ロシュ編
蜜編
サク編
蓮火編
アリエス編
黒編
しのめん編
奏湖編
ちこ編
志津編
タイキ編
ゆん編
なつめ編
卵茶編
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
■ロシュ
みく子の元カレ。
二枚目、頭脳明晰、スポーツ万能で浮気者。
みく子と別れてエリカと付き合いながらも、みく子に未練がある人。
■蜜
みく子の現彼氏。
みく子のアバンギャルドなパーマを見て怒った。
世界を救いたいと思ってる人。
■サク
みく子の初恋の人。
みく子のことだけを考えながらも、人生に絶望してる。
悪魔と契約なんかしちゃってる人。
■蓮火
みく子の知り合い。
路上ライブで知り合い、アバンギャルドなパーマを見て
「とりあえず、そのパーマだけは直せよ!」と路上で叫ぶ人。
■アリエス
みく子と同じ研究室の学生。
先輩には卵茶もいる。
教授にいろんな意味で愛されてる人。
■黒
みく子のチャット友達。
るどんとビリヤードしたりもする。
みく子と実際に会ったことはない人。
■しのめん
みく子の友達。
どう見ても二児以上の父親としか思えない老けた大学生。
色の識別が出来ない人。
■奏湖
みく子の元後輩。
大通りにある24時間営業のマックス・ドックスの元気な店員さん。
みく子のライブポスターをそこら中に貼りつけた人。
■ちこ
みく子のストリート友達。
みく子と同じようにストリートで歌ってる。
昼は喫茶店、夜はダイニングバーじゅごんで働いている人。
■志津
みく子の友達。
「ふろーら・しょうだ」でバイトしてる。
落研で「るど」と漫才コンビを組んでる人。
■タイキ
蓮火の兄。
タクシードライバーをしている。
弟の蓮火のことをいつも考えてる人。
■ゆん
みく子の友達。
普段はたまにメールでやりとりしてる。
みく子のライブのポスターを作った人。
■なつめ
みく子の高校の同級生。
高校時代はみく子の生演奏を聴いたりしてた。
現在は立派に社会人をしている人。
■卵茶
みく子のゼミの先輩。
みく子とはよくメールをする仲。
後輩にはアリエスもいるがどちらからも先輩扱いを受けていない人。
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二日目:しのめん編 11話

コンビニや信号、いろんな車のライト。
様々なモノが輝いている。本当は色とりどりに。

夜は困る。
モノクロにしか写らないこの目だと、暗い部分は全て黒になってしまうので細かな認識が出来ない。

しかし今はそんな事は言ってられない。
みく子と一緒にタクシーに乗って行った男を追いかける事に集中しなくては。


裏路地を抜けて車が曲がった方へと大通りを進んでいく。
研ぎ澄まされた聴覚に複数のエンジン音が木霊する。
その音の中から、さっき通り過ぎたチョイブの男が運転する車の音を聞き分ける。
走りながら集中するのは大変だ。

この天気の悪さは台風だろうか?
ねっとりした空気が余計に集中力を奪おうとする。

二十四時間営業のマックス・ドックス前を駆け抜ける。
そのまましばらく走ってからおかしな事に気が付いた。


「聞こえない」


呼吸を整えながらあちこちをキョロキョロ見回し聴覚に集中してみるものの、さっきまで確かに聞こえていたチョイブの男の──えーい、チョイブカーの音が聞こえない。
風が強くなっているからだろうか?

さっきまで聞こえていた音の方向だけを頼りに進む。
気が付いたら住宅街、それも高級な感じの建物が並んでいる。

音が聞こえないという事は、車は今動いていない可能性が高い。
それがもしこの住宅街のどこかにある立体駐車場のどこかに停まっているとしたら、これ以上の追跡は不可能に近い。
せめて路駐であってくれ。そんな事を考えていた時だった。
一際高級そうなマンションの前を見るとチョイブカーが停車している。


「見つけた」


酷くニタリと笑った。
鬼の首でも取ったかのようだった。
しかしここで慌ててはいけない。

慌てて走って近付けば完全な不審者だと思われる。
そこで逃げられたら、体力的に次はない。
だからゆっくりとチョイブカーに近付いていく。


しばらくすると、助手席から女の子が不機嫌そうに降りてマンションの中へ入っていった。
それまで動く様子の無かったチョイブカーのエンジン音が響くと急に走り出す。

慌てて走り出してみたものの、信号もない場所で車に追いつけるはずがない。
ここまで追いかけられたのも奇跡みたいなものだ。

マンションの前まで走って、追いかけるのを辞めた。
全身から力が抜ける。集中状態を保ち過ぎたんだろう。
ぺたりとその場にしゃがみ込んだ。


「やっぱり。追いかけて来てくれないじゃん」

「!!」


驚いた。
さっきマンションに入っていったはずの女の子が出てきた。
というか、この女の子見覚えが──。


「あれ?しのめんくん?」


それは、エリカ様だった。

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二日目:しのめん編 12話

みく子を介して出来た友達同士で飲み会をした事がある。
僕はお酒もタバコも苦手だから、普段なら絶対に行かない。
だけど、みく子が来るって言うなら話は別だ。


   ※


正確な人数は覚えていないけれど『呑み処 お松』というお店だった。
少し緊張と言うより人と接するのが怖かった僕は、お店までの移動中、最後尾を歩いていたので、必然的に飲み会の席は個室の出入り口付近になった。

最初のオーダーは良いものの、途中からやはり出入り口付近の人間がオーダーする流れになる。
最初は上手く切り抜けていたけれど、徐々に厄介な事になってきた。


「ごめん、モスコミュール頼んでー」

「あー俺、このピンクのやつ頼んでー」

「ピンクのやつってなにー?じゃぁ私こっちの黄色とオレンジのやつー」


「え?えっ?」


頭が真っ白になったのを覚えている。
なかなかメニューからどれが言われたものなのか解らずにいた。


「おい、早く頼めよー!」

「そうだ、頼め、頼めー!あははー」


「黙れこの酔っぱらいどもが!」と心の中で叫びながらも僕は焦っていた。
このままだと目の事がバレるんじゃないか?せっかく出来た友達も、また失ってしまうんじゃないか。
そんな考えがぐるりと頭の中で渦巻く。


「おい、注文ぐらいさっさとしろよ!」

「え、えっと…」

「ピンクのやつだって!」

「ぁ…ぇ…?」

「もしかして、ピンクが解らねーの?」

「………」


変な汗が出てくる。
嫌な考えは一層ぐるりと回っている。
逃げ出したくなった。


「おいおい!あいつ色がわから…」

「ピーチフィズですねー」


ピッという電子音と共に女の子が現れた。
いや、実際は店員さんで、僕が解らなかった「ピンクのやつ」を入力すると、モスコミュールとカシスオレンジを入力して颯爽と戻って行った。

オーダーが通った事で安心したのか、僕の目の話題にはならずに飲み会は続いている。

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二日目:しのめん編 13話

相変わらず酔っぱらい共は喧しく楽しそうに騒いでいる。
そう言えば遠くに座っているみく子も少し酔っているように見える。
笑顔を振りまきながら、いろんな人に話したり、話しかけられたりして楽しそうでなによりだ。

若干、周りの男共が慣れ慣れしくし過ぎだとは思うけれど。


オーダーも通った事に少しホッとして、僕はトイレに向かった。
トイレから戻る最中、さっきの女の子の店員さんがいたので、すれ違いざまに頭を下げた。

個室に戻るとなぜか「クレヨンに生まれ変わったら何色になりたい?」と言うどうやってその話題になったのか聞きたいぐらいの話題でなぜか大盛り上がりだった。


(一難去ってまた一難か)


「俺は赤かなー」

「えー?ピンクじゃない?エロいからー」

「私はやっぱり純潔な白よね♪」

「金!俺金がいい!」

「ねー、みく子はやっぱりオレンジでしょ?」

「私は、もっと白に…ううんなんでもない」


少しだけ寂しそうな顔をしてから、みく子はいつものように微笑んでいた。


「お前はー?」

「…っえ?」


さっきピーチフィズを頼んだヤツだった。
すぐ適当な色を言えば良かったのに、みく子の寂しそうな顔がチラついてすぐに答える事が出来なかった。


「やっぱりお前、色が解らないんだろー?」

「……」


もう、どうでも良かった。
元々友達なんていないんだし、ここで酔っぱらいに何を言われても構わない。
また今までのように一人になるだけだ。と覚悟を決めてから口を開く。


「そうだよ」

「ウソだろー?じゃぁさ、俺のTシャツ何色??」

「…」

「適当に知ってる色言えって!」

「……緑?」

「はー?お前の目にはこの黄色が緑に見える訳?」


その時だった。


「ちょっとあなたね!」


ピーチフィズの男が少しだけ押されて、僕とピーチフィズの男の間にさっきの店員さんが入ってきた。

良く見るととても可愛い。
少しハーフのようなそうでないような、とにかく可愛かった。


「色が解らない事がそんなに可笑しい?」

「は?」

「私達が普通に感じている色だって、本当に全員が同じように見えているとは限らないのよ」

「何言っちゃってる訳この子?」

「じゃぁ、あなたが着ているそのシャツを見た全員が、あなたが思っている黄色と同じ色だっていう確証はある?」


その後はお店の偉い人が止めに来るまで彼女の独壇場だった。

話している内容はとてもユーモアがあって、時にハッとさせられるような事があって授業のような、そう、まるで講義を聴いているような感覚だった。

みく子はずっと眠っていたけれど。

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二日目:しのめん編 14話

お店の偉い人が頭を下げ、飲み代を半額にしてもらった事で飲み会参加者は満足げに店を出た。

この後、カラオケに行くらしいけれど、僕はなんとなく抜けた。

後は家に帰るだけだったので、ぼーっと、さっきの女の子が話していた、まるで講義のような話を思い返していた。


「あ、さっきの…」


少し恥ずかしそうにさっきの女の子が店の裏手から出てきた。
私服を着ている所を見ると仕事は終わったみたいだ。


「店長に怒られちゃったよ。まったく」

「あ、ごめんなさい。僕のせいで」

「ううん、お客さんのせいじゃないよ。あ、もうお客さんじゃないや」


そう言うと彼女は笑った。屈託の無い素敵な笑顔。


「ね、名前教えてよ。私はエリカ。よろしくね」

「僕は、志野山」

「なんで名字なの??」

「あ、ごめん。名前は麺太って言うんだ。志野山麺太。だから略してしのめん」

「なんで略すの!」


エリカは「あはは」と可笑しそうに笑っていた。
僕の家は地元では有名な一族で、本名を出すと諂う人があまりにも多かった。
だから僕はあまり本名を出したくない。
そういう自分がどうすることも出来ない部分で、友達とか知り合いを作りたくなかったから。
だから普段から「しのめん」と名乗る事が多い。

エリカはずっと笑っている。
少し涙が出ているほどだ。
ちょっとだけ笑わせたことが嬉しかった。


「私ね、帰国子女なんだ」

「へぇ!」

「だからね、日本に来た時良く笑われた」

「そうなんだ」

「本当はね、目の色違うんだけどカラーコンタクトしてるんだ」

「やっぱり目の色が違うといろいろ言われるの?」

「そうだねー。別になにも違わないのになぁ」


そう言うとエリカはカラーコンタクトを外した。


「僕には何も違って見えないんだけどね」

「そうでしょ?私の目もしのめんくんの目もなにも違わない」


まるで数学学者が証明を終えた時のようにエリカが堂々と言うのが可笑しかった。


「私決めた!これからはコンタクトしない!」


そう力強く宣言したエリカとまた笑いあってから僕とエリカはそれぞれ別々に帰った。
もうニ度と会えないかも。と思いながら家へと帰った。



まぁ、翌日大学で会う事になるのだけれど。

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二日目:しのめん編 15話

あの日の出来事から、僕は彼女の事を心の中で「エリカ様」と呼ぶようにしている。
差別しない強さ、間違っている事に向かっていく強さ、そういう強さに女神のようなものを僕は彼女に感じていたからだ。


「エリカ様…」


思わず声に出してしまった。
全身の力が抜けてしゃがみ込んで彼女を見上げたら、マンションのエントランスから零れる照明がまるで後光のように感じたからだ。


「ぷ…あっはは…っ」


急にエリカは笑い出した。
僕は自分が口に出してしまった事にようやく気が付いたけれど取り返しはつかない。
焦っても何も出来ることはなく、ただただ顔面の体温を上げるだけだった。


「なんか嫌な気分だったのに吹き飛んじゃったよ」

「……」

「そうだ、しのめんくん。ちょっとうちに寄っていかない?」

「え?そんな、急に行ったら…」

「なによー?エ・リ・カ・様の言う事聞けない訳?」

「ぁ…」


エリカは間違いなく楽しんでいるのだろうけど、反論する元気も動き回る体力も残っていないし、このまま問答していると更に墓穴を掘りそうだったので僕は彼女に続いてマンションの中に入った。


広い。まるで高級ホテルのロビーのようなエントランスだ。
フロントまである。なんなのだろうここは。


「ただいまー」

「おかえりなさいませ」


エリカが機嫌よく挨拶していた。
その後エレベーターに乗り込むとエリカは最上階のボタンを押す。


「しのめんくん」

「ぇ…あ、はい」

「あ、はい。じゃないでしょ?なんでございましょうか?エリカ様でしょ」

「な、なんでございましょうか?エリカ様」

「っぷ…う、うん、あのね、相談したい事があるの」

「わたくしめで良ければなんなりと」


もうヤケクソだ、胸に手を当ててお辞儀までした。
エリカはもう笑わなかった。その代わり俯きながら「ありがと」とだけ言った。

エレベーターが静かに止まり、扉が開いた。
最上階にはまた更にエントランスのような空間が広がっている。
辺りを見回しても玄関らしき扉は一箇所しかない。


(ワンフロア全部がエリカの家…?
 まさか、この空間全てがアルコーブ?)


そんな感想を覚えた自分に少し驚く。


(これじゃニ人ぐらい子供がいて、マンション購入を考えた事があるみたいじゃないか。
 いや、なんだ、この例えは。僕は大学生なのに)


エリカがスタスタと玄関扉に向かっていく。
ここまできて初めて緊張してきた。
女の子の家に行くなんて僕にとっては夢物語のような気がしていたからだ。
それに実家かもしれない。となるとご両親がいるかもしれないじゃないか。


「早くー。こっち、こっち」

「あ、はい」

「あ、はい。じゃないでしょー」

「はい、ただいま」


なんだろう。エリカはお嬢様と執事ごっこ状態が気に入っているみたいだ。
こんな家に住んでいたら本当にお嬢様じゃないか。そう思いながら僕はエリカの家に入っていった。

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二日目:しのめん編 16話

エリカの家はかなりのお金持ちだ。
それは気味の悪いキンピカのオブジェが並んでいるのではなくて、センスの良いアンティークっぽい家具、照明などが行儀良く設置されているのを見て解った。
エリカは自分の部屋に案内しながら「普段は誰もいないから」とだけ言っていた。

エリカの部屋はここまでの本物のセレブ的な空間と違いメルヘンに染まりそうな部屋だった。
キャラクターモノのぬいぐるみやクッションが並んでいる。
なんとも女の子っぽい可愛らしい部屋だった。


「適当に座ってて、今紅茶入れてくるから」


そう言われたもののどこに座ればいいのか解らなかったので、僕は部屋の真ん中に正座してみた。
家の人が誰も居ない、女の子の部屋で、ニ人きり──。
妄想で塗り固められたアレやコレがぐるりと頭の中で回りだす。


「ハウツー本には緊張しない事って書いてあっ……」


気が付いたら妄想中にエリカは戻ってきていて、不思議そうに顔を覗き込まれていた。


「わーっ!」

「え?なにっ!?」


思わず声が出て、エリカも驚いていた。
それが落ち着いてからエリカが淹れてくれた良く名前は解らないけど、きっと高いであろう紅茶を飲んだ。
エリカは「あ、そうだ電話しなくちゃ」と言うと続けて「ちょっと電話してくるね」とだけ告げてしばらく部屋から出た。


エリカが電話から戻ると「さっき何を考えてたの?」だとか、「実は紅茶はリプトンなんだよね。」だとか他愛もない会話をした。
そのうち妄想めいた緊張は無くなっていった。


「それでね、相談なんだけど」

「はい、なんでございましょう?」

「あはは…もう、いいよ。普通に聞いて」

「あ、うん」

「ねぇ、みく子って知ってるよね?」

「うん。知ってるよ」

「今日さ、何があったのか教えて欲しいんだ」

「え?今日?」

「みく子、誰かと一緒じゃなかった?」

「そうそう、チョイブ…じゃないや、男の人と一緒に講義抜けちゃって…」

「しのめんくんもその後すぐに講義抜けてるでしょ?」

「ぇ…なんで知ってるの?」

「私の他の友達が見てたんだよー。しのめんくんがニ人を追いかけてたって」

「…そうなんだ。」

「でさ、みく子と一緒に講義抜けた男ってロシュじゃない?」

「ロシュ?」

「んーとね、この人」


エリカが差し出した携帯電話の画面に、みく子と一緒に講義を抜けたチョイブ男がエリカと一緒に写っていた。


「この人がロシュ。私の彼氏なんだ」


僕は大学ノートを素早く取り出すと

「チョイブ=ロシュ=エリカ様の彼氏=みく子と親密=許せん」

と書いた。

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二日目:しのめん編 17話

「ちょっと、このノート何?」


面白そうにノートを覗き込んでくるエリカ。
ごめん、そんなに顔を近付けられたら、僕は変な汗が出るし、なぜか呼吸をしちゃいけない気がするんだ。
もう息が苦しい。


「…ねぇ、この【蜜クン、彼氏】ってどういう事?」

「えっと、みく子さんの彼氏が蜜クンって言う背の高い…」

「うっそ!?本当に?あいつの彼女がみく子なの!?」

「…えっと、あいつって?」

「あぁ、ミツって私の幼馴染なんだ」

「!!!」


それからエリカは「ロシュ(彼氏)がみく子と何かあるんじゃない?」とか、「もし何かあったならミツにも迷惑かけちゃうな…」とか、「だけどみく子を泣かしたミツも悪いよね!」といった内容をずっとテンション高く話し続けた。


「それにしてもさ、未だに信じられないんだけど!」

「ぇ、何が?」

「よくロシュの車追いかけて来れたよね」

「僕もそれは奇跡だと思ってる。うん、奇跡だな。でも必然な気もする」

「そっかそっか。でもさ、一つ解らないんだけど…」

「なにが?」

「しのめんくんは何に対してそんなに必死なの?」

「ぇっと…それは…その…」

「ん??この際だから全部言っちゃいなよ」

「ぅ…」

「ほらほら、エリカ様に言ってごらんなさい」

「ぁ…あの、僕は、みく子さんの事が…その、好きなんだ。だからみく子さんを泣かせたヤツが許せない。ただ、それだけなんだ。」

「へぇー!なんか、みく子モテモテで妬けちゃうな」

「だけどね、最近元気が無いというか、どこか寂しそうで…」

「そこまで心配するほど好きなのに、自分のものにしようとか思わないの?」

「みく子さんはさ、誰かのものになったりしないと思うんだ」

「…ほんとに好きなんだね」


エリカが少しだけ羨ましそうにそう言った。
チョイブ男とエリカが笑っている写真を映し出した携帯電話に不在着信のマークが点滅している。


「今日は話聞いてくれてありがと」


ペコリとエリカがお辞儀をした。
最上階のエレベータホールで方膝を付き胸に手を当て会釈をしながら


「いえ、これが執事の仕事にございます」


エリカの笑い声がホールに響く。
そこでエリカと別れて一階へ降りマンションを出ようとすると、まだまだ強まりそうな雨が降っていた。

ただでさえ夜に弱いこの目で、更に雨が降っているとなると歩いてかえるのは不可能だ。
財布の中に一万円札が入っているのを確認してからタクシーを呼んだ。

タクシーが来るまでの間エントランスのソファで大学ノートを開いた。
そこにはエリカが勝手に付け加えた文字が躍っていた。


「しのめん=エリカのひつじ」


エリカ、僕は君の執事だよ?

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二日目:しのめん編 18話

雨は嫌いじゃないけれど、あの独特の臭いが嗅覚に、雨音が聴覚、湿度が触覚にまとわり付く。

季節外れの台風が連れてきたらしい雨をマンションのエントランスから眺めていた。

しばらくするとエントランス前の停車スペースに一台のタクシーが入ってきた。
出していた大学ノートを鞄に入れ、僕はタクシーに乗り込んだ。


「お客さん、どちらまで?」


僕が行き先を告げると「はーい」という返事が返ってきた。
もう深夜になるし運転手さんも大変だな。と思った。

外は雨が次第に強まっている。
フロントガラスの雨粒が信号やネオンで輝いている。
まだまだ強まりそうな雨は続いている。
思いのほか疲れていたのでAre You Ok?と自問自答してみた。

二十四時間営業のマックス・ドックスは台風でも営業するみたいだ。
コンビニ、信号、対向車線のヘッドライト、色は解らないけどキラキラと流れていく。


「お客さん、着きましたよ」

「あ、ありがとう。いくらですか?」

「千六百八十円になります」

「あ…細かいの無くて、一万円でも良いですか?」

「えーっと、お釣りが…」

「あ、八千三百二十円なんですけど、お釣り良いです。ありがとう」


半ば強引にタクシーを降りて賃貸マンションの入り口まで走った。
雨に触れる時間をなるべく短くしたかった。

エリカの家と比べると鼻で笑ってしまうぐらいのロビー。
管理人室の電気は消えている。
ポストから大量のチラシを取り出して、風俗関連のチラシだけはじっくり眺めてから捨てる。
その他にガス代の請求用紙以外は特に目立つものは無かった。

エレベータに乗り七階で降りる。
角部屋の扉のカギを開けて中に入る。
生活感の無い1DKの部屋だ。

シャワーを浴びてベッドに倒れこむ。
鞄から大学ノートを取り出して眺めた。


「今日は長かったな。三日ぐらいあったんじゃないか?」


声に出たが、人間の感覚なんておかしなものだから実際どうか解らない。
また明日もいろいろあるのだろう。明日はまだ木曜日だ。
なぜか胃がキリリと痛む気がした。


晩御飯を食べて無いからだと思うけど。

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三日目:しのめん編 19話

夜が明けると、昨日降っていた雨は上がっていた。
でも、まるで夕方のように暗い。空には分厚い雲が広がっている。
また雨が降り出しそうな空だった。
どちらが雲でどちらが空なのか見分けが付けられない空模様だ。

お腹が空いていたので近くのコンビニへ行き、軽く雑誌を立ち読みしてからおにぎりニ個とお茶を買った。
少し早い気もするけど、おでんの販売が始まっていた。


部屋に戻って、おにぎりを食べながら一冊の本を開く。
もう何度も目を通した本「錐体細胞の波長認識メカニズム」だ。その隣りに「赤オプシン遺伝子」「緑オプシン遺伝子」「錐体細胞」なんて本が並んでいる。著者はジェームス・ノートン。


その著者が教授をしているというのが、今の大学を志望したそもそもの動機だ。
しかし、ノートン教授の研究室は異常なまでにセキュリティが硬い。
一年前に侵入を試みて失敗したのは網膜スキャンなんてものがあったからだ。
僕にはノートン教授の研究室にあると思われる、とあるファイルを探している。


「ノートン教授が出るか、誰かが入る事が事前に解ればなぁ」


身体を起すと投げ置かれたガス代の請求用紙の下に、数日前に届いたパーティの招待状が目に入った。
携帯電話で日付を確認する。


「そうか今日だったな、斉藤さんとこのパーティ」


きちんと確認していなかった招待状を何の気なしに眺める。
その中に記されていたある項目に釘付けになった。


---

特別ゲスト:ジェームス・ノートン教授,エリカ・ノートン嬢

---


身体中の血がぐるりと回る。
急いで携帯電話のメモリを探し発信ボタンを押す。



「あ、どうも志野山です」


「いや、えっと、今日のパーティなんですが…」


「ちょっとやる事がありまして」


「いや、その、論文を完成させたくて…」


「あ、はい。本当にすいません」


「…はい、祖父に伝えて、おきます」



終話ボタンを押してから大きなため息を吐き出す。
ついでに「くだらない」とだけ呟いた。

残っていたおにぎりの最後の一口を放り込んで、出しっぱなしだった大学ノートと折り畳みの傘を鞄に入れて僕は大学に向かった。

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三日目:しのめん編 20話

大学に向かう途中、昨日はみく子の事で走り回っていたのに、今日は自分の事しか考えていない事が可笑しくなった。
「まぁ、ラストが近付いているからな」なんて意味の解らない事を口走っていた。

ノートン教授の研究室はニ重のセキュリティになっている。
まず一つ目のセキュリティはカードをスキャンさせ、暗証番号を入力する事で開く。
ニつ目のセキュリティは網膜スキャンで開くようになっている。

一つ目を開く事で入れる研究室については、誰かが入るか出る時に潜り込めば問題は無い。中にいるのも普通の研究生だけだ。

問題はニつ目のセキュリティだ。
僕はここが開く所を見た事が無い。
だけど、あの中に入らないといけない。

なぜ入る必要があるのか?
それは「錐体細胞の波長認識メカニズム」という本の最後のページにある余白部分──。
いや、僕にとっては余白では無いのだけれど、一般的な人にとっては余白部分になる場所にこう記されているからだ。


---

この文章が読めるのであれば
以下のレポートを読む事を薦める。

・αレポート
・βレポート
・γレポート
・Δレポート

ジェームス・ノートン。

---


これらのレポートはノートン教授が教授になる前にまとめたものらしい。
一年前にノートン教授の研究室内に侵入した時にα、β、γについては読んでいる。
最後に残っているΔレポートだけが、どこにあるのか解らなかった。
残されている場所はあの網膜スキャンを抜けた先だけ。僕はそのΔレポートが読みたかった。



大通りを大学方面に向かいながら、小高い丘の風見鶏の付いた屋根の大きな屋敷を横目で見る。
斉藤さんとこのお屋敷だ。今日の夕刻にあそこでパーティがある。

斉藤さんとことうちの一族は昔から何かと関わりがあるらしい。
詳しくは知らないし、知りたくもない。とりあえず僕は自分の一族が苦手だ。
地元に帰ると僕は御曹司なんて呼ばれる。
そんなものに成りたくて成った訳じゃないのに。


少しイラッとしたその時だった。
前から自転車が突っ込んできた──ように感じた。
黒いジャケットに白いワイシャツ、長い足にすらりとしたジーンズを着こなしている三十ぐらいの人のようにも感じた。


が、自転車は僕の身体をすり抜けて行ってしまった。
いや、正しく言うと自転車は突っ込んで来ていない。
ただ、すり抜けたように感じた時に声が聞こえた気がした。


「おや、さっきはご馳走様。お礼にあいつの記憶を一つ教えよう」


僕は変な汗が出た。
そして頭の中に響いた声を復唱した。


「一を無限大で割ると零になる…???」


とりあえず、僕はその言葉を大学ノートに書き記した。

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