ロシュ編
蜜編
サク編
蓮火編
アリエス編
黒編
しのめん編
奏湖編
ちこ編
志津編
タイキ編
ゆん編
なつめ編
卵茶編
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
■ロシュ
みく子の元カレ。
二枚目、頭脳明晰、スポーツ万能で浮気者。
みく子と別れてエリカと付き合いながらも、みく子に未練がある人。
■蜜
みく子の現彼氏。
みく子のアバンギャルドなパーマを見て怒った。
世界を救いたいと思ってる人。
■サク
みく子の初恋の人。
みく子のことだけを考えながらも、人生に絶望してる。
悪魔と契約なんかしちゃってる人。
■蓮火
みく子の知り合い。
路上ライブで知り合い、アバンギャルドなパーマを見て
「とりあえず、そのパーマだけは直せよ!」と路上で叫ぶ人。
■アリエス
みく子と同じ研究室の学生。
先輩には卵茶もいる。
教授にいろんな意味で愛されてる人。
■黒
みく子のチャット友達。
るどんとビリヤードしたりもする。
みく子と実際に会ったことはない人。
■しのめん
みく子の友達。
どう見ても二児以上の父親としか思えない老けた大学生。
色の識別が出来ない人。
■奏湖
みく子の元後輩。
大通りにある24時間営業のマックス・ドックスの元気な店員さん。
みく子のライブポスターをそこら中に貼りつけた人。
■ちこ
みく子のストリート友達。
みく子と同じようにストリートで歌ってる。
昼は喫茶店、夜はダイニングバーじゅごんで働いている人。
■志津
みく子の友達。
「ふろーら・しょうだ」でバイトしてる。
落研で「るど」と漫才コンビを組んでる人。
■タイキ
蓮火の兄。
タクシードライバーをしている。
弟の蓮火のことをいつも考えてる人。
■ゆん
みく子の友達。
普段はたまにメールでやりとりしてる。
みく子のライブのポスターを作った人。
■なつめ
みく子の高校の同級生。
高校時代はみく子の生演奏を聴いたりしてた。
現在は立派に社会人をしている人。
■卵茶
みく子のゼミの先輩。
みく子とはよくメールをする仲。
後輩にはアリエスもいるがどちらからも先輩扱いを受けていない人。
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六日目:卵茶編 11話

………

遠目に見ると、既に会場になっている広場にはかなりの人数が集まっていた。
今の時間は二十時半頃だろうか。

俺の肩にはギターケース。…けっこう重いもんだな。こんなもん持ったこと無いっつうのに。

そして、横にはみく子。

息が荒い。
ギターケースを持って走った俺よりも。

「………っはぁ、はぁ。…もう、ちょっと、待って、ね。」
広場から見えない位置で、壁に背中を預けて呼吸を整えている。

「………」
俺は何も言えない。言わない。
分かってる。ここは俺の居場所じゃない。
本来なら俺は今頃、みく子がライブをすることをメールで知らされながらも家でゴロゴロして、そろそろ始まるころかと携帯を眺め、せっかくだからと激励のメールを送る…せいぜいそんなところだったはずだ。

でも、なんの導きなのか、俺はここに居る。

ならば、只々みく子のやらんとしていることを手伝うのみだ。
すぐ横の自販機で飲み物を買ってやることにする。
ポカリにしようかとも思ったが、考えて見ればもう十月。走る間に肺に流れ込む空気は冷たかった。

みく子のやらんとしていることを手伝う、というならば、出来ればベストな状態でライブに挑んでもらいたいものだ。

ホットのお茶を買う。

渡すと、みく子は
「………ホットなの?」
見上げながら、感謝と迷惑を掛けたような表情を向ける。
「や、冷たいのは喉に悪かろ?」
押し付けながら言う。
納得したようで、みく子は受け取り、ペットボトルの蓋を開いて口を付ける。

息を整えながら、ほんの少しずつ飲むみく子。喉の調子を確かめるように、ゆっくりと、時に上を向いたりしながら流し込む。

ふいにみく子が咳き込む。お茶が気管支に入ったのだろう。
みく子の横について背中をさする。
細い身体。肋骨と背骨の形がモロに手に伝わる。

落ち着いたところで
「…聞かないね。」
みく子が呟く。

「……聞かないよ。」
応えて、呟く。

ギターを俺が持った理由。

みく子がこんなにも息を切らす理由。

俺の役目はここには無いから。だから。

「………ありがと。」





五分後、息を整えたみく子は、一つ大きく息をついてから、俺に笑顔を見せる。

「ありがと、卵茶くん。」

この言葉は何に対してだろう。
みく子の笑顔は、白い街灯に照らされて、それまで以上に白く、明るく見えた。

「それじゃ、行こうか。」

何の気負いも無く歩き出すみく子。

揺れるアバンギャルド。
残像。

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六日目:卵茶編 12話

?十五分前のこと?





みく子と俺は走っていた。

揺れるアバンギャルド。
揺れる体。

走るみく子は、なんだかフラフラしていた。
スピードも遅い。

「大丈夫か?みく子さん」
俺の方はスピードを合わせながらも声をかける余裕がある。
みく子の方は余裕が無い様で、一瞬視線だけを向けて、そのまま走る。

と、十字路を走り抜けるとき。

…!!

「あぁぁああっぶねぇ!」
みく子が誰かとぶつかりそうになった。
よけて立ち止まり、
「ぁ、ちこ??!!」
「み、みく子!?!?!?」
「えへへー」
…おや、知り合いらしい。見れば、ギターケースを二個も持っている、重かろうに。おそらくはストリート仲間なのだろうが。
そのギターを見て
「ぁ、ちこ偉い。」
「ん?・・・あぁ!みく子これから歌うんだよねっ!」
みく子はうんうんと頷きながら、満面の笑顔。で、視線はギターへ。
「もしや・・・このギターを狙ってる?」
「ビンゴ!!!!」
………そう言えば、みく子は最初からギターを持って無かった。

アホなんだろうか?
いや、いくらなんでも何かしらの事情があるんだろう。

「ビンゴじゃ無いっ!歌うの決まってるのになん・・・」
「あぁ!もうみんな待ってるかも!ちこもちゃんと後できてね!?」
ギターを受け取りながら相手の言葉を切って一方的に言い、歩き出すみく子。
それを追おうとして歩き出す俺に、ちこさんとやらが気付き、振り向く。
「ぁ」
む、驚かせてしまったようだ。先に声をかける。
「こんにちは。」
「こんにちは。ごめんなさい。びっくりして気付くの遅くなっちゃって」
いや、謝る場所じゃ無いしな。
「いや、良いんです。それじゃ。」
笑いかけておく。また後で会うかもしれないし。

「早く!卵茶くん!」
みく子がせかす。
小走りに追い付く。
振り向くと、ちこさんは既に別方向に歩き出していた。





横の路地に入った瞬間、みく子の体が崩れ落ちた。

「…!?おいっ!!」
みく子に駆け寄る。
「大丈夫だよ!!大丈夫!!」
明るい笑顔だけはそのままに、みく子は座り込んでしまう。
「お腹減ってたの!だからギター持ち歩くのツラくてさ!きっとちこさん来てくれるって思ってたから!!だからね!?」
そんなこと、聞いてねぇよ。

…俺の居場所はここじゃ無い。
自分に言い聞かせて、みく子に触れずに、ギターケースを持つ。
「…これは俺が持ってやるから。」

みく子が、無表情に俺を見つめる。やがて、少しずつまた笑顔になる。
ゆっくりと立ち上がり、歩き出す。
徐々にスピードを上げ、フラフラと走り出す。

揺れるアバンギャルド。
しかし暗い路地裏に、残像は残らない。

?????

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六日目:卵茶編 13話

「おまたせ!!」
二十人は越えるだろう大衆の前に、挨拶をしながら向かってゆく。笑顔で。

人だかりがまとめて振り返り、ざわつく。
変わってしまったみく子を初めて見る人も、この中には居るのだろうか?
…もしかすると、俺が横に居ることも原因か?第三の男出現ってか?違うぞ、俺は。

ともかく、集団の中央まで自然と開いた道を、みく子と共に歩く。
みく子はみんなから声をかけられ、笑顔を返す。

たどり着いた人だかりの中央。広場の真ん中。

………オレンジ色の、街灯の下。

背の高い、男前。
これだけで分かる。
多分、蜜くんだ。

みく子からのメールで色んな人のことを聞いた。外見とか、どんな言葉をくれたのかとか…プロフィールくらいは見た人も居る。
それぞれがどんな関係かは聞かなかったけれど、その中でもみく子を巡る物語の中心に居たのは、いつも蜜くんだった。
俺なんか、端の端で動いてるだけだ。

広場の真ん中、椅子くらいの高さのレンガの花壇。その前で、オレンジの街灯の真下にスペースを開けて、右に蜜くんが立っている。
みく子は蜜くんの顔を眺めながら近付き、そのまま何も言わずに、蜜くんの肩に額を預ける。蜜くんが誰にも聞こえない声で一言呟き、空間を、ほんの少しだけ、静寂が支配する。
ゆっくりとみく子が顔をあげ、街灯の下に座り込む。

「…ん。」
みく子が俺に両手を差し出す。

…俺はみく子にでは無く蜜くんに近づき、ギターケースを肩から外して彼に渡す。
何も言わずに受けとる彼の肩に手を置き一言。
「後は任せた。」

みく子が望んだのは、彼だ。
俺はどこまでいっても、やっぱりここに居るはずじゃ無かったんだろう。







俺は、みく子をどう思っていたろうか?
妹のような存在。
好みのタイプ。
携帯の奥の存在。

愛しては、いなかったはずだ。

愛したかった、気もする。

とはいえそんなことは数年前に済んだことで、なおかつたった今、自分の意思で手を離したモノだ。
だから、あえて自分でミスリードするならば、娘を嫁にやる父親の…いや妹を嫁にやる兄の心境、ということにしておこう。

みく子、幸せになれよ。







「…ん。」
今度は、蜜くんに両手を差し出すみく子。
「はい、みく子。」
蜜くんからみく子へ、ギターが渡る。

みく子はギターケースを開き、ギターを取り出す。
そして、6弦からチューニングを始める。

「まだー?」
と誰かが叫んだ。
「ごめん。あとちょっと待って。こう…パーマの角度が。」
右手でごめんねのポーズをしながら、申し訳なさそうにみく子が言うと、何人かが大爆笑した。

俺はその間に、そこを離れる。みく子に気付かれないように。
人だかりを離れ、横の方へ。
みく子の座っている花壇の端に腰かける。距離的には七、八メートル離れていて、人の隙間にみく子の姿が見える。

人は、気付けば三十人ほどに膨れていた。

1弦までチューニングが終わり、ゆっくりと息を吐いたみく子は空を見上げた。
そのまま、右手で空を指差した。

辺りがシン…と静まり返る。

右手をギターに、目線を人だかりに戻すと、ゆっくりとみく子はこう言った。

「集まってくれてありがとう。それじゃあ、今夜の始まりの曲、行きますよ?」

あの小悪魔的な笑みの後、その声は、澄んで空に溶けた。

…時間は九時を五分ほど過ぎていた。

ライブが、始まる。

「1曲目…オレンジ」
オレンジ色の街灯に照らされて。
揺れるアバンギャルド。
音と共に。

オレンジの残像。

過去の残像。

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六日目:卵茶編 14話

初めて聴いたみく子の歌声は、透明だった。

例えるなら、小川のせせらぎ。稲穂を揺らす秋の風。
時に激しく、時に優しく。時に冷たく、時に暖かく。時に雄大に、時に矮小に。
せせらぎの音に人は安心を覚え、濁流に不安を覚える。風は人を凍えさせ、同時に寄り添わせる。メダカが住み、タンポポの綿毛を飛ばし、カニが住み、凪いだ水面に波を立て、カエルが住み…




……
………
違う。
全然違う。
全くもって、違う。

みく子の声は“人の”声だ。
悲しみを、喜びを、苦しみを、願いを。歌う。謳う。
その透明な歌に、みんなが誰かを投影し、自分を投影する。

一曲、二曲。

少し離れて見ていると分かるが、歌声に引かれてまた少し人が集まってきている。
その中に見知った顔を見つけ、近寄る。

「来やがったな、食いしん坊め。」

…アリエスに声をかける。
見とれるように人混みの最後列から眺めていたアリエスは、迷惑そうな顔をして
「とりあえず、少し静かにしとけ。」
相変わらず冷たい物言い。
「そんな!先輩に向かってなんて言い種!?」
「いいから。」
「………はい。」

アリエスは、みく子と共にゼミの後輩だ。
仲良くなれば先輩後輩関係なくタメ語。比較的、色々と高性能。冷静なツッコミとシカトのコンボが、ボケ属性には堪らない。そんなナイスガイ。
…まだ半袖かよ。見てて寒いよ。

2曲目が終わり、みく子の側でハーフっぽい男が話しかけている。きっとアレはロシュくん。

「よう。」
「おう。久しぶり。」
改めてアリエスに声をかける。続けて俺から、
「最近どうよ?…ってな話する場じゃねぇわな。」
「まぁね。」
「ん?…とりあえず、そうだな。別に世間話する場面じゃねぇし、俺向こうでまったり聞くし。帰る前には一度声かけるわ。」
「おう。…つうか、なんで居んの?」
「ヒ・ミ・ツ☆」
「………うん、で?」
ナイス受け流し。笑顔が痛いっす。
「…いやまあ、気にすんな。気になるなら後で言うし。」

『幼なじみ』

みく子が3曲目のタイトルを、よく通る声で言った。
アリエスもそちらを向き、聞く体制になったので、俺はそこを離れる。
そして、離れ際に
「…なあ、このライブ…」
アリエスが怪訝そうに振り向く。
「…このライブ、しっかり聞けよな。みく子にとって、多分すげぇ特別だからさ。」
怪訝そうな顔のまま、当然だとばかりに頷き、前を向く。

俺は元の位置に戻り、座り込む。
…なに言ってんだかな、俺は。また頭ん中で空回りしてること、バレてっかな。
俺は苦笑して、みく子の方を眺める。

オレンジ色の街灯の下で歌うみく子。
遠目にも汗が見える。





この寒い中で?

目を見開く。

“遠目にも汗が見える”

楽しそうに、嬉しそうに歌うみく子。

…フラッシュバック。
走った後のみく子の荒い呼吸。

…フラッシュバック。
ギターを抱えて座り込んだみく子。

…フラッシュバック。
笑顔と、震える声。




俺は、目を背ける。

何故か、自分の呼吸が荒いことに気付く。

心臓の音がやけに耳に響く。

うるさい。
みく子の歌が聞こえないじゃ無いか。

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六日目:卵茶編 15話

浅い呼吸が冷たい空気を取り込む。
脳が冷やされる。
でも、思考はまとまらない。

と、取り込む空気に、何かの薫りが混じる。

たった今鼻先を通りすぎた薫りに、顔を上げる。
と、すぐ横の路地から出てきて、ライブの方へ歩いてゆく男性が居る。オレンジ色の花束を左手に持っている。
顔を上げた俺を、歩きながら肩越しに見て、ニヤリとする男性。

………やられた。

顔を上げてしまった自分が、なんか悔しい。
きっと俯いている自分の鼻先にわざわざ花束を通過させたのだろう。
そのまま男性は歩いていき、人混みの中から誰かに話しかけられている。

…ん?あれは志津さん?それにるどさん。
いつの間に来ていたんだろうか。

あぁ、志津さん、花束、みく子のライブ… と来たら、きっとみく子のバイト先の“ふろーら・しょうだ”の店長さんだ。

そのまま何かを話し、急に志津さんが花束を奪ってみく子の元に向かった。
店長さんの「アホ、何すんねん!」という叫びはよく聞こえた。
人混みの向こうでよくは見えないが、志津さんがみく子を抱きしめていた。その後に店長さんがみく子に花束を渡している。

5曲目が始まり、終わった。

輪の外に出てきた志津さんたちの会話が、風に乗ってほんの少し聞こえた。とりあえず、志津さんがあの花を好きだとか、るどさんも花束もらったら嬉しいだとか…
気付けば、素直にみく子の歌が耳に入っていた。6曲目が始まっている。
…ふむ、学祭にはあの花を買っていくのも良いかもしれない。
当然、“ふろーら・しょうだ”でだ。感謝と悔しさを込めて。


6曲目。
タイトルは聞き逃したが、なんだろう、不思議な曲だ。

?あなたは私の事をずっと見守ってくれたの
?見守られている時 いつも安心と温もりを感じていたの
?やがてこの街にも雪が降り積もり…
?あなたと同じモノクロの思い出
?いつまでも残るよ
?いつまでも

優しい、そう、背中は情けないけどでもいつでも心配してくれる父親のような、離れてしばらく帰ってない実家のような…そんなイメージを感じる。
そして、そんな誰かを包み込むように、優しさを歌った歌だ。
娘のような。母親のような。

今は来ていないらしい、その“誰か”が幸せであるようにと、つい願ってしまう。

7曲目。
8曲目。
9曲目。
10曲目。

みく子は多彩なリズムで、メロディーで、弾き方で、さらにギター一本じゃ表現しきれないとばかりに多彩な声で…多彩な感情を歌う。

過去から今へ続く友情を歌い。
見てくれてるの気付いてたよ、と喜びを歌い。
心配してくれた友人への感謝を歌い。
相談相手との細くてでも強い繋がりを歌い。

そして11曲目。

「…ふぅ、さて次は今日来てる誰かさんへの曲です。誰とは言いません。誰かさんです。」

………誰だよ。

「というかこの曲、もの凄く即興で考えたから、全然メロディーとか無いの。誰かさん、ごめんね?。」

………だから誰だよ。

「走りながら考えたからさぁ、あんま歌詞もまとまって無いかも。」

………ん?

「あ、しかもタイトル決めてないや。ん?………『メール』で良いや。誰かさん、良いよね?」

………誰だっつってんの。返事なんざ有るわけが無い。

ふっ、と小さく息を吐いてギターを持ち直す。周りから音が消える。

メロディーも無く、和音も無く、とつとつと一音ずつつま弾く。

誰かさんが誰か知らないが、届けば良いなと、素直に俺は思った。

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六日目:卵茶編 EX話

『メール』



あなたはどこから私を見ていますか

この言葉は届きましたか

この歌は
この想いは

この声が闇に溶けるように

私が溶けて消えたとしても

このメールが届きます

あなたの中で

私は何色ですか?

以前のままの色じゃ無くて良い

緑にも
青にも
赤にも

何色にでもなります

あなたの中に残るために…



あなたはどこかに居てくれました

この言葉が届く場所に

この歌が
この不安が

失いたくない
忘れたくない

大切な物に変わりました

私は溶けて消えません

この場所で歌います

あなたの中で

私は何色ですか?

黒でも
そうね
白でも

何色でも構わない

この場所で歌えるから



この場所で歌えるなら

この場所で歌えるなら

この場所で歌えるから

この場所で歌えるから

この場所で歌えたから

この場所で歌えたから

私はこの喜びをあなたに贈ります

ねぇ、聞いて…

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六日目:卵茶編 16話

ギターは最後まで、つま弾くだけだった。
確かめるように、一音ずつ。ほぼアカペラだ。
他の曲と同じように表すなら…メールの先にしか居ない、でもそこにいつも居てくれる、そんな“誰かさん”への感謝を歌った曲だった。

“誰かさん”への曲。

俺じゃ、無いはず。

………でも、と思ってしまう。
みく子の歌は、まるで語りかけるようで。一人一人がきっとそう感じているんだろうけど、まるで俺に向けて、俺のために歌っているようで。
とはいえ、自惚れるな、とは思う。俺のことだなんて一言も言ってないし、感謝されるようなこともしていない。
………でもやっぱり、勘違いであったとしても、たまにはそんな自惚れも良いのかも、と思えた。

…届いたよ、みく子。
…泣きたいくらいに、届いたよ。

「次はデュエットでいきまっす♪」

みく子は、あっさりと次の曲へ行った。

うん、それで良い。
今ごろになって気付いたけど、なんだか一曲一曲が誰かへのメッセージのようになっているらしい。
関わってくれた人へのみく子なりの感謝の形なんだろう。

俺はもう充分だ。
ここに居るはずじゃ無かった、居るべき人間じゃない…という気持ちが少し薄れたよ。
少なくとも、今の歌が聞けた。俺が今日みく子と会ったことで今の歌が生まれたのなら、なおさらだ。



…ん?おや。
みく子と一緒に歌いだしたのは、みく子にギターを貸したあの女の子だ。
この曲もまた、あの子ために歌うのだろう。

始まりは、ハモりではなく、綺麗なユニゾン。
みく子は笑顔。
そして女の子も同じような笑顔だ。

二人の姿が重なる。

…なんだろう。
飯屋での、みく子に志津さんが重なったのと同じ感覚。
なんなんだろう。

?決心はそれぞれのストーリーの中♪
ヴーヴーヴー

歌のフレーズに、右の尻ポケからのバイブ音が重なる。
取り出して見てみると…

「…くわぁ、めんどくせ。会社からかよ。」
小声で呟く。
しかしこんな時間に?

出たく無い。
みく子の歌を聴いていたい。

出たく無い。
出たく無いが…

日常からの逃避の理由に、みく子を使うわけにも、いかんだろう。



急いで広場の暗がりの方へ…みく子の裏側、人の居ない、明かりの少ない、広場のもう半分だ。
それでもなお端の方に寄って、電話を取る。

「…もしもし?」
「あ、良かったぁ、出てくれて?」
社長の奥さんだ。

話を聞くと、クレームが出て明日の朝一で対応しなきゃならんので、明日の段取りが変わるとのこと。しかもそのせいで材料が足らなくなるので、明日予定していた作業は明後日に…なとなど。
(うわ?、明後日に回すったってそれも日にち無かろうが)
みく子のライブに早く戻りたい焦りもあるが、五分近く話して、やっと片が付く。

電話を切って振り返る。まだみく子は歌っている。
良かった、こんなんで終わってたら今晩眠れなくなりそうだ。

ゆっくりと近付いて行くと、そこで曲が終わり、誰かがみく子に何かの袋を渡していた。
受け取り。
笑顔。

改めて、思う。

街灯に照らされて。
以前のようなオレンジ色の髪、肌もオレンジ色。笑顔。
友人たち。
変化など無かったかのような。

ここはまるで『過去』だ。
一人一人に歌を贈りライブを終え、オレンジ色の街灯を離れ、明るい笑顔のままに立ち去るみく子を想像する。
…切ない気分になって、そのまま腰を降ろす。
暗がりの中で、みく子と同じ植え込みの反対側、四、五メートル離れて、みく子に背を向けて。

「次で、最後の曲です。」

………最後が、始まるらしい。

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六日目:卵茶編 17話

終わりの始まり。

「次で、最後の曲です。」
残念そうな「え??」という声と、拍手。
「今日、私が本当に聴いて欲しいのは、この歌です。曲名は…」

少しの間。
沈黙が支配し、みく子がため息のように言葉を吐いた。

「『アリア』。」

終わりの始まりの、終わり。

終わりの終わりへと。

向かう物語。



???



もしも今

私が消えたとしたら

あなたは隣にいる人と

手を取って

泣くのでしょう

でもやがて

悲しみは薄れ

涙は乾き

より固く手は繋がれて

いつの日か

キスをするの

私はそれを見て

きっとまた歌いだす



あなたに感謝を

あなたの大切な人に感謝を

あなたが大切な人に出会えたこの世界に感謝を

今ここに居る

あなたに愛を



???



ふいに風が強くなり、みく子の歌声が聴こえなくなる。
焦って振り返りみく子を見る。











あぁ、そうか、この光景だ。

涙が零れる。

その時俺が見たものは。

街灯に照らされ、オレンジ色のみく子の後ろ姿。
ギターを弾き、歌う後ろ姿。
揺れるアバンギャルド。
残像。

その先に。

涙を流す人。
眼を閉じ聞き入る人。
見とれるように眺める人。
横に居る相手と寄り添う人。
…みく子のような笑顔を浮かべる人。

みく子の奥にいつも見えていた光景。

みく子を形作っていたモノ。

飯屋で志津さんが重なって見えたときや、デュエットをしているとき。
それだけじゃない、いつも見えていた。
透明感のある歌声。
その先で、様々に移り変わる色と感情。
みく子の中に写し取られた人々。

みく子と出会ったこと。
みく子に会うこと。
みく子と話すこと。
それらはまるで、みく子の中に“自分”を書き込むような行為で。

だからこそ。

だからこそ、誰もがみく子の周りに集まる。
誰かを投影し、自分を投影し。
誰かに逢い、自分を見つめる。

だからこそ、誰もがまたみく子に会いに行く。

そして今。

みく子を通じて、これだけの人数が、この場所に集まった。



涙は、気付かない内に止まっていた。

風も、止まっていた。

ここに来て良かったと、やっと思えた。

最後のフレーズが、耳に届く。強く心を揺らす。


?私が出逢えた、全てに愛を
?あなたの紡いだ糸が、今ここで交わるの


みく子の顔は見えないが、泣いているのかもしれない。
14曲も歌って疲れているのかもしれない。
冷たい空気に、喉が限界なのかもしれない。

誰か気付いただろうか?





みく子の声は少しだけ。
震えていた、気がする。





心を揺らす。
心が揺れる。
髪が揺れる。
髪が停まる。
曲が停まる。
曲が終わる。

暗がりから拍手を送る。

いや、俺もあそこへ行こう。
あそこへ行って良いんだ。

みく子の近くへ。
みんなの横へ。
誰かの前へ。

行こう。

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六日目:卵茶編 18話

既に何人かが帰ったのか少し人数は減っているものの、広場にはまだ随分な人数と熱気が残っていた。
俺は広場に戻って、アリエスを見つけ声をかける。少しの間雑談をし、「またな」と言って別れる。
みく子はギターを片付けながら、周りの人に話しかけられている。
ライブの途中で花籠を渡していた女の子が、みく子から髪に花を刺してもらっている。みく子の髪にも同じように花が。
華やかだ。

なかなか人が減らない。

まだ帰りづらいのだろう。
帰りたくないのだろう。
気持ちは分かる。
俺もそこに混じり、何をするでも無く佇み周りを眺める。
…なにやらよくよく見てみると、やけにセクシーなお姉さんたちが何人かまとまって話している。ど?ゆ?ことだ。



と、
「あっ!!」
みく子が急に声をあげる。
みんなの注目が集まる。

みんなの視線を浴びて、少し照れたように頭を掻きながら。
「あ、急にごめんね。思い付いたんだけど。」
植え込みに座ったまま、一人一人を見上げながら言うみく子。

「ねぇ、良かったら…初めましてのみんなの名前、一人ずつ聞きたいなぁ。」
疲れたような、でも弾けるような、明るい笑顔で。

「もう帰っちゃった人も居るかなぁ?…今日はね、私にとって記念日、みたいなもんだから。折角だから、ね?」
イタズラっぽい、小悪魔的なお得意の笑顔で。

「ある人が言ってたんだけど、変化ってものは終わりと始まりがセットなんだって。きっと今日が新しい始まりなの。」
目を閉じて、口元に笑みを浮かべて。

あぁ、みく子。

何が、終わるんだい?

「だから………じゃあ、はい!そこの子から!!」
指刺された女性は、まずビックリして、辺りをキョロキョロ見回して、うつ向いて、それから真っ赤になって照れながらみく子の前に立つ。

………
…メイド服!?

「初めましてですぅ。ももにゃと言いますぅ。お仕事の帰りでこんな格好なんですけど…。すっ………ごく感動しましたぁ!奥様にも聞かせたかったなぁ。またライブあったら来させてくださぁい☆」

セクシーなお姉さんたちを、順にみく子が指名していく。

「あめ湯といいます。綺麗な声ね!今日は大人数で押し掛けてしまったけれど…構わないわよね?ライブなんだから!」
「初めまして、まりモです。すっごく良かったわ。…ふふふ、あなたがメンズなら、放っておかないんだけれど。」
「scabiosaです。とても楽しませてもらったわ。今日は妹と一緒に来たの。」
「初めまして?、よろしくね。私も声の仕事しているんだけど…とても良い声だったわ。喉、大事にしてね?ケアはちゃんとすること、ね?」
「ミサです、初めまして!!感動しても?泣いちゃったよ?。そのパーマ、変だけどカワイイね!歌ってるときフワフワ揺れてて綺麗だったな?☆」
「kayoriと申します、とても素敵でしたよ。…もうこんな季節なんだから、コートくらい着なさいな。そうね、その髪なら、黒のシックなコートが良いんじゃ無いかしら?」
「初めまして、ほのかといいます。今日は来て良かったわ。今日は私たち、ある方にライブのこと教えて戴いて来たのよ。誰だか分かるかしら?」

そして、彼女たちが道を開けた後ろから、最後尾からゆっくりと歩み出てきたのは…
「初めまして…では無いがの。」
「…!!ノートン教授!!」
みく子が驚く。
「今日は…そう、君の言葉を借りれば“記念日”だからの。ワシも君の歌を色んな人に聴いてもらいたいと思ってな、パーティーで知り合った彼女たちに声をかけたんじゃ。」
その言葉で、みく子の瞳に涙が滲む。
うつ向いてしまうみく子の肩に手を置きながらノートン教授は言葉をかける。その瞳にも、ほんの少し、輝くものがあるように見える。
「さぁ、ワシなんかのことよりも、まだ話したい相手がおるじゃろ?」
みく子が顔を上げて涙を拭うと。

いつの間にか、何人かがみく子の前に集まっていて、順に自己紹介を始める。

そういえば、さっきの集団も含め何故か女性ばかりだ。
…男は見にきていても、恥ずかしくて出てこれないのかもしれない。

「まおです!私も泣いちゃいました?。すっごく素敵だったもの!…てゆ?か、う゛?。今のおじいさんとのやり取りでもらい泣きしちゃいそうだよ?。」
「ちぃたんって言います、初めまして。私も花屋さんで働いてるの。その髪に着けている、ガーベラかしら?それにソニアもとってもあなたに似合ってて素敵だわ!!次来るときには私も何か用意したいわね!」
「桜です。みく子さんのこと、色んなところで見かけてたんですよね。お話しするのは初めてですけど。ライブも、とってもかっこよかったですよ。」
「かなた ちゃこです。わたし路上ライブとか好きなんだ?。来れてラッキーだったよ!!…今度の学祭でやったりしないの?やるんだったら絶対聞きに行くのになぁ?。」

…その光景。
終わりが終わった後でなお続く、その光景。

肩を揺らし、髪を揺らし、笑うみく子。

受け入れられている、と。
単純にそう思った。

みく子のパーマ。
きっともう違和感が無くて。
…これまでも、これからも、変わらず多くの人がみく子の周りに集まるんだろう。

揺れるアバンギャルドを見て。
その笑顔に目を細めて。
これがみく子だと。

何が始まるのか

何が終わるのか

何が変わったのか

何が変わるのか

少なくとも

?
日常は続く。
?

さぁて、明日も仕事だ。

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