のことを」

  し「本当のことて、まだ腐ってへんよ」

  る「まだて」

  し「まだ大学生やで?ぴっちぴちやんか」

  る「あー、そうやね。大学生やったわ」

  し「でしょ?ついこないだ履修科目で悩んだとこやん」

  る「やのに、もう卒論やもんねぇ」

  し「あ・・・」

  る「どうしたん?」

  し「いや、なんでもない」

  る「なんでもないことないでしょ?」

  し「忘れとった」

  る「素になりないな」

  し「マジで素になったわ。わー、どないしょー」

  る「後で悩んで」(早よネタに戻って)

  し「ちめたいなぁ。
    ほんで、一年生のときに履修届けを書こうと思て苦労したよなぁ」

  る「そそ、外国語は英語かなぁとか。第二外国語は何にするぅ?
    て志津さんに訊いたら『C+じゃ古いんやっけ?』て言うし。
    機械語を話してどうするんですか」

  し「るどんなら話せるかもしれんて思てんけどなー」

  る「読み書きは出来るようになるかもしれへんけど、話すのは無理っ」

  し「なんで?言語やのに?」

  る「発声する言語じゃないからっ」

  し「ああ、そうか。プログラム書いてて、
    『下手やのー』
    『ごちゃごちゃやんけー』
    『そんな汚いコード書くなやー』
    『それでは動けんぞー』
    言われたら、腹立つよなー」

  る「ゲームの『シーマン』要らんよね」

  し「機械が勝手に喋らんで良かったなー」

  る「それもちょっと違う気がするけど。
    まぁ、そんなん言うてたんがつい昨日のようです」

  し「ほんまに、大きなったなぁ」(しみじみ)

  る「え?」

  し「あんなちっちゃかった子ぉが、もうお嫁入りですかぁ」(近所のおばちゃん風味)

  る「綺麗なおべべ着せてもろてぇ」(同じく)

  し「千歳飴持たしてもろてぇ」

  る「お参りは、もう済みはったん?・・・って、なんで七五三やの」

  し「あれ?」

  る「あれ?やないわ」

  し「そやけど、七五三なんか、すぐやで?」

  る「もう済んでるっ。もしやるんやったら、お嫁入りっ」

  し「お嫁入りて、るどんも古いなぁ。今は『結婚』て言うのが普通やのに」

  る「先にお嫁入り、言うたんは志津さんやんか」

  し「あら、そう?」

  る「お嫁入りも結婚も飛び越して、認知症ですか」

  し「いやー、そろそろ危ないかもしれんわー」

  る「ほな、ちょっと試してみよか?昨日の晩ご飯は、何でした?」

  し「カロリーバディのポテト味」

  る「新しいのん出てるからて、買ってきてたね。って、それが晩ご飯?」

  し「それだけやないよ。大袋の底に残ってたチョコレート」(得意満面)

  る「あんたな、それでは病気になるで?しゃぁないなぁ。
    ほんだら、昨日は何をしてましたか?」

  し「卒論書いてました」

  る「遅くまで起きてたのは、卒論書いてたんか」

  し「うん、夢の中で」

  る「それは、寝てた言うのっ」

  し「てへ」

  る「てへ、やあれへんわ。ほんまにヤバイかもしれへんな。
    ほな、アナタのお名前は?」

  し「え?」

  る「もう一回訊きますよ。
    アナタの姓名は、何と仰る?」

  し「なに、わらわの姓名なるや、
    父は元京都の産にして、姓は安藤、名は敬三、字を五光と申せしが、
    わが母三十三歳の折、ある夜、丹頂を夢見てわらわを孕みしが故に、
    たらちねの胎内より生でし頃は、鶴女(つるじょ)、鶴女と申せしが、
    これは幼名。
    成長の後これを改め、延陽伯と申すなり」

  る「なんまんだぶ、なんまんだぶ」

  し「拝みないな」

  る「いや、ありがたいお経を上げて戴いて・・・」

  し「まんまやな」

  る「そらそうやん、私ら漫才コンビやけど、所属は落研やもん」

  し「門前の美女、習わぬ噺を演る」

  る「もうええわ」

る・し「ありがとうございましたーっ!!!」



    
---------------------------------------------------------------

終わって袖に入って、後に出る人に「お先です?」と挨拶をして、クロークに寄ってコートを受け取り、走り回っているふとっちに声をかけて外に出る。

秋晴れの下でまごちゃんが立ってた。

「お疲れさん。ご飯でも食べに行くかぁ?」

「車?」

「うん」

「行く行く??!」

「るどんも、一緒に・・・」

まごちゃんに言われるまでもなく、るどんは私に腕を掴まれて、まごちゃんが車を停めているであろう職員用の駐車場に連行されている。

ぽかぽか陽気の十一月三日。

私たちの学祭は無事に終わった。

書┃籍┃化┃第┃一┃弾┃♪┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
★ブログじゃ読めないおまけページが盛り沢山!M線上のアリア A巻 購入はコチラから!★
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ランキング参加中!感想の代わりにお願いします。

≪前のページ | TOP |


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。